しばらく前から、河口湖駅近くのローソン周辺が話題だ。ローソンの背後に富士山がそびえ立つ、映え写真のスポットとして海外でバズった場所である。
同じ写真を撮りたい観光客が殺到して問題が生じた結果、対策として向かいの歩道に目隠しのための黒い幕が設置されることに。
ぶっちゃけ “例の黒い幕” だけで何のことか通じるだろう。様々な意見が飛び交っているが、実際のところ幕の設置後の現場はどうなっているのか? 気になったので見に行くことに。
・河口湖
というわけで、ひさしぶりに河口湖までやって来た。
改札を出ると、駅舎内は観光客でいっぱいだった。登山装備っぽいものを持った人もいる。富士山目当てだろうか。
駅前のロータリーも、バスかタクシー関連と思しき行列で混雑している。
聞こえてくる言語に日本語は皆無。ほぼ中国語と韓国語と英語、ときおりインドネシア語、フランス語、スペイン語といった具合だ。
駅舎周辺だけで観光客が500人くらいはいそうだが、そこに日本人はほとんどいないと思われる。河口湖のインバウンド需要、マジで凄まじいな……!
前に来たのは2021年。東京駅から河口湖まで直通の「中央特快 富士山・河口湖」で、万が一寝過ごしたらどうなるのか……を実地検証するためだった。
2月の河口湖というクソ寒い時期に午後10時過ぎの終電で河口湖入りし、翌朝の始発まで必死に耐えたのだ。
今話題のローソンも3年前の記事に登場している。そう、この駅を出てすぐ左手に看板が見えたローソンがそれだ。
帰り際にお茶を買った記憶があるが、当時はこんな形で話題になる未来など予想できなかった。
・幕
さっそくローソン付近へ。これが例の黒い幕か。
ニュースでローソン向かいの歯医者が迷惑を被っていると報じられていたが、かつて撮影スポットとなっていた場所は、まさに入り口だった。
ここに大人数でたむろされたら、営業などできないだろう。この歯医者が被っている観光客による問題は、入り口前の歩道だけでは無いようだった。
幕の内側はどうなっているのか? こうだ。厳重なバリケードが設置されている。
そして「Do Not Enter!!」の張り紙。奥には警備員がおり、通行人が度を超えてたむろしないよう警戒していた。
幕と幕のつなぎ目も「防犯カメラ作動中」の張り紙で塞ぐ徹底仕様。
しかし、黒い幕のちょうど目の高さくらいの場所には、何か所か穴があけられてしまっていた。
この日、私は近くで一通りの状況を把握したのち、地域住民の協力を得て少し離れた場所に陣取り、超望遠レンズ越しに1時間ほど黒い幕周辺を観測し続けた。その間に、警備員の隙をついて穴にスマホのカメラを押し当てる人を数名だけ確認した。
NBA選手なみの高身長な人が通りがかり、一瞬立ち止まってスマホを持った手を上に伸ばし、幕の向こうを撮影する瞬間もあった。
この場所で立ち止まっての撮影を完全にゼロにできたわけではないのは確かだ。しかし重要なのは、歯医者の営業が妨害されたり、車道に人があふれるほどの滞留が起きていないという点だ。つまり黒い幕は有効なのだ。
世の中には0か100かでしか評価できないタイプの人もいるため、わずかな例外を根拠に全てが完全に無駄だと断じる声は出るだろう。
だが、私が現場を訪れた時にも現地はすさまじい数の観光客で賑わっていたにもかかわらず、黒い幕の歯医者側で人の通行が滞る状況は一瞬も起きなかった。
黒い幕を監視する警備員の方や、観測に際し私に自宅の敷地と椅子を貸してくれた親切な地元民にも話を伺ったが、「幕が無かったときは、こんなに人がいないなんてことはあり得なかった」「通れたもんじゃなかったよ」と、効果を確信している様子。
この結果をもって、黒い幕が最善策かは別にしても、現時点で局所的な状況の改善に貢献しているのは間違いないと結論付けたい。
ニュースで見た時は、この幕の車道側に出て撮影する人も出るのではないかと思ったが、現地を見た感じ、それはよっぽど思考に問題を抱えた人しかやらないだろう。
この通り現場は交通量が半端ない。駅に向かう外国人環境客を満載した大型バスも、超高頻度で通過するのだ。
幕の設置前までは、当人たちも歩道内で撮るつもりではあるが、超満員で車道に出てしまった……という状態だったのだと推測する。
最初から歩道側が塞がれている状態で、この交通事情を前に確固たる意志を持って車道をふさぐのは、どの文化圏だろうと問題を起こしてしまうヤバい人だけではないか。
そういう人も存在するだろうが、完全にイレギュラーだ。それを基準に物事を論じるのは度が過ぎていると感じる。いざイレギュラーが登場した場合の対処は、真向いの交番にいる警察官の仕事として良いと思う。
・ローソン
では、この場所の問題は解決に至ったのか? それについては、まだしばらく様子を見る必要がありそうだ。
写真の構図的にベストなのは、歯医者側の歩道からの撮影。それは間違いない。しかしローソンと背後の富士山を撮れれば良いというのであれば、ローソン側でも可能なのだ。
歯医者側からほどいい感じには撮れないせいか数は少ないが、すでにちょっとした撮影スポットになっているもよう。特に電信柱の周辺がアツいらしい。
また、このローソン自体が “例のローソン” 的な感じでアイコン化したのか、富士山など関係なくポーズをキメてローソンとツーショする人もいるもよう。
駐車場内については完全にローソンの敷地内での出来事なので、良し悪しについてもローソンの判断次第だろう。だが、歩道は別だ。こちら側でも人々が車道に出てしまうという事態に発展しないとは限らない。引き続き警戒が必要だと思われる。
・他のスポット
周辺の他のスポットで同様の問題が発生する可能性も無視できない。富士山はデカく、この辺ではだいたいどこからでも見える。
そして富士山を背にしたコンビニは、このローソンの他にもあるのだ。
一通りチェックした感じ、河口湖駅から徒歩圏内には同じくらいジャポニズムみある映え写真を撮影可能なスポットが複数存在する。
遠からずそれらの場所が知れ渡り、新たな火種となる可能性は否定できない。観光客の数が落ち着かない限り、河口湖周辺は今後もこの問題と付き合っていく必要がありそうだ。
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.
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▼前に来た時は無かった「温泉むすめ」の河口湖多佳美。そういえばここは温泉地だったか。
▼足湯。
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