ロケットニュース24

【本人降臨】独創的アーティスト「平沢進」は何を考えながら作品を創っているのか?

2015年12月22日

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これまで二度に渡り、音楽使い平沢進さんの先進的なオリジナリティをご紹介してきた。その類い稀な音楽活動は、どのような発想のもとでなされているのか……ファンならずとも興味深いのではないか。

また、前回ご紹介した観客参加型のインタラクティブ・ライブは、どのようにして作られたのか……などなど、聞いてみたいことを山ほどあるが……。実は、平沢さんは ほとんどメディアに露出をしない方。であるにもかかわらず、今回なんと、ご本人自ら一問一答形式で答えてくださった! その数、全21問!! なんてラッキー!!! 超絶貴重なインタビューは以下のとおりだ……!!!!

質問1:今回のインタラクティブ・ライブのシナリオならびに新作アルバムの歌詞、どちらもストーリーが非常によく作り込まれており、その世界観には双方の関連性を感じましたが、今回のライブのシナリオとアルバムの楽曲制作は同時進行だったのでしょうか?

A: 同時進行ではありません。ライブのシナリオは後追いです。

──また、過去の作品はライブのシナリオが先、またはアルバムが先、など、ケースバイケースなものなのでしょうか?

A:そのとおりです。

質問2:物語を考えることはお好きなのですか?

A:私は物語を考え出すことができると自覚しています。それが好きか嫌いかは考えたことがありません。

質問3:創作において、意識していることは何ですか?

A:難問です。創作には幾つもの段階と領域があり、それぞれに意識されることは異なります。意識しているものを一言で表すのは不可能です。

質問4:創作において、リスナーの満足と、ご自身の満足とは比例していますか? あるいは、どちらかを優先して行われていますか?

A:リスナーの満足は結果論です。私は創作時にリスナーの満足を考えたことがありません。有難いことです。

質問5:インタラクティブ・ライブと通常のライブ、準備と実際の公演ともに、大変なのはどちらですか? やはり前者ですか?

A:ご推察の通りです。

質問6:「平沢さんは時代を先取っている」もしくは、「時代が後を追っている」と謳(うた)われることは今までに幾度となくあったかと思いますが、ご自身でそう感じることはありますか? YESの場合、それはどういった時ですか?

A:先取りしているように見えるのは、私の自然な行為の結果です。自分の自然な行為について他者とは比較する意味がありません。先取りしているという評価をいただいた時に、ああ、そうなんだな、と思うだけです。

質問7:今は音楽配信が主流となりましたが、こうなることは予想されていたのですか? また、現状の問題や改善すべき点は、どのようなことだと感じられますか?

A:主流と呼べるほどの実態は私には見えていません。問題や改善点は多く存在しますが、それはリスナーとアーティストを直結させる側面を持つDL配信においてはアーティスト毎の課題となるでしょう。

──なるほど、なるほど……!! 想像のつかない回答の連続であることは想像通り。平沢さんならではの回答は、次ページ(その2)にまだまだ続くぞ!!

【本人降臨】独創的アーティスト「平沢進」は何を考えながら作品を創っているのか?(その2)

質問8:ご自身の作品=お好みのサウンドですか? それとも、ご自身を最も表現できるスタイルなのでしょうか?

A:難問です。好むと好まざるとにかかわらず作品のもつ表情(サウンド)には意図があり、好みか好みでないかの評価をしたことがありません。ご質問にある「それとも」以降の意味に即した回答が見当たりません。

質問9:平沢さんのご兄弟は、お兄さんはイラスト、進さんは音楽と、お二人ともに、「既存のものには欲しい(好む)形のものがない。よって、自ら創り出している」。というような、いわばエンターテイメントを自給自足している、という印象を受けます。当たっていますか?

A:難問です。自給自足という表現は自らが消費するというニュアンスを含んでいますが、私や兄が自分の作品にそのように接触しているのかどうか。少なくとも私は違います。また、同時に兄の代弁も兼ねますが「無いから作る」という動機も持ったことはありません。既存のものと違うのは結果論です。

質問10:平沢さんの発想の原点はどこですか?

A:難問です。発想は仕事の様々な段階と領域に生じるもので、それぞれ原点は異なります。また原点が存在しないものもあります。一言で包括するのは不可能です。

質問11:平沢さんは以前Twitterで、「この子は音楽使いになるえー! 平沢家に音楽使いの子が生まれたえー!!」といったツイートをなさっていましたが、“音楽使い” はまさに平沢さんにぴったりな表現だと思います。ご自身ではどう思われますか?

A:それは私自身が付けた呼称で「ミュージシャン」と区別するには重宝する言葉です。

質問12:平沢さんの曲は難易度激高だと思うのですが、上手に歌うコツを教えてください。

A:多くの産業音楽は「歌いやすさ」をもって消費者に寄り添っている様を偽装していると同時に、そのような形態が売り上げに通じるという信仰の元に作られています。私にはリスナーに寄り添う姿勢が欠如しているために、歌の難易度が高いまま放置されていることについては弁解の余地がありません。なにとぞ「練習、練習、また練習」を心がけていただければと思います。

質問13:「ハッ」とか「フッ」などの和田アキ子的掛け声、あるいは「ハイホー」「ワッセーラ」的な、北島三郎風の掛け声は、お好きなのですか? お好きだとお見受けしました。

A:和田アキ子様、北島三郎様を存じ上げない不勉強をお詫びいたします。お二方に共通する掛け声を使用すると「好き」だと推測されることがあるということを只今勉強させていただきました。ありがとうございます。

質問14:「これをすればファンが喜ぶ」といった武器はお幾つくらいお持ちですか?

A:喜ばせる武器……。ぜひともアメリカに輸出したいものです。

質問15:リスナーたちは、Twitter、ライブにおいて平沢さんが狙った通りのリアクションをしていますか?

A:先のご質問にもお答えした通り、リスナーの反応は結果論です。

質問16:今回のライブでは2日目に大きなヒントをいただきました。しかし3日目、バッドエンドに向かう私たち観客に対し、どうお思いだったのでしょうか?

A:それがインタラクティブ・ライブです。

質問17:また、ご自身としても、リスナーがどういう進路を選択するかに関し、期待や不安はありますか?

A:先のご質問にもお答えした通り、リスナーの反応は結果論です。

平沢さんならではの回答の連続。そしてその一言一句を丁寧に選ばれているのが印象的だ。さらなるインタビューは次ページ(その3)へ!

Report:DEBUNEKO
Photo:RocketNews24.

【本人降臨】独創的アーティスト「平沢進」は何を考えながら作品を創っているのか?(その3)

質問18:今回のライブでは、『鉄切り歌(鉄山を登る男)』のサビを一部歌唱せず、オーディエンスに歌わせるという演出がありました。平沢さんにとってはかなり珍しい演出ではないかと思いますが、どのような気分で聞かれていましたか?

A:イヤホン・モニターをしてスポットライトを浴びている状態は、観客が見えない、聞こえない状態です。私は歌うなとは一度も申し上げておりません。また、歌えとも申し上げておりません。どうぞご自由に。

質問19:観客からは、『オーロラ』と『橋大工』が聴けた2日目が「神回」という声が多いですが、平沢さんの中で一番スムーズに進行した、あるいは満足された日程はいつですか?

A:連日自分には反省点があり、一概に自己評価はできません。また、舞台は総合ゲージュツですから、私だけOKでも成立しません。

質問20:平沢さんは、一つの曲に色んな顔を持たせることに非常に長けていらっしゃると思います。一度世に公開し、イメージの定着した曲に手を加えるのは、実は勇気のいることなのではないかと思うのですが、いかがですか?

A:私の知るかぎり、80年代以降、特にニューウエーブのアーティストにとってリミックス、リメイクは自然な行為で、リスナーもその価値を理解しているはずです。それを行うか、行わないかにかかわらず自らの形態を壊すことのできない音楽は退屈な場合があります。

質問21:平沢さんにとって、しぶき高きアドレナリンがコロナ状に輪を描くのはどんな瞬間ですか?(平沢さんのテンションがあがるのはどんなときですか?)※とある楽曲の歌詞より引用。

A:私はリスナーの歌詞解釈について「それは間違っている」とは言わない姿勢を維持していますが、その解釈は間違っています。

──というわけで、以上が平沢さんによる一問一答。(私は歌詞の解釈を完全に間違えていた。)

回答の一つ一つに、迷いやブレを感じないのは私だけではないだろう。一貫性のある、確信ともいえる考えをお持ちの平沢進さん。その信念はブレることなく、ご自身の活動全体で貫かれている。実際に、平沢さんの楽曲はいつの時代の曲も色あせて感じない。正直、十数年前に作られた曲も、「最近の曲だ」と言われればそう聞こえるほどだ。

好むと好まざるとにかかわらず、自身の脳裏に発生した物語や世界観を表現するために、日々 様々な演出方法を生み出しているということ。その結果としての、リスナーの反応であり、また社会の評価であり、それはリスナーを喜ばせるためでもなければ、近未来を見据えているわけでもない。全ては結果論、とのことだ。

“音楽使い” 平沢進の作品や活動は、こうした考えのもとに展開されている。ほんの一部を垣間見たに過ぎないが、今回のインタビュー内容を踏まえて楽曲に触れてみよう。知らなかった人は感嘆するかもしれないし、知っていた人も、今までとは一味違った世界を感じるかもしれないぞ。

Report:DEBUNEKO
Photo:RocketNews24.

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