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創業70年、所沢焼きだんごの老舗「奈美喜屋」の焼きだんご / 控え目な店主の人柄がうかがえる素朴な味

2023年6月10日

埼玉県所沢市といえば、埼玉西武ライオンズのお膝元。「ベルーナドーム」が本拠地であることから、地元の馴染みも深い。所沢駅西口の商店街「プロぺ」の入り口にはライオンズのロゴと共に「MY TEAM」「MY TOWN」と記されており、所沢とライオンズは切っても切れない関係にある。

そんな所沢で古くから親しまれている名物がある。それは「焼きだんご」だ。その歴史は古く、以前は数多く店があったそうなのだが、今では老舗と呼ばれる店も少なくなっている。そのうちの1軒、「奈美喜屋」を訪ねた。控え目な店主の作るだんごは、素朴で人柄をあらわすような優しい味がする。

・奈美喜屋のだんご

お店は、ややわかりにくい場所にある。西武線所沢駅から徒歩約10分、駅北側のファルマン通り交差点から脇道を入ったところだ。地元の人でなければ気づきにくい場所なのだが、私(佐藤)は偶然お店に遭遇した。

立て看板があるからこそ だんご屋さんであるとわかるが、これがなければ素通りしてしまっただろう。


メニューは焼きだんごのみ。1本税込110円で注文は5本からとなっている。


焼きだんごは作り置きをせず、その都度、炭に火をつけるところから始める。5本お願いすると、店主の並木さんはまず焼き場に炭を入れて着火し、扇風機で一気に風を送って火を起こす。そこに米粉で作った団子の串を並べ、あとはうちわで仰ぎつつ、焼き加減を見て串を返していくのである。


そして2度3度と甕(かめ)に入ったしょう油に串を漬けて、再び焼いて味をなじませて完成だ。並木さんはそれを手際よく経木(きょうぎ:紙状に薄く削った木の板)に包み、さらに包装紙に包んで手渡してくれた。


・創業70年

手作りの店のチラシを見ると、「焼きだんご一筋65年」とある。どうやら過去に作ったチラシを手直ししたものらしかった。65年前ということは、1958年創業ってこと!?


「長くやってらっしゃるんですね」と尋ねると、並木さんは「あ、それ少し古いんですよ。もう70年になるかな」と。


佐藤「創業70年! そんなに長くこの地でやってらっしゃるんですか!?」

並木さん「親父の代からだからね。前はこの近くの『トコトコスクエア所沢(商業施設)』の方に店があって、そこで50年。ここに来て20年だね


「大したことじゃない」、そんな口ぶりで話されているけど、70年もの間に世の中は大きく様変わりした。今でさえ原材料費の高騰が売上に多大な影響を与えているはず。単価の安い焼きだんごで商売を続けるのは、苦労も多いのでは……。


佐藤「最近、大変じゃないですか? 何でもかんでも値上がりしてしまって」

並木さん「いや~、とにかくうちは続けていられればいいからね」

と言って、柔らかい笑顔を見せた。


終始、控え目にお話される並木さんの人柄に、何か惹かれるものがあった。きっとこのお店が長年続いているのも、だんごはもとより並木さんの存在があってこそなのだと思う。急な訪問にも関わらず、お話を聞かせていただいたことにお礼を言って私はお店を後にした。


・素朴なやさしい味

そして少し離れた公園へ。さっそくだんごを頂くとしよう。


だんごは1串に4個ずつキレイに並んでいる。炭火の焼き目としょう油の色が浸透してとても美味しそうである。

口に入れると、モッチリしているかと思いきやホロっとした食感。実は所沢の焼きだんごは米粉で作っているそうだ。しょう油の塩気がしっかりとしていて、甘味というよりもコレをツマミに酒が飲めそうな味付けである。


米粉を使うのには理由があり、その昔、所沢は水田を作ることが難しい土地だったそうだ。そのため、陸稲(おかぼ)が栽培されていたという。陸稲は畑地で栽培できる稲の一種で、収穫量が少なく水稲よりも味の面で劣る。

これを粉にひき、蒸して焼いたものが所沢の焼きだんごの始まりで、現在はうるち米を原料にしているらしい。


全盛期は近隣でも5~6店舗の焼きだんご屋さんがあったそうなのだが、今では当時から営業しているお店も少なくなったと、並木さんはいう。


この厳しい状況で商売を続けるのは大変かもしれないが、80年、90年。できれば100年とお店が続いてくれることを願っている。


・今回訪問した店舗の情報

店名 奈美喜屋
住所 埼玉県所沢市御幸町6-5
時間 10:00~18:00
定休日 なし

参考リンク:所沢市
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24

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