「CDを出せばミリオン」と言われた1990年代、今でも語り継がれる名曲が次々と生み落とされた。その音楽バブルが弾けた2000年代、荒野の中で生まれた文化が、アジアン・カンフー・ジェネレーションなどに代表されるフェス系のロックバンドと、ニコニコ動画系のアーティストたち……そして、アイドル。
AKB48の登場は賛否両論あれど、日本の音楽市場を変える事件だった。そんな彼女たちが、2016年6月1日に発売した新曲『翼はいらない』が1日でダブルミリオンを達成したという。この時代に230万枚以上売れる曲ってどんな曲なのか? 約1カ月前にYouTubeに公開されたPVを見てみたら、あれ? 6月2日時点で再生数75万回なんだけど……。
・CD売り上げとYouTubeでのPV再生数の関連性
まず、YouTube動画の再生数と売り上げの関連性について考えてみよう。例として、バンプ・オブ・チキンのシングル『Hello,world!/ コロニー』を見てみると、CDの推定累積売上数が約20.9万枚、YouTubeにアップされたPVの視聴回数が、6月2日現在で2004万回を突破している。再生数がCDの100倍近い。
これは差が大きすぎるにしても、1カ月も前にYouTubeにアップされたPVの再生数が、CDの売り上げ枚数を下回るということはありえない。通常なら、YouTubeの視聴回数はCDの売り上げ枚数のざっくり7~10倍ほどになるのではないかと思う。
・今回のシングルが爆売れの理由
なお、今回AKB48が発売したシングル『翼はいらない』は、「Type Aの初回限定盤と通常盤」「Type Bの初回限定盤と通常盤」「Type Cの初回限定盤と通常盤」「劇場盤」の7つの形態で発売された。さらにCDには6月18日に開催される「第8回AKB48選抜総選挙」の投票券が封入されているため、特典狙いの人たちが大量購入した結果なのかもしれない……。
・実際にCDを購入した人数
そこで、前述のYouTubeとCD売り上げ枚数の関連性を逆算して、実際に買った人数を導き出してみると75万再生を7で割って、約11万人前後となる。もし、バンプ並みの比率で計算するなら7500人……さすがにこれはないと思いたいが。
しかし、230万枚売れているのは事実。ちなみに、『翼はいらない』の価格はマキシシングルで1524円(税抜き)である。つまり、230万枚売れると、約35億円。この天文学的な売り上げ額について、事情通から興味深い情報を聞き出すことに成功した。
事情通「AKB48はCDが凄く売れるのですが、通常のミュージシャンより所属レーベルのキングレコードの取り分が少なく大変という噂です」
現在、不況にあえぐ音楽業界。この巨額の資金は一体どこに流れているのか? 日本の音楽市場のあり方を変えたAKB48だが、そろそろ黄昏時を迎えているのかもしれない。
参照元:Billboard Japan、YouTube[1] [2]
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.