ロケットニュース24

高尾山の“もう一つ”の楽しみ方

2009年11月18日

takaozan1

元々人気の観光地として有名な高尾山(東京都八王子市)であるが、2007年にミシュランガイドで三ツ星観光地に選出されて以降、いまだ、特に休日の観光客の多さは大変なことになっていると聞く。先日も筆者の友人が行ったそうだが「竹下通りかと思った」との感想を、溜息混じりに漏らしていたものである。

そんな高尾山に、筆者は今年に入ってから二度ほど行っているが、どちらもほとんど貸切り状態で、大変快適に楽しめたものである。もちろん両日とも「休日に行って」ということだ。

と言うのも、筆者が出掛ける時間帯は、一般の観光客が帰路につく頃。陽が西に傾き始める少し前、時期によって違ってくるが、凡そ15時半~17時頃の時間帯を狙って山に入るのだ。何のためかって? 実は、高尾山に棲息するムササビを観察するためなのだ。高尾山は、東京都内でありながらムササビを始め数々の動植物が棲息する、生き物観察のポイントとしても評価の高い山なのである。

まずは清滝駅より終発に近いケーブルカーに乗って(これまたほとんど貸切り状態!)高尾山駅に登る。まだ陽のあるうちに、帰路につく登山客たちを尻目に山道をてくてくと歩き、既に人気もまばらとなった薬王院周辺まで行く。到着したら適当な場所を拠点と定め(荷物などを置き)、ひたすらに周囲の雑木林の様子を伺ったり、道端に落ちている葉っぱを確認したりする。

実はコレ、高尾山に棲息しているムササビの巣や食痕(葉っぱや木の実を食べた痕)を探しているのだ。前夜のものと思われる食痕が落ちている辺りには、その夜もムササビが食事に姿を現わす可能性が高い。そうやって、明るいうちにムササビの出現予測ポイントを見つけ出し、幾つか目星をつけておくのである。

ちなみにムササビは葉っぱを食す際、中心の葉脈から葉を二つ折りにして食べる習性があるため、左右対称に食べられた痕のある葉っぱが落ちていたら、それが恐らくムササビの食痕なのである。

ある程度、出現予測ポイントに目星をつけたら、観察しやすい場所を見つけて静かに日没の時を待つ(騒いでいたりすると、警戒して寄ってこない可能性がある)。

ムササビが姿を見せ始める時間帯は大体、日没後約30分が経過した頃からが多い。その頃には既に周囲は真っ暗となっており、当然肉眼では何も見ることはできないので、懐中電灯を用意しておく必要がある。その際、懐中電灯のライト部分には、赤いセロファンなどを巻いておく。夜行性の生き物の多くは、いきなり通常の懐中電灯などの光を当てられると驚いて逃げてしまったりするが、赤い光にはほとんど反応することがないのだ。

そうこうして実際に可愛らしいムササビの姿を発見~観察できるかどうか、こればかりは皆さんの運次第となる。筆者はたまたま二度とも見ることができたが、次に行ってまた見られる保証はどこにもない。仮に見られずとも「それが自然」なのだと割り切らなければ、自然観察には向かない。最初から行くべきではないのであろう。それでも行ってみたいと思われる方には、是非とも「高尾山のもう一つの楽しみ方」を実践してみてもらいたい。

ただし夜の山は漆黒の闇となり本当に危険である。また季節にもよるが、昼間とは比較にならない程冷え込むので、入念な防寒対策、及び決して一人で行くようなことのないように気をつけて頂きたい(一人で行って怪我でもして動けなくなったら、本当に命の危険に晒される場合もある)。あと一度山の中に入ったら、一切の食べ物にありつけない(売店などは終わってしまっている)ので、何らかの食糧を準備しておくことも大切である。行かれる方は、自己責任の下、くれぐれも慎重に行動し、楽しいひと時を過ごして頂きたい。

<ムササビ>
げっ歯類リス科の哺乳類。体長は尻尾までを入れると50cmを楽に超え、意外に大きい。前脚と後脚との間の飛膜を広げ、木の上から飛ぶことで100m以上の距離を滑空することができる。

(文・写真)
里山散策ライター 里中遊歩

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