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「鳩ヶ谷」(埼玉)と「幡ヶ谷」(東京)を間違えたフリして両方行ったらめちゃくちゃ楽しかった! (鳩ヶ谷多めです)

2024年8月25日

間違えた~! 幡ヶ谷(はたがや:東京・渋谷)に行くはずは鳩ヶ谷(はとがや:埼玉・川口)に来ちまったよ! どうすんだコレ!? 幡ヶ谷と鳩ヶ谷は直線距離で約20キロ……。うん? 意外と近い、間違えても割とどうにかなる距離だな。とはいえ、どうすんだコレ! 誰か何とかして~~ッ!!

……と間違えたフリして、鳩ヶ谷に来ましたよ。「はと」と「はた」で聞き間違えそうな2カ所、それぞれに良さがあるんじゃないの? と思い、1日で両方訪問したら、どちらの良いところも体感できて、めちゃくちゃ楽しかったぞ~!

・鳩ヶ谷多め

鳩ヶ谷と幡ヶ谷は “間違われ界” ではマイナーかもしれない。少なくとも青梅と青海ほどメジャーではないだろう。新宿中心の生活をしている私(佐藤)には、幡ヶ谷の方が馴染が深く、鳩ヶ谷についてはほとんど知らないので、今回は鳩ヶ谷をメインに深堀したいと思う。


私の最寄駅の中野から鳩ヶ谷までは、JR総武線市ヶ谷駅を経由して、東京メトロ南北線から直通の埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線に乗り継ぎ、約1時間である。当編集部で働くようになって15年が経過しているが、もしかしたらこの駅を降りたのは初めてかもしれない。


駅前にはバスのロータリーがあり、周辺はこざっぱりとした印象だ。だが、この街の歴史は古く、江戸時代には日光御成街道(にっこうおなりかいどう)の宿場町として大変栄えていたそうだ。


その名残りを感じさせる神社・仏閣・史跡の類が、駅の北側にゴロゴロある。そうとは知らずに軽い気持ちで鳩ヶ谷に来てしまったことを、私は後悔することになった……


・見沼代用水

まずは氷川神社に参ろうと思い、北に向かって歩いていたところ、小さな川に出た。ここは「見沼代用水 東縁 (みぬまだいようすい ひがしべり)」と呼ばれる全長約16キロの人工的に造られた川だ。


江戸時代の「享保の改革」で新田開発が行われた際に、利根川から取水し芝川に排水する大灌漑(かんがい)事業が行われた。それがこの見沼代用水である。この事業によって新田や周辺の地域は、農業用水を得ることができたのだとか。

詳しくは「さいたま市 見沼たんぼ」のページをご覧頂きたい。利根川と荒川の治水事業の凄さに度肝を抜かれるぞ


今でこそ何気ない川ではあるが、当時の大規模な治水事業があったからこそ、この地域や江戸の人々が豊かに暮らせたのかもしれない。まさか鳩ヶ谷に降りたってすぐに、そんな歴史深い光景を目にするとは考えもしなかった……。


・氷川神社

橋を渡るとすぐに朱色の鳥居に出くわした。この先にある氷川神社の参道だな。


氷川神社の創立は1394年と伝えられており、スサノオノミコトを御祭神に祀っている。1600年には、徳川家康が奥州出陣の途中で境内で休憩をしたと言われている。


境内には御神水が湧き出ており、心身を祓い清め拝受することによって運気が上昇するのだとか。自由にくみ取って良いそうだが、飲む場合は煮沸する必要があるとのこと。


持ち帰りたいと思ったけど、水筒類がなかったので、またの機会にお邪魔しよう。


・市神社

氷川神社をあとにして、大きな通りに出ると、駐車場の一角に大きな看板のある古い建物が……。


ここは川口市指定の有形民俗文化財の「市神社(いちがみしゃ)」だ。


その昔、鳩ヶ谷宿では毎月3の付く日と8の付く日に市(いち)が開かれていたそうだ。その守護神として祀られている。この周辺が商業地として栄えたことを示す、貴重な文化遺産だ。


・良縁地蔵

そこからさらに10分ほど歩くと、平安時代から続く由緒あるお寺「地蔵院(真言宗智山派 筥﨑山)」にたどり着いた。


江戸時代には本寺(本山)として17もの末寺を有し、川口の歴史や文化を育んできた寺である。ここには「良縁地蔵尊」というのが祀られている。制作年代1711年とされるこの地蔵尊には、興味深い昔話があった。


ザックリ紹介すると、その昔、村の裕福な家のおかみがお寺に相談に来たという。息子に縁談の話が来たのに、村の娘と付き合っていてその子と結婚したいという。おかみは「2人を別れさせてほしい」と相談を持ちかけた。

和尚が「お地蔵さまにお願いしてみなさい」というので、おかみは熱心にお祈りしたら、息子はますます村の娘にご執心。それでも熱心にお祈りしていたところ、おかみは村娘の良いところばかり頭に浮かんで、息子は良縁を得ていることに気づいたのだった。

顔を上げ地蔵さまを見ると「良い縁は切ってはいけない」と言われている気がしたそうだ。


「良縁」とは得てしてこういうものかもしれない。どこかから降って湧いてくるものではなく、仲間や家族など、すでに大切な人たちと出会っていると気づくことなのかも


・法性寺

そこからさらに10分程度歩くと、曹洞宗玉龍山「法性寺」についた。ここもまた歴史は古く1476年に創立し、1498年に曹洞宗に改宗して、現在に至っている。この辺は数百年レベルの寺社がゴロゴロありすぎ!


本尊には釈迦如来、千手観音立像があり、裏山には樹齢500年以上のクスノキがあるそうだ。裏山のクスノキに気づかずに寺を出ちゃったよ。見たかったな~……。


・ナポリタンにご飯

駅についてから、街の歴史をまざまざと見せつけられて少し疲れちゃった。とりあえず腹減ったので、「肉の万世」でメシ食います。郊外型万世を利用するのは初めてだな。


万世といえばパーコー麺なのだが、ここにはなく、その代わりに……。


パーコーナポリタンがあった! けど、これボリュームパーコーナポリタンとダブルパーコーナポリタンって、何がボリューム? ダブルなの? それと別にナポリタン大盛りと特盛もあるんだが……。


お店の人に聞くと、ボリュームはパーコー(豚肉の唐揚げ)が1.5倍、ダブルは2倍。ナポリタンの大盛・特盛はそれぞれ麺の量が増えるそうだ。なるほど、そういう使い分けだったのね。


で、ボリュームパーコーナポリタン(税込1430円)を頼んだら、半ライスと豚汁もついてきた! ランチは自動的にセットになるらしい。しかもライスおかわりサービス!! お得すぎだろ!


ラーメンにのったパーコーは何度か食べたことがあるけど、ナポリタンとも合いますねえ。


麺はモチモチでケチャップベッチャリ系。さすが老舗洋食店だけあって、トラディショナルな日本の洋食を忠実に今に伝えている。こういう味が末永く受け継がれていくことを願っている。


・郷土資料館

さて、お腹が満たされたところでもうひと歩きってことで、来た道を戻ってこちらにやってきました。


「川口市立文化財センター郷土資料館」である。ここに来て、私は後悔した。というのは最初にここに来ておけば、奥深い鳩ヶ谷の歴史を学習できたからだ。街をまわる前に知りたかったことが、ここにすべて集約されているといっていい。鳩ヶ谷を散策する際は、絶対ここから始めて頂きたい。


最初に述べたように鳩ヶ谷は日光御成街道の要衝。宿場町として大変栄えた地域で、その歴史はふらりと立ち寄って把握できるほど浅くなかった! 寺社仏閣や史跡は広い範囲に点在しており、すべてを見て回るには、十分な計画が必要だったのである。


常設展示もさることながら、企画展で紹介されていた郷土の偉人「小谷三志(こたにさんし)」がめちゃくちゃ興味深い人物だった。自らが学び、体系化した「不二道(ふじどう)」の教えを30年かけて関東から九州まで広め、門下生は1万人を超えたと言われている


ちなみに不二道は、「富士信仰(山岳信仰のひとつ)」を礎として道徳を説いた教えだ。このほかにも鳩ヶ谷周辺には「蛇信仰」なんてのもあったそうだ。

ここで見たことすべてを到底書ききれん! あまりにも情報が膨大すぎるし、地域の歴史が深すぎる!! それだけの情報が資料館にはギュっと凝縮されているうえに、入館料たったの100円で楽しめるんだから、すげえ施設だ! めっちゃ面白いのでおすすめですぞ!


・ベーゴマ

資料館の3階には、川口の産業と密接に関係する子どもの遊びに関する展示もあった。それは「ベーゴマ」だ。江戸時代に確立された鋳物産業は、後にベーゴマをもたらした。施設には現在流通していないレアベーゴマが多数展示されている。

そして施設の斜向かいにある「株式会社日三鋳造所」ではベーゴマの販売を行っているのである。


50歳の私はギリギリベーゴマ世代ではないのだが、親父に教えてもらったことがある。また『こち亀』でもベーゴマについて学習しているので、ひと通りルールはわかっているつもりだ。

ためしに、初心者用のセットとベーゴマ用の床(台)を購入して帰った。レシートをもらわなかったので、何がいくらだったか忘れてしまったが……。


こちらが5個のコマと2本の紐が入ったセット。本来、紐に結び目がなく自分で結わえないといけないのだが、その結び目の調整が大変難しい。そんな素人の私に、お店の人は結んである初心者用の紐をつけてくれた。


それとこちらはコマが1つと紐が1本のセット。コマにあるアルファベットは、6大学(明治・法政・早稲田・立教・東京・慶應)の頭文字にちなんでいる


それから物珍しさで、漢字ベーゴマの「龍」「トリケラトプス」をあしらったものも買ってみた。このほかにスポーツや虫にちなんだ図柄のものもあった。


少し本題から逸れるが、取材後にベーゴマに編集部メンバーで挑んでみた


が! なかなかまともに回せず……


台に乗せるどころの話ではない。変なところにすっ飛ばす始末


幸い、砂子間が一瞬回せたが、これではベーゴマで対決することすら無理。難しい遊びだな、修行が必要だ……


・昭和を感じる幡ヶ谷

鳩ヶ谷に夢中になりすぎて時間がなくなった! このままでは「鳩ケ谷スゲエ!」って記事になってしまう。ってことで急いで電車に乗って、京王電鉄京王線(京王新線)幡ヶ谷駅に降り立った。


幡ヶ谷といえば、過去に何度か取材で足を運んでおり、個人的に印象に残っているお店は「ハラミが主役。2019年7月にオープンし、翌年に訪問している。

いい名前だなと思って、ずっと覚えていたんだけど、あれから行けてなかったんだよな。今でもあるかな~……。


あった! お店は健在です!!


しかも! 近くに姉妹店の「餃子が主役」ってのも出来てたよ!


この界隈は、新宿から2駅という好立地にも関わらず、昭和のぬくもりを感じる街なんだよね。


少し歩くと、気になるお店がチラホラと……。たとえば、これ「幡ヶ谷 仮面展」、これは仮面屋さん? 中を見たかったけど、あいにく営業していなかった。どんな仮面が展示されてるんだろう。


「お通しがサラダバーの店」、気になるなあ。営業時間は17時から、まだ時間が早すぎるから利用できない、残念。


こういうスナックビルで馴染の店を見つけたい。「ただいま」って入っていけるお店が近くにあるといいよなあ。


・観音湯

ブラブラ歩いていたら、銭湯発見! 「観音湯」だって。盆を過ぎて多少は涼しくなったとはいえ、まだまだ暑い。今日だってすでに汗だくだから、ひとっ風呂浴びちゃうぞ!


北欧サウナ付きの老舗銭湯。男湯には露天風呂、女湯には岩風呂がある。浴槽はそれほど広くはないけど、電気風呂があるのはポイントが高い! 浴場も脱衣所も大変清潔で、名前にふさわしく極楽気分を味わえた!


・玉川上水旧水路緑道

湯冷ましにコーヒーでも飲んで行こう。駅を出てすぐにある「コーヒーハウスぽえむ」へ誘われるように入った。


個人店のように見えるけど、実はここ阿佐ヶ谷発祥の喫茶チェーンである。店構えはだいたい似通っているのだが、メニュー構成や接客が店ごとに違うため、個人店の雰囲気を感じさせる。


塩ミルクフロート(税込700円)を飲んで乾いた喉を潤しつつ、アイスで糖分補給。生き返るわ~。


最後は「玉川上水旧水路緑道」を歩いて帰りましょう。


駅前の首都高を離れて、ひとつ通りを入れば緑に包まれることができる。


緑豊かな歩道だが、緑道として整備されたのが1980年代のこと。すでに40年を経ており、現在再整備が計画されている

緑道沿いの樹木約1200本のうちに約180本が不健全として(31本伐採済み)、158本が伐採される予定だったそうなのだが、住民の働きかけによりそのうちの8割が可能な限り残されることになった

全長2.6キロの緑道の再整備にはかなりの費用がかかると見込まれているようだが、地域に住む人が快適に暮らせるように、整備されることを願っている。


ということで、鳩ヶ谷と幡ヶ谷を均等に楽しみたかったけど、鳩ケ谷に夢中になってしまって、偏りが出てしまったことをお詫び申し上げます。とにかくどっちいい街! 両方訪ねてそれぞれの良さを見つけて頂きたい。「はと」も「はた」も最高!!

参考リンク:さいたま市見沼たんぼ氷川神社川口市立文化財センター地蔵院法性寺肉の万世、川口市立文化財センター「郷土資料館」株式会社日三鋳造所、東京銭湯マップ「観音湯」コーヒー専門店ぽえむ東京新聞
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
Screenshot:Google Maps

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