天才とは、時代を先行くもの。だが、天才と変人は紙一重といわれるように、斬新な発想や行動は、なかなかその価値に気づかれない。そこで突然だが、「泣く子も黙るテクノの巨匠 平沢進」をご存知だろうか?
長州力の入場曲として有名な『パワーホール』の作曲者であり、またNHKの「おかあさんといっしょ」に提供した曲に泣き出す子供が相次いだり、人気アニメ「けいおん!」の元ネタという噂もあるが……これらを差し引いて冷静に考えても、「知っていた方が得」な音楽家だと思うので、今日は筆者(DEBUNEKO)が天才と信じて止まない、平沢進の魅力について述べたいと思う。
・見たこともない楽器を使用
元P-MODELのリーダーかつボーカルで、現在はソロで活動している平沢さんは、アルミ製ギター「Talbo(タルボ)」や「EVO(イーボ) 」をはじめ、シンセサイザーや電子音、そして自身の透き通った歌声など、様々な『音』を用いて壮大な世界観を演出する音楽家。
なかでも創作楽器であるレーザーハープは、レーザーを手で遮ることで音を出す不思議な楽器。奏でる姿は、魔法使いやオーケストラの指揮者のようでもあり、視覚的な演出効果も高い楽器だ。ライブでは、演奏する手の動きを真似る観客もいるほど。
・「魅せる男」である
そんな壮大な音楽を繰り出す様は、音楽家というより音楽使いという言葉が何よりふさわしい。楽曲がファンタジー、演奏がアミューズメントで、物語を見ているような気分になるのだ。ずばり、「魅せる男」なのである。
その世界観はアニメーション作品との相性も良く、多数の作品の音楽も手がけている。代表的なものは、今敏監督の映画『妄想代理人』や『パプリカ』、三浦建太郎作の漫画『ベルセルク』のTVアニメ・映画・ゲームなど。作品の世界観と見事に調和しているので要チェックだ!
・「聴かせる男」である
平沢さんの楽曲は歌詞も独創的。ストーリー性が豊かな歌詞の中には、哲学的な難しい言葉や、謎のカタカナ言葉もあり、また英語だと思ったら日本語だったり、何語でもなかったなどなど……言葉遊びが実に巧み。それらの言葉が字余りにもならず、時に韻を踏み、メロディーに馴染んで流れ込んでくるのが心地よい。
そして、絶妙なタイミングでの転調。また、軍人のような低い声からオペラのようなファルセットまで、様々な声色を使い分けることで、楽曲のストーリー性をより劇的に表現するなど、随所で仕掛けられているな、と感じる曲構成なのだ! リスナーの「たぎるポイント」を完全に知り尽くしており、「聴かせる男」でもある。
・時代を先駆けた音楽活動
平沢さんは、まだネットでの音楽配信など存在しなかった1999年から、自身の楽曲を自身の運営するサイトで配信してきた音楽配信の先駆者でもある。そう、平沢さんの視線は、常に近未来を読んでいるのだ。そしてそれは、作品そのものにも現れているといっても過言ではない。
現代の人類とその日常を、近未来から見つめたような楽曲。ゆえに神々しくもあり、時に身近でもある。そんな平沢進の作品に、まずは一度触れてみてほしい。おそらく、出会ったことのないような音楽と出会うことだろう。
──止まらなくなってきたので今日はこの辺でやめておこう。なお、平沢さんに関しては、先日行われたインタラクティブ・ライブという斬新なスタイルのライブについても追ってご紹介したい。今日のところは、これにてごきげんよう。
参考リンク:平沢進公式サイト『NO ROOM』
執筆:DEBUNEKO
Photo:RocketNews24.
▼こちらがレーザーハープ。魔術師のようで何かが召喚されそう!
▼まるで大学教授のような平沢進氏。
▼ギターの名手だが、指が痛くなるので「ギターを弾くのは、ヤだ。」そうだ。(ご自身のTwitterより)
▼幻想的な旋律と歌声。
▼過去にはこんな創作楽器も使用。側面の車輪を回すことで発電し、その電源で演奏するボタン式のシンセ「グラヴィトン」。(Gazioにて撮影)
▼こちらは愛用のギター「Talbo(タルボ)」。(こちらもGazioにて撮影)
▼こちらも愛用のギター「光子(フォトンと読む)」。(こちらもGazioにて撮影)