どんな分野にも、特定の物事をよく知り、深堀りする人達が一定数いるものだ。いわゆる「マニア」である。マニアは何を考え、何を見て、どう行動するのか? その生態の一端を垣間見ることのできるイベントが、東京・新宿の東急ハンズで開催されている。
その名も『マニアフェスタ × 東急ハンズ 2019冬 』だ。40組以上のマニアが出展しているこのイベントで、とくに印象に残ったマニアのグッズ3点を購入したので、紹介したい。
・マニアの品々
マニアフェスタは、マニアの企画会社「別視点」が主催している。今回出展しているのは、「離島マニア」や「散歩マニア」など、何となく想像のつくものから、「ない本マニア」や「ゴミのようでゴミじゃないものマニア」など、一瞬ナニ? と思ってしまうものまで、総勢44組。
出展している品々を見ると、「そこまで見るか!」と唸るようなものばかりだ。さすがマニア! 展示販売している商品のなかで、素通りすることができずに思わず買ってしまった商品は、次の3つである。
・いぬくそ看板大全 第1版(税別800円)
まず最初に紹介したいのが、「いぬくそ看板大全」である。誰でも1度や2度、人によっては毎日目にするであろう、犬のフンの放置を禁じる看板。その様子を紹介したのが本書だ。ただの看板と侮るなかれ。正直私(佐藤)も本書を読むまでは、「どこにでもあるもの」と考えていたのだが、そうではないらしいのだ。
本書の冒頭で著者の「うんこ看板」氏は、『いぬクソ看板とは、ドラマである』と言い切っている。そのことを裏付けるためにうんこ看板氏は、看板の “設置場所” と看板に込められた “感情” を軸に、看板属性を4つに分類。その看板につづられた文字から、看板を設置するに至った情景を読み取ろうと努めている。
また、いぬくそ看板に関心を抱くようになったいきさつを、うんこ看板氏はエッセイで赤裸々に語っている。これを読めば、もうあの看板を「どこにでもあるもの」で片づけることはできなくなる。日常を変える魔法の1冊である。
・八画文化会館「偏愛特集 パチンコホールが大好き!!」(税別1800円)
地方出身で、20歳の頃にパチンコホールでアルバイトした経験がある私には、読まずにはいられない1冊。その昔、いや今でもパチンコは田舎の娯楽の1つである。しかし時代と共に、多くのパチンコホールは廃れ、経営者が逃亡して廃墟となったホールも少なくない。そんなパチンコホールの現在の在り方を、美しい写真と丁寧な解説を交えて紹介している。
本書は八画文化会館の不定期刊行マガジンであり、全国2300軒のパチンコホールを探訪した、「栄華」さんの特別監修号とのこと。140にも及ぶパチンコホールを紹介しており、見知らぬ街の見知らぬホールの写真でありながら、どこか懐かしく、郷愁を駆り立てるものがある。
だが、単純な悲壮感に彩られているわけではない。むしろ「愛」と呼ぶにふさわしい優しい目線が、1つひとつのホールに注がれているのを感じる。本書を手にして、どこか知らない街へと、旅に出たい気分になる。
・中村市 大判都市詳細地図(2018年版) (税別1137円)
空想地図マニア、「地理人」さんの作った架空の都市「中村市」の1万5000分の1の縮尺地図。実在しない街の地図であるがゆえに、この地図が指し示す場所はどこにもない。しかし見ているだけで、なぜかワクワクしてしまう。
どうしてワクワクしてしまうのか? 私自身が感じるワクワクの理由について考えてみたところ、子どもの頃のファミコン体験に由来しているのではないか。ドラクエに代表されるようなRPGで見知らぬ街を訪れた時、そこにも架空の街が広がっている。ゲーム上でそこを訪れることはあっても、実在はしていないのだ。あの時の冒険心を、この架空の地図は思い出させてくれている気がする。
そして何より、地図を見ていると「想像」が自由なものであることを、改めて教えられているようだ。
マニアフェスタには、驚きと感動があふれている。そして誰でも深く物事を愛でる気持ちを持てば、マニアになれるのだと感じた次第である。近くを訪ねることがあったらぜひ、会場に足を運んでみて欲しい。もし今回を逃しても、マニアフェスタは定期的に開催しているので、公式Twitter ( @maniafesta55 )のアカウントをフォローしておくといいだろう。
・イベント詳細
名称 マニアフェスタ × 東急ハンズ 2019冬
会場 東急ハンズ新宿店2F(東京都渋谷区千駄ケ谷5丁目24−2)
期間 2019年11月15~28日
時間 10:00~21:00(最終日は19:00)
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24