出張時に東京駅で買って美味かった駅弁を時々記事にすることのある私だが、ふと気づいた。”東京駅で買える” 駅弁を紹介してはいるが、どれも “東京駅の” 駅弁ではないのだ。
つまり、新幹線でどこかしらの地方から直送してきた、地方の駅の名物弁当を東京駅の名と共に紹介しているわけだ。では “東京駅の” 駅弁で美味いものは無いのか? そういうテーマなら、今はこれだろう。
・110周年
「東京駅開業110周年記念弁当」だ。
登場したのは10月18日。東京駅が2024年12月20日に開業から110周年を迎えることを記念したもので、12月末ごろまでの期間限定で販売されている。
今は11月11日の朝。消費期限は実質その日のうちと見ていいだろう。値段は1980円だ。
駅員と共同開発したそう。
とにかく色々入ってそうな気配が、原材料から滲み出ている。
アレルギー品目はこんな感じ。
・東京かについては諸説
それでは開けていこう。紙の蓋をオープンすると、箸と手拭き、そして概要を記した紙が入っている。
弁当の中身はこうだ!
順番に見ていくぞ。まずはこの海老の天ぷらの上の、チキンソースカツ! こちらは福井県のものだ。
下の厚揚げの煮たのと里芋ころ煮も福井県! 玉こんにゃくは山形県から参戦!!
これは牛バラ肉玉葱炒め! 青森県産にんにくを使用した、青森県のものだ。下のじゅんさい入りもずく酢は秋田県。
甘味もあるぞ。新潟県の、笹団子風焼きまんじゅう!!!
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てめぇ、全部他県じゃねぇか!! とブチ切れられそうだが、まあ落ち着いてくれ。ちゃんと東京のものも入っている。
東京と言えばこちら、深川めしだ!
そしてはぜの甘露煮、煮穴子、1675年に創業した「酒悦」のつぼ漬け。江戸のハゼは有名だからな。穴子も特に羽田沖のものが江戸前寿司の定番だった。
まあしかし、見ての通り半分くらいは地方のもので、この弁当が真に東京の遺伝子のみで構成されているかというと、それについては諸説あるかもしれない。
だが、この紙にも書かれている通り、東京と、JR東日本エリアの新幹線の終着駅がある県にちなんだものを入れているそうなので、東日本に広がる鉄道網の中核たる東京駅が表現されているという見方もできなくはない。
それに弁当としてみれば、見事に東日本各地の美味いもの詰め合わせセットみたいな様相で、満足度の高さは間違いない。
そしてこの110周年を記念する玉子焼。今現在、最も東京駅らしく、間違いなく東京駅の駅弁で、総力の50%くらいは東日本各地から集めた味覚だが、とても美味い。
名物を動員された各県民には言いたいこともあるかもしれないが、例えばこの里芋ころ煮など、素晴らしく味が染みていていい仕上がりだ。
この弁当を食べて、それぞれの具の産地に行けばもっと美味い本場の味が食えるかもしれないと思い、実際に足を運ぶ切っ掛けになるかもしれない。
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.