ロケットニュース24

【実話】変態仮面のコスプレで交番に行ったら、危うく逮捕されかけた話

2017年1月16日

img_9048

今から半年以上前の2016年5月14日、映画『変態仮面 アブノーマル・クライシス』が公開された。主演の狂介役を鈴木亮平さん、ヒロインの愛子役を清水富美加さんが演じた話題作だったから、ご記憶の方も多いことだろう。

私(P.K.サンジュン)は映画公開を記念し開発されたラーメン「二丁目つけめんGACHI(ガチ)」の『変態仮麺』を食べようと、変態仮面のコスプレで同店を訪れたのだが……実はその後、危うく警察に逮捕されかけていたのである。

・半年前のエピソード

まず断っておくとこの話は長い。メチャメチャ長い。というのも、交番で叱られていた時間は1時間ほどであったが、その途中途中で “いくつものミラクル” が発生したからだ。

半年以上の時間を置いたのは、多少なりともお巡りさんの手を煩わせた反省の意味を込めたものであり、私自身 心の底から反省している。また、第2の変態仮面が出現しないための注意喚起的な意味合いもあるので、どうか変態仮面のコスプレをしようとしている人は思いとどまって欲しい。

まず、順を追って説明すると、舞台は「二丁目つけめんGACHI(ガチ)」の『変態仮麺』を食べようとしたものの売切れていた翌日の話である。前日のリベンジをしようと変態仮面のコスプレをしていた私は、記事にさらなるインパクトを与えたいと “2人変態仮面” を思いついたのだ。

指名したのは前日カメラマンを務めていたYoshio。彼は嫌がっていたが何とか説得し、めでたく “2人変態仮面” が誕生したのである。あとは2人でGACHIへ足を運び『変態仮麺』を食べれば、無事にミッション完了……のハズであった

ところが、人生とは恐ろしい。ほんの少しタイミングがズレただけで、思わぬ事態に陥ることがある。この話でいえば、満を持して出かけたGACHIが定休日だったことが全ての始まりだった……。GACHIは編集部から徒歩圏内にあるため、普段なら行うハズのリサーチを怠っていたのだ。

営業していないラーメン屋の前で立ち尽くす2人の変態仮面……このまま帰ったら、このネタはボツである。──着替えに費やした時間がもったいない。そう考えた私は、すぐさまYoshioに別ネタの提案をした。それは「変態仮面のコスプレはお巡りさん的にOKなのか聞いてみよう」というものである。

似たようなネタは過去に何度か試しており「T.M.レボリューション」も「ラップで作ったスカート」もお巡りさん的にはOKであった。そして今回も絶対に大丈夫だという確信が私にはあった……なぜならば、大切なところはガムテープで完璧に隠されていたからだ

基本的に変態仮面のコスプレは、マンキニを着てパンツを被れば終了である。ただし私の場合、完成まで15分ほど時間がかかる。そう、大切なところをガムテープでがっちりガードするためだ。1本の毛すら見えないほどの鉄壁ガード……少なくとも「公然わいせつ罪には当たらない」という確信があった。

「えー、マジでー!」と露骨に嫌がるYoshio。交番へ向かう途中にあった洋服店を通る際「なんか服を買って行こうよ」と言っていたが、私は「腰抜けが!」と一喝し、聞く耳を持たなかった。やがて2人の変態仮面がたどり着いたのは、交番まで残り50メートルほどのところ。

40メートル……30メートル……25メートル。そして残り20メートルに差し掛かったところだろうか、2人のお巡りさんがひょっこりと交番前に姿を現した! バチッと目が合う2人の変態仮面と2人のお巡りさん!! 私は瞬間的に敬礼のポーズをしYoshioもそれに続いたッ!! きっとお巡りさんたちも笑ってくれるハズ!!!!! ところが……。

ちょっとこっち来ォォォォオオオオオオイ!!」

お巡りさんには1ミリの笑顔もない……どころか激怒しているではないか。ヤバい……非常にヤバい。手招きではなく “腕招き” の方がピッタリくるオーバーアクションで、2人の変態仮面を交番に呼び込んでいる。その動きは、まるで超大型のショベルカーだ……マジかよ。

震える足で足を踏み入れた交番……お巡りさんという職業は関係なく、私はこのとき久々にキレている大人を見た。……ヤバい、どんなにポジティブに考えても、この状況は非常事態以外の何物でもない。そしてミラクルが連発する取り調べが、いよいよ始まったのである……。

Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.

【実話】変態仮面のコスプレで交番に行ったら、危うく逮捕されかけた話(2ページ目)

まずは、2人のお巡りさんについて説明しておこう。1人は30代後半の巡査、仮に「高橋巡査」とする。もう1人は30代前半の巡査で名前は「田中巡査」としよう。2人はメチャメチャ怒っていたが、特にヤバかったのは年下の田中巡査の方だ。我々、2人の変態仮面が着席するなり、田中巡査はこう切り出した。

田中巡査:「なにやってんだ、おめーらよ!」

PK:「えーと、変態仮面という漫画のコスプレをしてまして……」

田中巡査:「そんなことはわかってるんだよ!! なんでそんな格好してるのかって聞いてんだよォォォオオオオ!」

PK:「あ、はい。実は映画公開を記念して販売されている限定ラーメンが近所にありまして……」

田中巡査:「その格好でラーメン食べに行こうとしてたのか! ……アアンッ? やっていいことと悪いことの区別もつかねーのかァァァァアアア!?」

PK:「公然わいせつには当たらないと思ってました……」

田中巡査:「んなわけねーだろ! ほぼ裸じゃねーか!!」

──と、若い田中巡査はとにかく激怒している……しまくっている。こんなに怒鳴られたのは久しぶりだ……。

一方、最初の1分くらいは怒っていた年長者の高橋巡査は、激怒レベルからは少々トーンダウンしている様子

高橋巡査:「変態仮面か。懐かしいな。まさか漫画と同じくパンツも盗んだわけじゃないよな?」

PK:「も、もちろんです。これは購入したものです」

高橋巡査:「あと網タイツは はいてないのか? 漫画では付けてただろ?」

──と、やたら変態仮面に詳しい。こ、これは……救いを求めるなら高橋巡査一択! 年齢的に考えれば高橋巡査の方が偉い可能性は高いし、ここで精一杯謝り倒して釈放してもらうしかあるまい!! 

この時点で本当に反省していたし、特に田中巡査にはコッテリ絞られていた。自分では確認できないが、相当落ち込んだ表情をしているハズ……と思ったその時! 田中巡査がこれまでで最高レベルのボリュームで雄叫びを上げたのだ。

お前ら、いい加減パンツ取れェェェェエエエエエ!!」

──と。そう、我々も極限の緊張状態だったので、頭からパンツを被っていることすら完全に忘れていたのである

ところが田中巡査には「反省の色なし」と見えたようで、高橋巡査に軽く耳打ちすると、襟元の無線で通信し始めたではないか。

「えー。こちら○○警察、○○派出所。現在、2人の変態を確保。至急応援されたし」

……えっ? こっちの戦闘能力はゼロなのに応援ですか……? てか完全に、僕らをブタ箱にぶち込もうとしてるじゃないですか……。これはマジのマジで、前科者入り待ったなしなのか?

そして変な言い方だが、日本の警察は改めてスゴイ。田中巡査の通信からわずか数分後には、なんと4台のパトカーと8人の警察官が交番に集結したのである。2人の変態仮面と、高橋・田中両巡査を含む合計10人の警察官……本物の変態仮面でも逃げ切れないぜ?

警察官の群れに見守られながら始まった、田中巡査による炎の尋問。ここまで大人しかったYoshioが必死の抵抗を見せる、怒涛の展開が始まったのだ……。

Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
イラスト:稲葉翔子

【実話】変態仮面のコスプレで交番に行ったら、危うく逮捕されかけた話(3ページ目)

応援で駆け付けた8名の警察官たち。我々のためにお手を煩わせたのは本当に申し訳なかったが、実はそこまで不快感をあらわにしている人はいなかった。むしろニヤニヤしたり「よく隠れてるなぁ」などと、声をかけてくれる人がいたほどである。

となると、やはり最大の難関は田中巡査ただ1人。田中巡査は2人の変態仮面に対し、怒りの色を隠さない……どころかますますヒートアップしている。

田中巡査:「なんでこんな格好したんだ!? アア!?」

PK:「いや、はい。先ほども申しました通り、変態仮面のラーメン屋がありまして……」

田中巡査:「それは聞いたよ! 動機だよ、動機!! 趣味なのか仕事なのか!!??」

PK:「……」

ここまでは私が先陣を切って発言していたのだが、この質問には困ってしまった。記事にすることが目的であったから「仕事です」と答えてもイイのだが、私は仕事もプライベートも区別がないので、プライベートとも言えなくはない。大体、変態仮面のコスプレが仕事と言ったところで信じてもらえるのだろうか?

一向に手を緩めない田中巡査の「仕事なのか? プライベートなのか?」の質問に、ここまで沈黙を貫いていたYoshioがついに口を開いた……!


Yoshio:「僕たちは職場の仲間ですが、変態仮面は完全にプライベートです」

……私はプライベートで変態仮面のコスプレなどしないが、大きく解釈すればウソをついているわけではない。しかし、田中巡査はニヤリとし、さらなる波状攻撃を仕掛けてきた。


田中巡査:「ほーーーう。お前ら職場一緒なのか、そうか。じゃあ……上司呼べェェェエエエエエ! 今すぐ電話しろォォォオオオオオ!!」

ここぞとばかりに畳みかけてくる田中巡査。我々は本当に反省していたが、職場の上司からもさらに叱ってもらうべきだと判断したのだろう。ところが……。

Yoshio:「僕が上司です」

そう……我々ロケットニュース24で一番えらいのは、創業者であるYoshioなのだ。社内にYoshio以上の上司は存在しない。


田中巡査:「お、お前が上司か……」

これには田中巡査も絶句したようで、我々を取り囲む警察官の何名かは必死に笑いをこらえていた。意図していなかったが、まさに現場は「笑ってはいけない警察24時」状態である。しかし我々が笑ってしまったらケツバットどころでは済まされない……ブタ箱行き決定だ。

実はこのとき、私も必死に笑いをこらえていた。不謹慎かもしれないが、昔から緊張するとついついニヤニヤしてしまうのだ。自分でも嫌だったが、卒業式などではもれなくニヤついていた。それはイイ。

ここまでの段階で私が内心で思っていたのは「やはり公然わいせつ罪には触れていないのでは?」ということ。田中巡査のボルテージを考えれば、即刻逮捕でもおかしくない状況であるにもかかわらず、その気配はない。きっと田中巡査は我々にきつくお灸を据えたいだろう。

というか、もう十分にお灸は据えられていた。マジで心底反省していた。それはそうだ、40手前の大人2人が10人の警察官に叱られているのである。ましてや、交番内を覗きクスクス笑う通行人の視線だって痛かった。心底「情けない」と思った。もう十分に反省しています……。

我々もションボリと、そして田中巡査も “打つ手なし” の状況になったときのことだった。何やら交番内が、突如慌ただしくなり始めたのである。そう、ここから本当の奇跡が起こったのだ……。

Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
イラスト:稲葉翔子

【実話】変態仮面のコスプレで交番に行ったら、危うく逮捕されかけた話(最終ページ)

それは突然のことだった。警察官たちの無線が慌ただしく鳴り始めたかと思うと、応援に駆け付けていた8名が けたたましくパトカーのサイレンを響かせ、一瞬でいなくなってしまったのである

何が起きたのかサッパリわからない2人の変態仮面。これまで机を挟んで、常に真正面にいた田中巡査も席を外している。そして戻って来たかと思うと、我々にこう質問を投げかけてきた。


田中巡査:「お前ら、新宿5丁目には行ってないよな?」

マジで意味がわからなかなったが、我々のテリトリーは新宿2丁目。事務所を出て交番にたどり着くまで、一歩たりとも新宿2丁目を出ていない。それを告げると「チッ」と軽く舌打ちをし、田中巡査はまた奥に引っ込んでしまった。

取り残された2人の変態仮面。しかし、お互いにお喋りするような雰囲気ではない。沈黙の中、ただただ耳を澄ませていると、奥の方から雑音に交じって、わずかながら無線が漏れ聞こえてきた。

「……○時○分頃、新宿5丁目○○前に……全裸の男性が出現したもよう。現在、男性の姿は確認できないが……近くに潜伏している恐れアリ。……至急現場に急行セヨ」

ざわ……ざわざわ……。

──まさか。そう、そのまさかである。2人の変態仮面が新宿2丁目の交番でたっぷり叱られているその時、なんと本物の変態がわずか数百メートル先の新宿5丁目に出現したのである! これを奇跡と言わずして何と言おう? まさに「真実は小説より奇なり」である……!!

結局、田中巡査とはその後ほとんど絡みは無く、対応してくれたのは年長者の高橋巡査である。警察から会社に電話が行き、服を持って迎えに来てくれたのは中澤星児と百村モモ。私が照れ隠しで「いやー、悪かったねぇ」なんて軽めノリで発言したら、中澤に「笑い事じゃないですよ」と、ここでもキレられてしまったことは記述しておこう。

なお、警察からの連絡を受けたのは百村だそう。電話を切り「Yoshioさんとサンジュンさんが捕まりました」と百村が発した瞬間、事務所にはこれまでにない重い空気が流れたらしい……。職場のみなさんにも本当に迷惑をおかけしました、ごめんなさい。

また、高橋巡査に今回の罪を尋ねたところ、隠れているところは隠れているため、やはり公然わいせつ罪にはギリギリで該当しないようだった。ただし「迷惑防止条例が適用される可能性がある」とのことだったから、変態仮面のコスプレにはくれぐれも注意しよう。

再三申し上げたが、この件については本当に反省している。罪にはならなかったものの、10人もの警察官の手を煩わせたことは紛れもない事実である。この場を借りて改めて謝罪したい、本当にすみませんでした。二度と屋外では変態仮面のコスプレはいたしません

最後になるが、その後、勤務中の高橋巡査とはよく道端などで遭遇する。そのたびに挨拶すると「もう変態仮面はやってないか?」と返してもらえるからありがたい。激ギレしていた田中巡査とはなぜか遭遇しないが、いつかもう1度きちんと謝りたいと思っている。

Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
イラスト:稲葉翔子
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]

モバイルバージョンを終了