ロケットニュース24

【本誌独占】邦題『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の「怒りのデス・ロード」を考案した男にインタビューしてみた!

2015年10月19日

madmaxtomo

V8! V8! V8を讃えよ!! マッドマックス者にとっての2015年は、一生忘れられない “MADが目を覚ました年” になったと思う。言うまでもなく映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が予想以上に最高すぎたからだ。本当に最強。いや、最狂だ!

さて、そんな『マッドマックス 怒りのデス・ロード』だが、原題は『Mad Max: Fury Road』。一体全体、どこのどいつが『怒りのデス・ロード』だなんて天才的な邦題を考えたのか? というわけで……考案者にロングインタビューしてみた!!

・宣伝部門のイモータン・ジョー

考案者の名前は、出目 宏(でめ ひろし)氏。ワーナー・エンターテイメント・ジャパン株式会社に所属する、44歳の邦題プロフェッショナルだ。表向きの肩書は「ワーナー・ブラザース映画マーケティング本部プロダクト・マネージメント部長」だが、マッドマックス的に考えれば宣伝部門のイモータン・ジョーと認識すれば間違いない。

・本誌独占の初公開!

邦題の考案者が表舞台に出ることは滅多にない。出目氏自身も「俺が取材を受けて良いのだろうか?」と悩んだというが、いちファンとして聞きたいことは山ほどあるのだ。ちなみに、邦題『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に関しての取材を受けるのは今回が初めてとのこと。つまりは本誌独占の初公開。ロングインタビュー開始である!

・中2の思い出とハードロックの融合

──まず聞きたいのは、出目さんも……『マッドマックス』が好きですよね? あの邦題は、マッドマックス者(もの)でないと出てこないタイトルだと思うのです。

出目「話せば長くなりますが……まず私と『マッドマックス』の歴史について説明させてください。私が『マッドマックス』に出会ったのは中2の時。“ソバ屋のたっちゃん” という友達がいたのですが、彼の家で見た録画版の『マッドマックス2』が最初でした。とにかく衝撃でしたね!

中2といえば、バリバリ多感な頃じゃないですか。そんな時に、あの『2』です。生徒手帳に鋲を付けてマッドマックス風に改造したり、めちゃくちゃ影響を受けました。

それともう一つ、私、ハードロックの邦題が好きなんです。たとえばメタリカの『血染めの鉄槌(ハンマー)』とか、カッコ良くはないんだけど、心に残るなァ……って。今回のマッドマックスも、ああいうニュアンスじゃないかな? って。つまり、『怒りのデス・ロード』は、中2の思い出とハードロックが融合して出てきた感じですね」

──やっぱり1でなければサンダードームでもなく、2なのですね! それはさておき、どんな感じで『怒りのデス・ロード』にたどり着いたのでしょうか?

出目「まず原題はFury Road。直訳すれば “怒りの道”……ですよね。でも、絶対に “怒りの道” なんてレベルじゃねえだろ……そんなヌルいはずがないだろ……って思ったんです。だって、あのジョージ・ミラーがもう一度『マッドマックス』を撮るんだぜ? と。そこで、私の好きな “デス” という言葉を入れてみた……という感じですね」

──決断が早いですね!

出目「いやいや! 怒りのデス・ロードに行き着くまでには、100通り以上のタイトルを考えています。あまり覚えていませんが、『怒りのなんとかロード』とか、『怒りのフューリー・ロード』とか『地獄のなんとかロード』とか、むしろ『マッドマックス』だけでいくか、とか、『マッドマックス』すら抜いちゃおうか?とか」

──マッドマックスを抜いちゃったらダメでしょう! でも『ロード』は付けたかったのですか?

出目「いや、それもいろいろあって、『マッドマックスなんとかランド』みたいなのもありました。本当に結論が出るまでは眠れない日々が続きました。本当に。頭の中は、中2の時の『マッドマックス2」の思い出と、メタリカの曲がグルグル……みたいな。ブレンドしても良いのか分からないけれど、行き着いたのが “デス” でした」

──本当に映画は『怒りのデス・ロード』としか言いようのない内容でした。まさに! という感じで。

出目「本当にいろいろ考えましたからね……。で、ある日の朝、天から降りてきたんです、『怒りのデス・ロード』が。で、その日、上司に “降りてきました!” と報告して、『怒りのデス・ロード』を提案したら、“ハイ決定” と。“最高だよ” と、即OK」

──もしかして、その上司の方も、マッドマックス者なんじゃ……

出目「はい、そうです(真顔)。『マッドマックスファン』なら絶対に分かってくれるだろう……と信じて、満場一致で『怒りのデス・ロード』に決定だったのですが、それって実は危なかったな……って思います。完全にユーザー層を狭めちゃうことになりますからね」

──でも結果的には大成功でしたね! ちなみに、いつごろ『怒りのデス・ロード』と決定したのですか?

出目「邦題を『怒りのデス・ロード』としたのは、去年(2014年)の8月ごろですかね。というか、その時、まだ映画自体が完成していないんですよ」

──なんと、邦題『怒りのデス・ロード』は、本編を完全に把握できない状況で決められたものだったのだ! 知られざる邦題付けの世界と、誰もが気になった「・」の秘密次ページ(その2)へGO!

参考リンク:ワーナー・ブラザース映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
Report:GO羽鳥(MAD羽鳥)
Photo:RocketNews24.
(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

【本誌独占】邦題『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の「怒りのデス・ロード」を考案した男にインタビューしてみた!(その2)

──えええっ? 映画を見ないで、『怒りのデス・ロード』を思いついたのですか!?

出目「そうですよ! 映画の邦題って、基本的に本編を完全に観られる状態で決定することはありません。観れるときなんて、稀(まれ)ですね。ポスターとか、ほんの少しのフッテージ(映像素材)とか、それだけの材料を観ただけで、“こんな映画になるだろう” と予想して決めなきゃいけないんです」

──えええええええっ!(驚) それって、いざ邦題は決まったけど、完成した映画を観たら内容が全然違うなんてこともバリバリありえるじゃないですか!!

出目バリバリありえますよ! だからすっごい緊張するし、責任も重大だし、プレッシャーもハンパないし、限られた情報だけで予想して……決めるのが邦題付けの難しさなんです。先を読まなきゃいけない。本当に “読み” の世界ですね」

──となると今回の『怒りのデス・ロード』は、読みが完全に当たった感じですね!

出目「いやー、本当に良かったです! 情報が少ないわりには、よくできたな(笑)って。“行って戻ってくる” なんてことも、ぜんぜん分からない状態で『怒りのデス・ロード』は付けています。ただ、さっきも言いましたがジョージ・ミラーがもう一度マッドマックスを撮るということはハンパない……っていう読みはしていました」

──その読みも、完全に当たっていた、と!

出目「当たってましたね。実際、ハンパなかった。想像以上、中2のころの衝撃がもう一度……といった感じでしたね。ちなみに最初にフッテージを観たのは、2014年のコミコン(コミコン・インターナショナル)でした。その時の映像で、これは『2』の流れだなと思いました。サンダードームの流れではなく、『4』でもなく、という」

・本編を観る不安と、頭をよぎるサンダードーム

──ぶっちゃけ、今回の本編を見る前は不安じゃなかったですか? 私、またサンダードームみたいだったらどうしよう……って、不安で不安で、なかなかマッドマックスの記事も書かなかったんです。昔はめちゃくちゃ書いていたのに。

出目「同じ同じ!(爆笑) 見る前はドキドキですよね。サンダードームのアレもあったし……。ジョージ・ミラーが、またサンダードームの、あのノリだったら、かなり難易度高いと言うか……みたいな。でもコミコンの時に映像を観て安心しました」

──本当に良かったですよねぇ! となると、出目さんが日本で最初に『マッドマックス怒りのデス・ロード』を観た男になるんですかね?

出目「おそらくそうです。本編を最初に観たのは私だと思いますよ。字幕とかも無いバージョンで……というか、字幕なんて必要ない映画ですが(笑) でも最初に本編を観た時は、自分で付けた邦題のことなんて忘れて、打ちのめされてしまいましたね。あまりの凄さに、本当に言葉が出なくなった!」

──私も同じです! 試写会で観たのですが、言葉が出なくなりました! 『2』を軽く超えちゃったよ……という感じで。そして、まさに『怒りのデス・ロード』だなって。

出目「でも、最初の頃とか、ソーシャルメディアでかなりバッシングが書かれてて、ショックでしたよ(泣) “ダサすぎる!” とか。人格さえ否定するようなコメントもあったりして……見なきゃいいのに、見ちゃうんですよねぇ〜」

──そういうのは見ないほうがいいです!

出目「ところが本編が公開されてからは、否定派が影を潜めて、肯定派がウワッと増えたんです。“世界観にピッタリ!” とか 。これしかないやん!って納得してくれてて。それが嬉しくて嬉しくて。リツイートしちゃおうかな?とか思ったりすることもありました(笑) でも私だってバレちゃうから、やめておきましたけど……」

・『デス・ロード』の「・」はイモータン・ジョー

──ちなみに、前からすっごい気になっていたのですが、『怒りのデス・ロード』の「・」(ナカグロ)には、こだわりがあるんですか?

出目「おお(笑) ありますね! たとえば、「・」なしの『デスロード』だと、“流れちゃう感じ” がする。スーッと行けちゃう感じがする。

でも「・」を付けて『デス・ロード』にすると、“簡単には通れない道” という感じがする。衝撃というか、障害というか、“敵がいる感” というか。そういう意味では、「・」はイモータン・ジョーなのかも知れません。

あとは、「・」を付けることによって『デス』を立たせたかった。デス感を際立たせたかったんです。そういう思いで出来上がったのが『怒りのデス・ロード』……」

──完璧です!(笑) ちなみに、今回の邦題、出目さん的には100点満点中、何点ですか?

出目「この仕事に100点は無いと思うのですが……ウ〜ン……100点付けたいですね(ニコッ)。映画の本編を観てから決めたなら、そのまんまなんですけども、観れない状況で、すっごい考えた。何カ月も、夜中まで考え続けた。中2の頃に一緒に『マッドマックス2』を観た友達は、今何をしているんだろう……とかも考えながら(笑)」

──青春時代と今現在が、『マッドマックス』でつながりましたね!

出目「本当に、いい仕事だったと思います。観た人間の人生観まで変えちゃう『マッドマックス』の映画の仕事に関われたってことは幸せです。もしもタイムマシンがあって、中2の頃の私に会うことができたら、こう言ってやりたいです。

おいオマエ、大丈夫だよ、って。なんと30年後もジョージ・ミラーはマッドマックスを作ってるんだゼ、って。そしてオマエは、その宣伝をしているんだゼ、ってね」

<完>

参考リンク:ワーナー・ブラザース映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
Report:GO羽鳥(MAD羽鳥)
Photo:RocketNews24.
(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

▼「怒りのデス・ロード」はGO羽鳥にも多大なる影響をあたえた




▼出目さん、ありがとうございました!

モバイルバージョンを終了