連日、熱戦が繰り広げられている第95回夏の甲子園。全国3957校の代表49校がその頂点を目指して戦っている。そこに登り詰めるまでには、地方大会からさまざまなドラマがあり、高校球児のひたむきなプレーには感動を覚える。
そこで今回は、甲子園を目指す地方大会での最後まで諦めない姿勢が生んだ青春ドラマをご紹介したい。YouTubeにアップされた動画のタイトルは「高校野球 2003夏 千葉県予選 京葉工業 vs 浦安南」だ!
・京葉工業高校 vs 浦安南高校
時は2003年、夏の甲子園に向けての千葉県予選。1回戦勝者の「京葉工業高校」、そして1回戦不戦の「浦安南高校」が2回戦で激突した。試合は、京葉工が浦安南を圧倒し、一方的な展開で進んだ。
・地方大会のコールドゲーム条件
地方大会でのコールドゲームは、得点差が5回までに10点差以上、7回までに7点差以上ついた場合に適用される。浦安南は毎回得点を許し、4回を終わって0ー22と大差を広げられ、窮地に追い込まれてしまう。
・部員不足で急遽補充
7年ぶりの夏の大会出場だった浦安南野球部だが、実は部員5人の不足分をサッカー部に頼んでの出場であった。この年の野球部員は6人しかいなかったのである。全員で練習できたのはたったの2週間という短い期間だけに、京葉工との実力差があったのも納得できる。
・前代未聞の幕切れ
コールド負けが濃厚となった浦安南の5回表の攻撃。2アウト走者なし、あとひとりでゲームセットという場面で、代打として打席に立ったのは佐久間選手だった。センター前ヒットを放ち、出塁するのだが、前代未聞の幕切れは突如としてやってくる。
次打者で京葉工のキャッチャーがボールを逸らした時であった。盗塁を試みた佐久間選手はなんと二塁を大きくオーバーランしてしまう。あまりに駆け抜けすぎたため、帰塁前にタッチアウトとなり、そのまま試合は終了してしまった。
・一生懸命に走る姿
凡ミスに見えるが、注目したいのはひたむきな姿勢だ。佐久間選手は野球のルールを知らないと思われるだけにサッカー部所属だろう。それでもヒットを放ち、最後まで全力で走った。大差で負けており、助っ人であれば簡単に試合を諦めても仕方がないところだが、彼は野球部のために自分自身のできる限りのことしたのだ。
人員不足で助っ人して試合に出た選手が佐久間選手と同じ境遇に置かれた場合、果たしてどれだけの選手が彼のように一生懸命プレーできるだろうか。形はどうあれ、駆け抜けすぎた青春は彼と仲間にとって色褪せないものとなったに違いない。