住んでいる地域や個々人の思想にもよるだろうが、なんの気兼ねもなしに外出ができるようになるのは まだまだ先のようである。もちろん外出もしたいが、旅行へ行けるようになるのは一体いつになるのだろうか……(トホホ)。
そんななか、『てんや』がなかなか粋なメニューを発売してくれた。聞けば、“まるで四国を旅している気分になれる天丼” らしいのだ! おお~、イイね〜ッ!
・「まるごと四国」というが…
さっそくお店へ行ってみると、「まるごと四国」という、なかなかのパワーワードが店先のポスターにデカデカと記されていた。
そう、現在~6月中旬まで販売予定の『釜揚げしらす かき揚げ天丼(860円)』は、まさに “四国の名産をまるごと” 盛り込んだ天丼らしいのだ。四国地方へ縁もゆかりもなければ行ったこともない筆者だが、ちょっくら “旅気分” を味わわせていただこう。
まずは、目にも鮮やか「菜の花のごま和え」は徳島県のご当地食材。シャキッとした食感にほろ苦い味わいで、おいしい!
続いて、高知県からは「みょうが」。ピリッとした辛みと、鼻に抜けるさわやかな香りが最高ぜよ。
愛媛県は南予地方の特産品らしい「じゃこ天」。うまいのはもちろんのこと、食べ応えもあって良き。
さぁ、徳島・高知・愛媛に続く4つ目の天ぷらは、高知県からエントリーした「釜揚げしらすかき揚げ」。商品名にも冠されている主役的存在である。サクサクっとした食感にしらすの潮の香り、さらには三つ葉も入っているので、優しい苦みが口の中に──
────えっ!?
こ、高知……だと……!? 高知は「みょうが」担当だったハズなのに、まさかの再登板!? どういうことぜよ!? ていうか香川県は……香川県はどうしちまったんだよぉ──ッ!?
ポスターを再確認してみたら……うぉ──いっ! 香川県、ハブられとるやないかーい! な、なぜに……。
香川といえば、うどん……そうか! うどんを追加注文させようという巧妙な作戦だろうか。──否っ! 『てんや』のうどんは香川県の「讃岐うどん」ではなく、「稲庭風のうどん」である。香川県は……不在ッ!
・広報に聞いてみた
おいおい……こんな仕打ちをして香川県民の怒りを買ってしまったらどうするんだ。「香川県民だけは敵にまわすべからず」って日本国憲法に書いてあるだろうに。そこで、一体どういう了見なのか『てんや』の広報に聞いてみたところ、以下の回答を得られた。
「香川県の食材も非常に魅力的な食材ばかりで、ぎりぎりまで採用を検討していたのですが、諸事情により今回は実現することが出来ず、残念ながら見送りとなってしまいました。次回、またこのような機会がございました際には、全力で開発・調達し、お客様のもとにお届けしたいと思っております」
──なるほど。要するに「がんばったけど、“諸事情” でダメでした」ということだ。
この回答を読んだ筆者は「なんじゃそりゃあああ‼︎ そんなんで香川の兄貴が納得する思てはんのか、コラァァァ──‼︎」……とはみじんたりとも思わず、むしろ切ない気持ちで胸がいっぱいになってしまった。なんならちょっと泣きそうになった。
これは他人事ではない。この身に覚えのあるカンジ……おそらく “企画性” が求められる職業の方なら理解できるのではなかろうか。
・妄想だが、多分こういうこと
たとえば、発案した企画がいくつもの苦難を乗り越え上層部からGoサインが出る。しかし、いざ準備を進めると思わぬ事態が発生してしまうものである。しかし「この企画、やっぱり無理だ! 作戦中止~!」と撤退しようとしても、大概はもう後戻りできない段階に来てしまっていたりするのだ。
そうなってしまったら、もうチカラ技で「ええい!!」とそのまま突っ走るしかない。そして半ばヤケクソになりながらやってみると──意外とウマくいったりすることもあれば、「あっちゃ〜」という結果になったり…………。
てんやさん……今回はそのパターンなんでしょう?(※ぜんぶ筆者の妄想です)わかるぞ、わかりすぎるぞ~(泣)。筆者が歩んできた人生も、不測の事態の連続であった。人生とは、“諸事情” により予定通りにいかないものである(※これはガチ)。
・香川県民よ、怒りを収めるのだ
てんやが今回、弁明している “諸事情” がなんなのかは明かされていない。察するにコスト面での事情か、あるいは食材の供給量が足りなかったのか。昨今のコロナ禍により物流に思わぬ問題が発生したのかもしれない。あるいは、これらの全てが重なった可能性もある(知らんけど)。
なんにせよ、間違いなく言えることは……『まるごと四国~釜揚げしらすかき揚げ天丼』からは、四国の風を十二分に感じることができる──ということである。
そんなわけで、ちょっと四国へトリップしたい人は『釜揚げしらすかき揚げ天丼』をご賞味あれ。そして、香川県の民よ。『てんや』のチャレンジ・スピリットと四国愛にめんじて、その怒りを収めていただきたい。
参考リンク:釜揚げかき揚げしらす丼
執筆:ショーン
Photo:RocketNews24.