現在放映中の池井戸潤氏原作のドラマ『民王』(テレビ朝日系)。このドラマは、現職総理の父・武藤泰山と、そのおバカな息子・武藤翔の心と身体が入れ替わるというフィクションである。2人はさまざまなトラブルに遭遇しながらも、政治家と就活生という立場を超えて、人として大事なことを見つけて行く物語だ。
ドラマの魅力は、テンポの良さとコミカルな描写ではないだろうか。それにも増して面白いのが個性的な登場人物たちである。なかでも切れ者でちょっとおっちょこちょいな総理の公設第一秘書、貝原茂平は人気が高く、「貝原に叱られたい」という人が続出している。特におバカな翔を叱りつける様子に、女性にはグッとくるらしい。
・物語
武藤泰山は叩き上げの政治家である。何事においても、自分の考えに絶対的な自信を持っており、力技で押し通す気骨の強さがある。一方の翔は内気な性格で自己主張は弱いのだが、弱者に寄り添う優しい性格の持ち主だ。
2人が入れ替わったことは公になっていない。公になれば、泰山の積年の夢であった総理の座が揺らぐことになるからだ。母親と公設第一秘書の貝原、そして官房長官の狩野孝司しかそのことを知らない(現在は泰山のライバルも知っている)。
・超有能秘書の貝原
かなり突飛なストーリーなのだが、物語をより面白くしているのが登場人物。登場人物は漏れなく個性的で、物語の進行に関係なく、それぞれの人物の立ち回りを見ているだけで笑ってしまう。特に敏腕秘書の貝原は、入れ替わりの事実が露見することを防ぐために、泰山・翔それぞれをしっかりとバックアップしている。こんな人物が会社にひとりいれば、どんな難題だってスムーズに解決に導いてくれるに違いない! 大変頼もしい男なのだ。
・切れ者なんだけど……
ところが、時々見せる行動が可愛らしかったりするからたまらない。たとえば、寝るときにはパジャマにナイトキャップ、アイマスクを着用して寝る姿や、女性にからかわれると激しく同様して奇妙な声を出してしまうさまなど、切れ者とは到底思えないような意外な側面を持っている。意外なほどギャップの大きい人物だ。
・補填!
そんな彼が、翔を叱りつける姿はキレッキレで、見ていて清々しいくらい。毎回、番組冒頭で過去のエピソードを紹介するのだが、その振り返りのシーンで必ず彼がこう叫ぶ場面がある。「補填!」、その炸裂するような言い方が実に気持ちいい。
・これからどうなる?
あんなに切れのある叱り方なら、叱られてみたいと思うのも頷ける。さてこの先、貝原の叱り方に磨きがかかっていくのだろうか? すでに物語は後半に差し掛かっている。泰山と翔は元に戻ることができるのだろうか。そして2人を取り巻く人物たちとの関係はどのように発展していくのか。気になるところである。
参照元:テレビ朝日『民王』
執筆:佐藤英典
イラスト:Rocketnews24