2016年8月6日から4日間(8/6・7、13・14)の日程で開幕した、日本屈指の規模を誇る「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016」(以下、RIJF2016)。前半2日の来場者数は延べ13万5000人、2000年の初年度から数えて250万人を越えたそうだ。そのRIJF2016に、実力派ロックバンドの「人間椅子」が参戦した。
活動27年の人間椅子、実は今年の参加が初めてとのこと。きっと会場では初めて見るという人も多かったはず。初参戦のRIJFで、当然ながら圧巻のパフォーマンスを披露したのである。この日の暑さをしのぐようなアツいステージで、聴衆を魅了した。
・まとわりつく暑さ
会場となった国営ひたち海浜公園はこの日、快晴に恵まれた。抜けるような空の青さとまぶしい太陽。夏を絵に描いたような素晴らしい天候だった。しかし「さわやか」とは程遠く、まとわりつくような暑さ。ジッとしているだけで汗が全身から噴き出してくるようだ。
時刻は11時25分、BUZZ STAGEに登場した人間椅子メンバー。まさか昼日中にメンバーの姿を拝む日が来るとは思わなかった。人間椅子の音楽を一言でいえば「夜」であり「闇」である。異世界にいざなうような重苦しい音が、白日のもとでより一層鮮明にそのおどろおどろしさを増すようにさえ感じられる。
登場SEの『此岸御詠歌』の鈴の音が鳴り響くと、ステージ上には張り詰めた空気が漂い、禍々しき行進が始まる予感がする。にわかにヒヤリとした空気を感じるのは、気のせいではないはず。
・『なまはげ』で始まる
そしてうねるようなリフで始まる1曲目『なまはげ』。秋田の民俗行事を題材にしたこの曲は、どう考えても夏フェスにふさわしいとは思えない。しかし、近年の人間椅子の作品において、彼らの演奏やスタイル、また音楽性を象徴するエッセンスがふんだんに詰め込まれた1曲だ。初のロッキンジャパン、初めて人間椅子を聞く人にとっては、名刺代わりにふさわしい。「怠けものはいねかーーッ!」という雄叫びに、圧倒された人もいたかもしれない。
・諭すような読経
続く『芳一受難』は、小泉八雲の「耳なし芳一」がモチーフ。途中読経を交える展開がとても印象的な曲なのだが、これまた抜けるような青空を、曇天に変えてしまうような重苦しい1曲だ。「色不異空空不異色色即是空空即是色」、唸るように唱える般若心経が、まるで諭しているように聞こえてくる。
・張り裂けるように響くビート
普段のライブであれば、最初の2曲でMCが入るところ、続けざまに重量感のあるドラムの連打が繰り返されて、『相剋の家』へと畳みかける。そこに地を這うようなベースリフが折り重なり、BUZZ STAGEのテントがビリビリと震えて、張り裂けそうだ。人間椅子の演奏を初めて聞く人たちは思ったに違いない。3人の音か? と。
・宇宙へと飛翔
地を這っていた音は、突然に宇宙へと飛躍する。コスミックホラーの巨匠、アメリカの作家H・P・ラブクラフトの作品をモチーフにした『宇宙からの色』へと続き、疾走するビートで聴衆を圧倒した。
・たどり着く先は地獄
そして最後に人間椅子が誘う “闇の旅” は地獄へとたどり着く。ライブの定番曲『針の山』だ。すでに汗だくの聴衆に、なおも激しいリフで攻め立て、外気にも勝る熱気で煽る。もはや夏の暑さをも凌駕して、灼熱の演奏を繰り広げるその様は、まさしく “灼熱地獄” だ。
30分のステージは、本当にまたたく間に終わりを迎えた。メンバーにとっては初めての参加となったRIJF2016。実のところツアー中の野外フェス参加であった。このステージで間違いなくツアーへの弾みがつき、さらに演奏に磨きがかかることだろう。
・終演後に
終演後にメンバーに感想を聞くと、ベースボーカルの鈴木研一氏は初参戦について「思ったよりも緊張しなかったですね。いつも通りだったかな」と振り返る。ドラムボーカルのナカジマノブ氏は「(BUZZ STAGEの)テントの向こうまで見渡せて、とても気持ち良く叩くことができましたよ。ちょっと叩き足りなかったかな」と語った。そして、ギターボーカルの和嶋慎治氏は「短い時間でエンジン全開でやりましたよ。(人間椅子を)初めて見る人にも、ベストなものが見せられたかなと思ってます」と、手ごたえを感じている様子だった。
RIJF2016の出演は、彼らに大きなものを残したに違いない。これを弾みに、ツアーの後半はさらにパフォーマンスは高みへと向かうことだろう。そして、来年はさらに大きなステージに出演できることに期待したい。
参考リンク:ROCK IN JAPAN FES. 2016
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24