むかしむかし、あるところに身寄りのないじじいが住んでおりました。
じじいが山を降りていると、とおくから「にゃ~ にょ~」という鳴き声がきこえてきます。
「はて、なんのなきごえだろう?」とじじいが近づいてみると、山に捨てられた子ねこが鳴いておりました。
かわいそうにとおもったじじいは、子ねこを家につれてかえることにしました。
ねこはすぐにじじいになつき、じじいもさみしかった毎日が楽しくなりました。
すくすくとねこはそだち、じじいの倍以上の大きさになり、じじいもおおよろこび。「でっかくなったのう…」
そして数年後、じじいが山にしばかりに出かけると、持病の腰が悪化して歩けなくなってしまいました。するとなんということでしょう。ねこがじじいにこう語りかけます。
「おじいさん、わたしのこしをなでてみなさい」
いわれたとおりにじじいがねこのこしをなでると、なんということでしょう。みるみるうちに痛みがとれていき、じじいはたちまち元気になりました。
そしてまた時がたち、じじいも年をとったせいか風邪を引きやすくなりました。「のどが痛いのぅ…。」とじじいがいうと、またねこがじじいに語りかけてきました。
「おじいさん、わたしののどをなでなさい」
またいわれたとおりじじいがねこののどをなでると、痛みがすーっととれてじじいは大喜び。ですが、なぜかねこはあまりうれしそうではありません。
しばらくするとじじいは床にふせがちになり、あまり起きることはなくなりました。「ねこや、またわしのからだをなおしてくれないかのう」とじじいがいうと、ねこはじじいの上に乗り、こう語ります。
「おじいさん、わたしはもうあなたをなおすことはできないけれど、よりそうことはできます。さあ目をつぶって楽にして…」
じじいは言われたとおり目をつぶると、なんだかとっても楽であたたかい気持ちになってきました。
そしてめをさますと、すっかり元気になったじじいとねこはくものうえにいました。そしてそこで二人はずっと幸せに暮らしましたとさ。
おしまい。
(作 江田島平子)