
観光地として知られる長崎県。修学旅行先にもなる眼鏡橋やグラバー園、大浦天主堂、平和公園、新地中華街、ハウステンボスに軍艦島なんかは有名だと思う。
行事関連も「精霊流し」に、最近人気の「ランタンフェスティバル」などなど盛りだくさんなのだが、その中でも長崎市民が愛するのが「長崎くんち(おくんち)」である。
長崎出身者として、長崎といえば「おくんち」だと思っていたのだが、県外での知名度が思ったほど高くなくてビックリした。マジで? みんなおくんち知らんと……?
・ランタンより「くんち」が有名だった
「長崎くんち(おくんち)」とは毎年10月7日・8日・9日の3日間にわたって開催される、鎮西大社 諏訪神社の秋季大祭。
380年以上の歴史があって、国指定の重要無形民俗文化財にもなっている。和洋中の文化が混ざったお祭りで、おくんちの期間中は街全体がお祭りムード! たくさんの屋台が出る。
おくんちの期間中は、市内の小中学校は午前中で授業が終わっていて、午後からはおくんちに行ってOK。
子供もたくさん参加するので、クラスメイトがおくんちに出るときなんかは、授業を中断して、おくんちのテレビ中継を見るのが常だった。
なお、神事なので演者としておくんちに出る人は公休扱いで欠席にならない。そのレベルの大事なお祭りなのである。
この「おくんち」、長崎市民としては、青森のねぶた祭り、京都の祇園祭、徳島の阿波踊り、さっぽろ雪まつりぐらい有名だとばっかり思っていたのだが、県外の人に話すと「おくんち……? なにそれ?」みたいな反応をされて驚くばかりである。
今となっては県外からの観光客は2月の「ランタンフェスティバル」の方が多いようなのだが、もともと長崎で祭りといえば「おくんち」。ランタンフェスは小規模な祭りだったので、逆転現象にビックリしている。
・7年に1度の「踊町」の演し物
このおくんち、諏訪神社の氏子である長崎市内の各町が「踊町(おどりちょう)」として、7年に1度の当番の年に演し物(だしもの)を奉納するのが特徴。
かつては77の踊町があったのだが、現在の踊町は58ヵ町で、7つの組に区分されている。
町ごとに奉納する演し物が違うのだが、7年に1回しか順番が回ってこない。
奉納される演し物は主に
・踊り(舞を踊るもの)
・曳物(ひきもの / 船型の山車をまわすものが多い)
・担ぎ物(かつぎもの / みこしや龍踊りなど)
・通り物(行列)
の4種類に区分されている。
複数の町が奉納するから、毎年のように見られる龍踊りや川船といった演目もあるけど、「鯨の潮吹き」や「コッコデショ」など数年に1回しか見られないレアな演し物もある。
ちなみに、同じ演目であっても、町ごとに特徴があって、振り付けや衣装などが違う。ちなみに、基本的に踊町に住んでいる人か、その町の人の親戚筋が出ることが多い。(最近は人手不足で他の町から人を募ることもあるよう)
踊り町に所属していないと出られないうえに、7年に1回しか順番が回ってこないので、出られたらラッキー。
・「庭先回り」で街中がお祭りに
演し物が見られるのは、諏訪神社や長崎駅など、座席とステージが組まれた場所だけじゃない。
3日間、各企業や民家の入り口で演し物の一部を披露する「庭先回り」というのが行われるのがポイント!
庭先回りが行われるお店や民家の前には暖簾がかかっていて、演し物が10〜20秒くらいのショートバージョンで行われる。
ちなみに商店街だと、暖簾を出している店が4〜5軒続いていたりする。店ごとに踊ったり山車を回したりするので、演者の人たちはめちゃくちゃ大変だと思う。
おくんち期間中はあちこちで祭りの音や長唄が聞こえてきて、舞や龍踊りが見られる。みんな演し物の列にくっついて歩いていくので、常にひとだかり。
演目の合間には「ヨイヤー!(いいぞ〜みたいな意味)」とまわりが囃し立てたり、「モッテコーイ、モッテコーイ(もう一回持って来いの意味)」という掛け声でリクエストをかけることも多くて、めっちゃくちゃ盛り上がる。
演し物を見るのも楽しい、出店をまわるのも楽しい。街全体が熱狂に包まれる、不思議なお祭りの3日間である。
ちなみに、動作がそろうように一生懸命練習してることもあって、おくんちに出ている男性はかっこよく、そして女性は美しく見える。
・県外の人は少ない…?
中華風の演し物あり、和風の踊りあり、オランダ風の演し物あり……と、かなり異国情緒豊かな祭りなんだけど、他県からやってくる人は少ないように思う。
おくんちの期間に、長崎市内の繁華街を歩けば、高確率で何度も龍踊りや川船、踊りに遭遇できるので、ぜひこの期間に観光に来てみてほしい。10月は季節もいいので、街歩きも気持ちいいし。
町内会が長年仕切っていることもあり、決して荒っぽいお祭りじゃないので、ご安心を。
参考リンク:長崎くんち
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.
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▼町を龍踊りが歩く様子
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