歴史や習慣の変化により、昔は日本でも食卓にのぼっていたのに、今ではすっかり見られなくなった食材がある。そのうちのひとつが「蛇(ヘビ)」である。
蛇というと「気持ち悪い」、「怖い」と言う人が多いが、食材としてのヘビは「あっさりとしながらもウマミがあって美味しい」と言われている。しかも滋養強壮や美肌効果もあるらしい。効用は納得がいくとしても、「ウマイ」というのは少し信じられない。
だが、とある蛇料理屋をのぞいてみると、店はほぼ満席状態。これは期待できるかも……ということで店に入ってみた。
・台湾の夜市で蛇料理屋を発見
蛇肉を食べたのは台湾の高雄市の「六合夜市」にある蛇料理屋だ。蛇スープから蛇焼きそば、蛇丼とメニューは数種類ある。
店員さんによるとお勧めは「蛇スープ」と「蛇の炒め物」とのこと。確かに周りを見渡すと店の客は全員が蛇スープを飲んでいる。どうやら看板メニューのようだ。
・蛇スープは見た目が完全に蛇! 皮は弾力がなくプニュプニュしていた
透明なスープに蛇の皮がプカプカ浮かんでいた。模様からして完全に蛇。どこからどう見ても蛇だ。プニュプニュとしており、まるで弾力のないゴムのようだった。味は極めて淡白。スープは柚子のような爽やかな柑橘系の香りがする。おかしな味ではないのに、何かこう違和感がつきまとう。
・蛇肉はしっとり水っぽい
炒めを食べてみる。こちらは、皮をはいだ後の肉だ。見た目は魚のようだ。だが、一口食べてみると……ギュっと何かが飛び出してきた。獣の肉汁と言えばこっくりジューシィである。だが蛇肉汁には味がない。しっとりとただただ水っぽいのだ。
そして意外とかみ切れない。食べたことのない不思議な食感の食べ物がそこにあった。たとえがたい未知の食感だ。「肉でもなく魚でもなく……ああ、これが蛇か」と納得させる食感である。肉も皮同様、淡白でクセがない。よくかんで食べると、一瞬豚肉のような気がしたが、やはり蛇は蛇だった。
・食べられる、だがあえて蛇を食べる理由が見つからない
食べている間、終始、不思議な感覚だった。「ウマイ」とか「マズイ」とかいうレベルの話ではない。あまりの斬新さに思考がついていかないのである。
今、私たちの身の周りには、牛、豚、鶏、そして魚介類など、さまざまな食材がある。そしてそれを「美味しい」と感じている。そのなかで、何とも形容しがたい蛇をあえて選択する理由があるのかというと、ちょっと難しいのではないだろうか? かつて日本には蛇料理屋がたくさんあったが、今では殆ど消えてしまったというのもそのせいかもしれない。
ただ、現地の人はビールやマムシ酒を飲みながら蛇をガツガツと食べていた。ヘビ自体は淡白なので、味付けや調理法によっては「ウマイ!」と言えるのかもしれない。本当にマズくて食べられないものであれば、世界中で食べられるはずがないからだ。
Report:沢井メグ
▼高雄・六合夜市の蛇料理専門店
▼店には確かに蛇がいた
▼メニューは全て蛇
▼こちらが厨房だ
▼看板メニューの蛇スープ&炒め物
▼柑橘系の爽やかな香りのするスープ
▼蛇だ……
▼「いただきます……」
▼「……」