前橋育英高校の優勝で幕を閉じた第95回全国高校野球選手権大会。その大会の中で、ひと際目立った選手がいた。「カット打法」で注目を浴びた岩手県代表・花巻東高校の千葉翔太選手だ。
ファウルで粘り続ける「カット打法」は、アップされている動画でもわかるように投手との根比べであり、それは彼の高い技術があってこそできるものである。それでは、なぜここまで話題になっているのだろうか。
・千葉選手のボールカット技術
千葉選手のボールカットは、2ストライクに追い込まれてからはバスターのような構えで、ファウルにするのが特徴だ。球数を投げさせつつミスを誘い、何としても塁に出ようという気概が感じられるもので、特集も多く組まれたことは記憶に新しい。
ちなみに千葉選手は、このカット打法で初戦の滋賀県代表・彦根東戦では34球、準々決勝の徳島県代表・鳴門戦では41球を相手投手に投げさせた。選球眼のよさはもちろんだが、ファウルを打つ練習もしたという技術は高度なものである。
・スタイルを貫くことで掴んだ定位置
その特技を磨き、強豪校である花巻東高校の定位置を掴んだ千葉選手。自分のスタイルを確立したことで2番という打順も任されたのだろう。カット打法は「甲子園で優勝する」という目標のために、彼が日々磨いてきた自分の武器だ。
・白黒二択ならシロ
しかし、準々決勝の後に大会本部と審判部から花巻東サイドに「高校野球規則に『バントの定義』という項目があります。ご理解ください」といった通達があった。つまり、ファウルカットでも審判がバントと見なせばアウトにするということだった。
が、バントになるかというとそうではない。バントとはスイングをしないでミートを意識して転がす打球であるが、千葉選手はバットを振り切っている。だからこそ、大会序盤に出塁率と合わせて、彼が注目されたのではないか。
・グレーな対応をした高野連
問題なのは、最後に「ご理解ください」という対応をした大会運営。ダメならダメとハッキリ言うことで、事態が大きくなることはなかったはずだ。ただ、そこには大会途中であり、明確にできなかったという事情があったと思われる。
そういった事情をグレーな対応でまとめたことが、千葉選手の積み重ねてきた技術を否定し、「カット打法」はよくないというイメージまで作ってしまったのではないか。タイミングといい、対応の仕方が問題をここまで大きくさせたといってもいいだろう。
準々決勝の宮崎県代表・延岡学園高校では、自分のスタイルが出せずにファウル数が「0」で終わった千葉選手。悔いは残っただろうが、自分とチームのために積み上げてきた技術に胸を張って欲しい思う。