2013年7月21日の投票日を間近に盛り上がる参議院選挙。今回からインターネットを使った選挙活動が解禁され、その点でも注目されている選挙戦だ。
そんななか、7月16日に民主党の菅直人元首相が自民党の安倍晋三首相を名誉毀損で提訴したと発表した。選挙戦のさなか、しかも総理大臣経験者が現職総理大臣を訴えるのは異例の事態である。
・7月16日、菅直人氏が安倍首相を提訴したと発表
民主党の菅直人氏が、自身のブログ及び会見で自民党の安倍晋三首相を名誉毀損で提訴したと発表した。菅氏のブログによると「参院選挙期間中のネットを使った悪質な名誉棄損行為を放置できないと考えて」とのことである。
・提訴の理由は安倍首相のメルマガ
菅氏によると、名誉毀損にあたるというのは安倍首相の2011年5月20日付のメールマガジンの内容だという。この『菅総理の海水注入指示はでっち上げ』というタイトルのメールマガジンは7月16日現在、安倍氏の公式サイトで見ることができる。
・安倍首相のメルマガの内容
福島第一原発問題で菅首相の唯一の英断と言われている「3月12日の海水注入の指示。」が、実は全くのでっち上げである事が明らかになりました。
複数の関係者の証言によると、事実は次の通りです。
12日19時04分に海水注入を開始。
同時に官邸に報告したところ、菅総理が「俺は聞いていない!」と激怒。
官邸から東電への電話で、19時25分海水注入を中断。
実務者、識者の説得で20時20分注入再会。実際は、東電はマニュアル通り淡水が切れた後、海水を注入しようと考えており、実行した。
しかし、やっと始まった海水注入を止めたのは、何と菅総理その人だったのです。この事実を糊塗する為最初の注入を『試験注入』として、止めてしまった事をごまかし、そしてなんと海水注入を菅総理の英断とのウソを側近は新聞・テレビにばらまいたのです。(メルマガ引用ここまで)
安倍首相は当時、このメルマガの内容を理由に菅氏に辞職を求めていた。
・菅氏「内容は全くの虚偽の情報」
だが、この内容について菅氏は Twitter で「海水注入を私が止めたという虚偽情報」と指摘。さらに「私の名誉を著しく傷つける中傷記事であるだけでなく、民主党と民主党政権に対しマイナスとなるイメージを植え付け、選挙の公平性をも損なう」(ブログより引用)と反論している。
また、菅氏によるとこれまで、安倍首相に記事の取り下げを再三、訂正と謝罪を要求したが、それは無視されつづけたという。
・元首相が現職の首相を提訴する事態
それにしても、元首相が現職の首相を提訴するとは異例の事態である。
菅氏もその点を熟慮したというが、「安倍晋三氏は現職総理大臣として公平な選挙の実施に責任を持つ立場」であるとした上で、「安倍総理自身が当時すでに総理経験者であり、虚偽情報に基づいて私に対し総理の辞任まで要求していたことを考えて、あえて、提訴に踏み切りました。」(ブログより)と、提訴に至った経緯を述べている。
・訴状や証拠を随時公開する予定
国民にとってはまさに寝耳に水だが、菅氏によると何度も謝罪と訂正を求め、また7月11日にはブログで「週明けまで安倍総理から何らかの反応がない場合には名誉毀損を正す他の手段を検討せざるを得ない。」と “最後通告” を行っている。
さらに、今後訴状や安倍首相のメルマガ内容が虚偽であることの証拠を公開していくとのことだ。投票日まで1週間を切っている。菅氏と安倍首相、どちらの主張が事実なのか。真実と選挙戦への影響が気になるところだ。
参照元: Ustream、菅直人オフィシャルブログ / Twitter、安倍晋三公式サイト
▼菅氏の反論
安倍晋三氏の海水注入を私が止めたという虚偽情報のメルマガは、私に対する名誉毀損であるばかりか、参院選期間中にもネットで発信を続けており、選挙違反の疑いが濃い。
— 菅直人 衆議院議員 (@NaotoKan) July 13, 2013
▼こちらが名誉毀損とされる安倍首相のメルマガだ