池袋のはずれに超ド級の珍スポットがあると聞いた。館長は御年86歳。70年前に虫好きとなり、コレクションが10万点を超えたところで遙かアマゾンに遠征。昆虫標本だけでなく、腐りかけた蛇のホルマリン漬けなど珍奇な収集物も多数展示。話も相当面白いらしい……。
こりゃすごい! 早速調べると、ウチから歩きで行けるエリアにあることが判明。ネットで見つけた案内には「電話してから来てね!」とあるが、その電話が一切通じない。15回かけても誰も出ない。仕方なく、住所をたよりにアポなし突撃してみた!
・散乱するオカルト像、行く手を遮る珍奇な剥製たち!
新井昆虫館は池袋のはずれにあるゴミ焼却場のさらに裏手。いわゆる「裏池袋」の、目印のない住宅街の深淵にあり、到達難易度はAクラス。で、路地奥の行き止まりでようやく「新井久保商店」と記された、朽ちかけの謎看板を発見。ここか!?
看板脇を奥に進むと、南米チックな怪奇像に囲まれた、妙な空間に到達した。「新井昆虫館」の文字が刻まれたドアの両側には、おどろおどろしいオカルト土着像。ドアの上には逆さ吊りのワニ、ポストの上には羽がズタボロに抜けた猛禽類の剥製が飾られ、忘れ去られた遺跡を発見したような、そんな気分……。
昆虫館の玄関ドアは木製の棒で遮られていたが、窓には明かりが灯っている。館長いるのかな? 私は呼び鈴を押した──。
「なんでしようか?」
鼻に輪っかを通した老人が出てくるかと思いきや、訝しげな表情でドアを開けたのは、ごく普通の男性。「実は……」と来意を告げると男性の顔が「またか!」と引きつり、困ったような声でこう述べた。
「うちの父は亡くなりまして。ここも閉鎖することに──」
そう、新井館長は天国に旅立たれ、アマゾン昆虫館は長年の歴史に幕を閉じた。怪像を前に気分が盛り上がりまくっていた私は言葉が出ない。息子さんとお話できただけでも収穫なのか?
全国津々浦々、ほとんどの珍スポは創業者の没後、その役目を終え、世襲されることはまずない。まさに一期一会。というわけで、私の二の舞いを踏む人がないよう、ここに閉館宣言をする次第です。
Report : クーロン黒沢
Photo : Rocketnews24.
▼住宅街のどん詰まり。
▼消火器に縛られた謎看板。
▼新井ってもしや……?
▼ビンゴ! しかし、怪しい……。
▼昆虫館なのにワニ。入るの怖いんですけど。
▼郵便局の人も面食らうのではないだろうか?
▼ここ、本当に池袋の住宅街なのだろうか?
▼アマゾン川流域のカブトムシ……。
▼もっと早く来れば良かった! 後悔先に立たず。