絶滅危惧種の天然記念物「ミヤコタナゴ」を譲り受けて大量繁殖させた東京都内在住の男性が、2014年1月14日に文化財保護法違反などの容疑で書類送検された事件をご存じだろうか。
男性は書類送検されたのだから、その行為は決して推奨されるものではない。しかし、Twitter などのネット上では、「絶滅危惧種の天然記念物を繁殖させたのはすごい」という意見も多く見られた。そのような一部ネット民の見方に対して、真っ向から異を唱える人がいるのだ。
・事件の流れ
2012年5月、魚の飼育が趣味である都内在住の男性が、同じ趣味を持つ知人から、天然記念物のミヤコタナゴ28匹を譲り受けた。この男性は、ペットショップの店員のアドバイスなどを参考に、ミヤコタナゴを1000匹以上繁殖させることに成功。
ただ、さすがに飼育することが難しくなった男性は、消費者庁に「増えすぎたために引き取ってほしい」と連絡。消費者庁は警察へ通報し、書類送検という結末になったのだ。
・ネットではおおむね好意的に
事件が報道されると、Web サイトのコメント欄 をはじめとしたネット上では、さまざまな意見が寄せられることに。その中には「絶滅危惧種を繁殖させるなんてすごい!」「国はこの人を雇え!」といったように、男性の技術を賞賛するコメントも多く見られた。
このような状況に対して、「黙っていられない」と、なぜかご立腹なのが、淡水魚をはじめ様々なペットを飼育している宮崎氏(仮名)である。彼が記者(私)に対して、以下のようなお手紙を送ってきてくれたので、紹介したい。
・淡水魚マニアの主張
「この事件に関しては、誤解している人が多すぎますよ。書類送検になった男性が、まるでとんでもない業績を打ち立てたと思われているんですから。そもそもミヤコタナゴは、自然繁殖が難しいのであって、水槽などで繁殖させるのは簡単です。ちなみに、自然に繁殖させるのが困難な理由は、生息可能なエリアが少なくなっているためですけどね。
ただ、人工的に繁殖させる技術は確立されているので、水槽の中だったら何の問題もありません。実際に大量に繁殖させている施設もありますから。
それに報道でも、『ペットショップ店員さんのアドバイスを参考に育てた』ってあったでしょう? つまり、飼育したり繁殖させる方法は、一般的に知られているレベルの知識ということですよ。
それなのに、一部のメディアは、『文化庁の職員がどうやって育てたのか知りたがっている』なんて報道していて、思わず吹き出しました。『ペットショップの店員さんに聞け!』って突っ込んじゃいましたよ。
とにかく、みんな『絶滅危惧種』とか『天然記念物』という肩書きに負けすぎです。だから、ミヤコタナゴを繁殖させただけで、『すごいことをやってのけた』と勘違いしちゃうんです。繰り返しますが、ミヤコタナゴを水槽で繁殖させるのは簡単ですからね!」
——とのことである。確かに、宮崎さんの言う通り、「絶滅危惧種の天然記念物を繁殖させた」と聞けば、無条件で「とんでもない技術を持っている」とイメージしがちだ。
ただ、あくまでもイメージであって、実際にそのジャンルに詳しい人から見れば、全く別の意見を持っている場合もある。今回の事件は、その例の1つかもしれない。