昨年ノーベル化学賞を受賞した日本人のひとり、根岸英一さんが特別教授を務めることで日本でも話題となった米国パデュー大学(Purdue University)で、今、医療業界に新たな技術革新が生み出されようとしている。
なんと、医師が手を空中で動かすだけで、実際に物に触れることなく手術をすることができる装置の研究が進められているのだ。さらに、手術中に医師が必要としている器具を渡すロボット助手まで開発されているという。
カメラやセンサーが搭載され、音声や動きを認識することができるマイクロソフト社のキネクト(Kinect)に、特殊な計算方法を組み合わせて作られたこの動作認識装置は、医師の手の動きを指示として読み取る。
動作認識装置があれば、手術室内にあるキーボードなどの殺菌されていない機器に触る必要もなく、手術台を離れてモニターなどをチェックする時間も節約できる。衛生的かつ効率的というわけだ。
「手術中の医師の動作を表現するには、手の動きやその軌道を正確に表現しなければならない」と、生産工学部のファン・パブロ・ワックス助教授。ただし、自然な動きを表現するだけではなく、文化や身体的な違いが医師の動作に影響を及ぼすということも考慮する必要があるとのこと。
動き方以外にも、装置を設計する際に開発者たちが気を配っている点がいくつかある。「医師の動きを認識し、指示を正確に理解したことを示したうえで、素早く対応する」、「無関係な動きには反応しない」、「どのような手術室にも簡単に素早く適応する」など。
さらに、ロボット助手を同時に使用すれば、人間の場合よりも効率的に仕事ができることもあると期待されている。
「同じ医師と一緒に何度も手術をしてきた経験豊かな人間の助手には及ばないかもしれないが、経験が浅いために医師とのコミュニケーションがうまくいかずにミスを犯す能性の高い助手よりは、ロボット助手のほうがいい働きをするだろう」とワックス助教授は語る。
これまでにも、音声認識装置を用いたロボット助手のようなものは研究されてきているそうだが、パデュー大が他と一線を画すのは、動作を認識させているという点である。
そう遠くない将来、手術を受けようとしたら、手術室にいる人間はあなた独りなんてことがあるかもしれない。
参照元:gizmag(英文)