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【ロングインタビュー】結成26年目にして初の武道館公演を行う奇跡のロックバンド『フラワーカンパニーズ』が示す「バンドとは何か?」

2015年12月3日

フラカン1

精力的な活動でライブハウスシーンをにぎわし続けるロックバンド『フラワーカンパニーズ』。2度のメジャーデビューを含む26年の長い歴史の中で、活動休止、メンバーチェンジは一切なし。その歴史に裏打ちされた息のあったバンドサウンドと声のかぎりに叫ぶ姿は、見ているこちらも思わず叫んでしまうほどに胸をえぐられる。

2015年12月19日、そんなフラカンがついに念願の日本武道館の舞台に立つ。この日はファンにとっても本人たちにとっても、心の底から「生きててよかった」と叫べる夜になるだろう。大舞台を控えた彼らはどういった心境なのだろうか? ヴォーカルの鈴木圭介さんとベースのグレートマエカワさんにライブや創作について語ってもらった!

・良いライブとバンドを続ける秘訣

フラカンを語る際に欠かせないのがライブ活動だ。一時は年間100本を超えるライブを展開し、機材車の年間走行距離が4万km(地球1周分)を軽く超えたという。そんな地道な活動が、抜群のライブ力を武器とする今の彼らを作り上げたことは言うまでもない。現在も自らライブブッキングを行い、機材車で移動する彼らが考える良いライブとは何か?

鈴木圭介さん(以下鈴木さん):まず、本編のライブが終わって楽屋に帰った時に体全身を使い切った感じの疲れがあって、余力が残ってないこと。それが第一。あと、流れが良かった時。お客さんがたくさん乗ったとかじゃなくて、ウマい感じに響いたっていう……それは言葉では表しづらいんだけど。

グレートマエカワさん(以下グレートさん):終わった後に楽屋で誰も何もしゃべらないようなライブはいまいちだったなって思う。いまいちっていうか、すっげー良いライブではなかったなって。間違えたとしても誰かが「あー間違えちゃったな」って言う方が良い。

鈴木さん:「熱いな」とかそんなんでも良いんだけど。

グレートさん:そしたら、「あっ割と充実してたな」って感じる。

──ちなみに、なんか良くなかったな……っていうライブって今でもあるんですか?

グレートさん:ああ、あるね。

鈴木さん:全然あるよー!

グレートさん:あるけど、それを引っ張らないし、楽屋で「あれはないだろー」って感じのこともよっぽどのことがない限りはメンバーに言わない。そこはお互い気をつけてると思う。

鈴木さん:もちろん時間を置いて言うことはあるよ。でも、ライブ終わってすぐはない。ライブ終わりってみんな興奮してるから、言うほうもちょっと強めに言っちゃう。聞くほうも「あん?」みたいになる。よく対バンで終わった後に大喧嘩してるバンド見てたから、ちょっと落ち着いた状況になってから話すようにしてる。

──喧嘩したことってないんですか?

鈴木さん:喧嘩はないよね?(グレートさんを見る)

グレートさん:ないよ。俺らは。

鈴木さん:言い合いくらいはあるけど、こういう感じ(胸ぐらをつかむフリ)はない。

・青春ごっこを今も続けながら

メンバー全員が高校や大学の友達同士で結成されて以来「活動休止なし、メンバーチェンジなし」で26年目を迎える彼ら。グレートさんと鈴木さんの温和でコミカルな人柄にバンド継続の秘訣を見た気がした。フラカンの音楽からはこういった温かさがにじみ出ている。話はメンバー間の関係性が垣間見える結成時のエピソードに突入していく。

──フラワーカンパニーズという名前はどうやって決まったんですか?

グレートさん:適当だよ。大体俺ら26年前にバンド結成したかどうかもあやふやでさ。勝手に始まった感じなんよ。鈴木と小西(ドラム:ミスター小西)、俺と竹安(ギター:竹安堅一)がバンドやってたんだけど、みんなバンド解散しちゃって。で、俺は大学入って1年間バンドできなくて、スタジオも入れなくて……バンドやりてえなあって思ってた。

そのころ、鈴木と小西に「ちょうど良いからスタジオ入らん?」って言ったら、「じゃあやろう」ってなった。で課題曲決めて入って、面白かったから来週もまたやろうかってなって……。

鈴木さん:そのうちライブやろうか、曲作ろうかって。

グレートさん:ライブやるならバンド名いるなって。

鈴木さん:で、1人1個ずつバンド名考えてきたんだけど、どれもよくなかった(笑)

グレートさん:で、そんな時、俺が大学でサークル作ったんだわ。60年代、70年代の文化に影響を受けて、みんなでラッパズボン履いてボーリング行ったりする感じの。当時ベルボトム履いてる人ほとんどおらんかったからさ。

鈴木さん:レニークラヴィッツ前だからね(笑)

グレートさん:ダサい象徴のファッションだった。そういうの履いて遊びに行くサークル作ろうって。それで名前何にするかってなった時にフラワームーブメントの “フラワー” に会社の “カンパニー” で「フラワーカンパニー」って名前でやろうかって話をしてたの。で、バンド名も決まらんから「もうこれでいいか」って。でも、鈴木が「ズ」をつけたいって言ってたから、「フラワーカンパニー」に「ズ」つけたらいいかって。

鈴木さん:英語としてはおかしいんだけどね。

グレートさん:カンパニーは複数形にならん。

──同級生や友達同士で、得したこととか嫌だったことはありますか?

鈴木さん:得したことは実家がみんな近いこと。大阪ツアーの時とか、ツアー中名古屋に泊まったりできる。

グレートさん:実家に泊まって、ホテル代は浮くわ、親に顔出せるわ。

鈴木さん:普通のサラリーマンより確実に帰ってるから(笑)3カ月にいっぺんくらい帰ってるもん俺たち(笑) 

グレートさん先々月なんて俺半分名古屋におったから(笑) 

鈴木さん:普通に就職した人でそんな人いない。だから正月に帰れなくても別に問題ないもん。

グレートさん:まあ得することは多いよね。

鈴木さん:友達もカブってるしね。

グレートさん:損っていうのはないんじゃないかなあ……同じ女を取り合ったこともないし(一同笑)同級生じゃなかったらなって思ったこともないし。

鈴木さん:今はもうないけど「メンバーチェンジはできねえな」って思ってた。下手な別れ方すると共通の友達と誰かが会えなくなるから。いわゆるスキルとか方向性の違いでメンバーチェンジとかあったりするでしょ? そういうのは俺たちはできなかったから我慢した

例えば「この曲こういうふうにやってほしいんだけど」って言って「できない」って言われた時、もしかしたら他のバンドだったら、他のメンバー探そうってなるかもしれないけど、俺たちは、そういう曲やめようとか、アレンジ変えようとか、できるまで待つとか。

中澤:フラカンでもできないってことはあるんですか?

鈴木さん:あるよ! あるある!

グレートさん:たくさんあるよ。

鈴木さん:なんでもできる人っているけどね。

グレートさん:最近若い人に多くて困っちゃうんだけど(笑)

鈴木さん:俺たちはできることの方が少ない。

グレートさんだからバンドやってるっつうのもある

──この後、メジャーからインディーズに戻った当時の状況、バンドをやめようと思ったことはないか、フラカンの作曲の詳細までを突っ込んで語りつくす。話の続きは次ページで!

Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

【ロングインタビュー】結成26年目にして初の武道館公演を行う奇跡のロックバンド『フラワーカンパニーズ』が示す「バンドとは何か?」(その2)

・真っ暗な道を走る最中

まさに “青春ごっこを今も続けている” かのような彼ら。メジャーからインディーズに戻った際、お客さんが10分の1に減ってしまった時期もあったという。そんな “真っ暗な道” の最中、迷うことはなかったのだろうか?

──きっついなーやめようかなーって思ったことはないですか?

鈴木さん:場所によってはあるかな(笑)何回行っても、お客さんが増えないところとか。人数が少なくても、ちゃんと聴いてくれてるかどうかって伝わってくるんだけど、そういうのも全く感じないところ。……まあ、俺が勝手に感じなかっただけかもしれないんだけど。何回行ってもこの場所厳しいなってところは、何年か空けたりしたよ。

グレートさん:2年空いたり、行かなくなったとこもあったしね。行かなくなったらそのハコなくなっちゃった……。

鈴木さん:でも、なるべく行くようにはしてたけどね。空けるとよりお客さんが少なくなるから。2年ぶりとかに行っちゃってもさ、そりゃ減るわなあ……っていう感じだから。

──バンドとか音楽をやめようと思ったことはない?

グレートさん:それぞれ大なり小なりあるかもしれんけど、でもまあ割と自分らでやり始めた2001〜2002年くらいからの方が少ないんじゃないかな。

鈴木さん:もう潰しがきかなくなってきて、逆に腹くくったっていうかさ。メンバーも結婚しだしたりしてるし、自分だけの問題じゃなくなってきた。

──でもそこでさらに音楽に向かうっていうのは……すごいと思います。

グレートさんそれぐらいしか他にやりたいこともないんよね(笑)料理好きとか物を作るのが好きとか、いろんなバイタリティーがある人って今多いじゃん?

鈴木さん:音楽なんてなくてもいいっていう感じの人ね。

グレートさん:他のことで金稼ぎたいとか、そういうのも1つもないから。

鈴木さん:あと、他の人に楽曲提供すごいする人とかね。そういうの全くないからね。

──楽曲提供したいっていう感じも特にない?

グレートさん:オファーあれば作るだろうけど、そっちをメインにしたいとは思わない。鈴木の場合もそうだろうけど、ヴォーカリストだから1人で歌ってもできるじゃん?

鈴木さん:そういう話もらえたら嬉しいけど、でもやっぱりちょっと複雑かな。やっぱ自分が歌って響かせたい。

グレートさん:作家よりも演者の方が全然勝ってるからね。

鈴木さん:そうそう。バンドをやりたいんであって、曲作りが好きとかじゃないもん。別に楽器好きでもないし(笑)俺なんか特に。

・曲作りは常にライブを想定している

「曲作りが好きではない」という衝撃のカミングアウトをした鈴木さん。しかし、彼の作る曲や歌詞は多くの人の胸をえぐり涙を流させる。そういった曲や歌詞はどのようにして作られているのか?

──曲作りは1人でやりますか? バンドでやりますか?

鈴木さん:俺がギター弾き語りの状態で作ったフォークソングみたいなのをバンドに持っていく。なるべく歌詞はつけて。それをみんなでロックにするっていう感じ。丸投げしちゃうね!

グレートさん:アレンジはバンドでやってるよ。

鈴木さん:だからそういう意味では人の領域まであんまり入らないようにしてるかも。全部自分がしきっちゃう人いるじゃん? ベースはこうでギターこうみたいな。売れてる人の中には、絶対的な1人の天才が全部やってるワンマンバンドが多い。俺らは割とそういう中では珍しい。俺1人じゃ全然できない。土台作ってるだけだし。

──それって「バンドでやるぞ!」みたいなこだわりがあったりしますか?

鈴木さん:いや、というよりも、バンドじゃないとできない

グレートさん:鈴木の場合、1人でやることに興味はないんだ。基本的に、1人で作ると1人の世界になっちゃうじゃん? 広がりはしない。でもバンドでやったら、最初に想像してた完成形と全然違う形になったりする。それが意図したものと違うとしても、かっこよくなる場合もあんじゃん。それがバンドの面白さだと思う。

鈴木さん:音楽的欲求の強い人はバンド形態にさほどこだわらないよね。バンドで俺の曲が全然できねえからソロやるみたいな。そういう発想まったくないからね。アコギ弾き語りでカフェでやるってことはあるけどさ。それはガス抜きとしては面白いけど、アルバムを出すとか、そういう発想は全くない。

──曲を作る時にフラカンをイメージしたりしますか? 自由に作りますか?

鈴木さんフラカンしかイメージしてない。だってそれ以外にやるなんて考えたことないから。もうイメージするも何もそれありきでしか作ってない。

──その曲に対して前川さんがベースラインをつける時に意識してることってあったりしますか?

グレートさん:ベースラインよりも、曲のリズムだったり強さ……おとなしめにするのがいいのか、ドーン! とドラムが強く叩いた方がいいのかとか……そっちのイメージを先に固める。だから、スピードが遅い曲のテンポを上げてみたり。鈴木の作ってきた曲がどういうところに着地するのがいいかってことを考えるかもな。

──どこに着地……

グレートさん:うん。これライブの前の方に持ってきた方が良い曲だなとか。これは後の方の曲だとか。

鈴木さん:自然とライブを想定してるかも。最後に持ってこれそうだなとか。

──アレンジの段階でライブを想定したアレンジをしてるということですか?

鈴木さん:そうだね。結局ライブありきなんだよね!

・生きててよかった、そんな夜はココだ!

作詞・作曲等の創作活動においてもライブを常に意識している様子は、生粋のライブバンドであるということを実感させられる。ずっと目指してきた日本一の大舞台・12月19日の日本武道館公演を目前にした今の心境を聞いてみた。

鈴木さんいつも通りやりたい。なるべくライブのやり方や流れをカチカチに決めないようにしてるんだよ。というのも、ここぞとばかりにいろんなことしようとするとおかしなことになっちゃうから(笑)こっちが演者として何かを与えるというよりは、逆にお客さんからいろんなものをもらって帰りたいなって思ってる。

グレートさん:武道館の場所に影響は受けると思う。だからこそ自分はいつも通りを意識して、あとはその影響による変化に任せたい。変に意気込んでると「あっ、想像とちげぇな」ってなった時が怖いから。

鈴木さん:まあもうジタバタしてもしょうがないっていうのもあるよね(笑)

グレートさん:まだ何週間かあるから、余裕こいとるところもあるかもしれんけど。1週間くらい前とか5日くらい前だとビビるのかなあとか(笑)武道館でライヴやった友達がそう言ってた。「逃げ出したくなる」って。そんなふうに思うのかな……?

その余裕さえ感じる態度はブレない未来を見据えているようにも見えた。きっと彼らは、私たちを見たことない場所へ連れていってくれることだろう。さあコブシを突き上げる準備はOKか? みんなで叫ぼうじゃないか「生きててよかった、そんな夜はココだ!」と。

Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼生きててよかった、そんな夜はココだー!!

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