奄美大島は鹿児島県の離島。距離的には九州本土より沖縄に近く、11月の現在も半袖で過ごせる温暖な南国である。ちなみにハブもいるらしい。豊かな自然が魅力的な反面、商店や飲食店が全くないエリアも多く、深夜に小腹が空いた時などは詰みがち。
そんな旅行者が必ずお世話になるのが『島人(しまんちゅ)マート』という超局地的コンビニ・チェーンなのだが……ここで私が “人生最高のコンビニおにぎり” に出会ってしまったこと、謹(つつし)んでご報告させていただきたい。
・地域密着すぎるコンビニ
島人マートは現在、奄美大島内に5店舗を展開中。
中でも笠利(かさり)店は奄美空港から最も近いコンビニ(徒歩で約1時間半)として有名である。バスでも行けるが、本数が少ないので基本的には車で向かおう。
店内の様子は普通のコンビニと大差ない。
海から近い店舗には海水浴や釣りグッズが……
街に近い店舗には生活用品が売られているなど、幅広いニーズに対応しているという点が、特徴といえば特徴だろうか。
そんな中、どう見ても明らかに普通じゃないのが “おにぎりコーナー” である。
・にぎってない問題
まず前提として、近年知名度を上げつつある沖縄のソウルフード『ポーク卵おにぎり』を思い出していただきたい。ごはんの間にスパムと卵焼きを挟んだ、俗に言う “おにぎらず” スタイルのアレだ。
奄美大島のスーパーやコンビニでも同様のものが必ず売られているのだが、名称は『ポークサンド』『ポーク卵おむすび』など店ごとにバラつきがある様子。島人マートでは『ランチョンおにぎり』と表記されているので、本記事ではそう呼称させていただこう。
驚くべきことに私が見た限り、島人マートでは『三角おにぎり』が売られていない。沖縄のコンビニでは『ポーク卵おにぎり』と同様、よくある三角のおにぎりも売られていたと記憶しているが……
島人マートでは『さけ』『タラコ』といった普通の具材さえも、全て『おにぎらず』スタイルで販売されているようなのだ。特に気になるものを選んで購入したので、さっそく食べてみよう。
イートインスペースからは青い海が見渡せる。離島って、イイ!
・なぜか実家の味が
さて冒頭で “人生最高のコンビニおにぎり” とお伝えした島人マートのおにぎり、どう素晴らしいのかと言えば、ズバリ「コンビニ感がゼロ」なのだ。
一般的なコンビニおにぎりは、それが悪いというわけではないけれど、どうしても「機械が作ったんだな」と感じさせる風味が残るもの。そこへきて島人マートのおにぎりは「もしかすると本当に母ちゃんが作った?」と想像してしまうほど “実家感” に満ち溢れている。
まずは区別がしづらい『ランチョンおにぎり』(税抜180円)と『ランチョン』(税抜120円)から実食してみよう。
『ランチョンおにぎり』は、おそらく我々のよく知る『ポーク卵おにぎり』と同じもの。薄焼き卵とポークランチョンミートの塩味が超イイ感じに炊いた米(実家の米に酷似)とマッチして、最高の上をいく最極。
一見すると正体不明な『ランチョン』には、小さなポークランチョンミートとたっぷりマヨが。このシンプル構造が米と海苔のウマさを際立たせる。
続いては、これまた紛らわしい『ポークたまごばくだん』(税抜228円)と『こっこばくだん』(税抜218円)。
島人マートのおにぎりを全制覇した結果、個人的に最も気に入ったのがこの『ポークたまごばくだん』だ。
ドキドキしながら黄色い爆弾をかじると……中身はまたしてもランチョン! 材料は『ランチョンおにぎり』とほぼ同じだが、卵焼きが外側に来ることでビックリするほど味わいが変わる。ツナマヨがまたイイ仕事してんだ、これが。
シンプルなカツブシごはんが詰まった『こっこばくだん』は、初めて食べるのに思わず「懐かしい」とつぶやいてしまった。「とりあえず卵焼きを巻いとけば何でもウマくなる」という衝撃の事実、1人でも多くの人に伝えていきたい。
普段の私なら絶対に買わない『唐揚ツナマヨばくだん』(税抜228円)も、レベルの高さゆえペロリと完食。
最後の『しゃけ』(税込120円)を食べ終えたところで、もの珍さだけではない島人マートの実力を確信したのだった。
島人マートのおにぎりは、なぜこれほどまで “母ちゃんのおにぎり” の味がするのか? 要因としては「握っていないこと」「冷蔵していないこと」などが挙げられるだろう。しかし私は「本当に母ちゃんが作っている」という可能性も、割と真剣にありえると思っている。
参考リンク:有限会社スライブ「島人マート 店舗一覧」
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
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