この世の中の人々を大きくふたつに分類すると、「ネットを利用している人」と「ネットを利用していない人」に分けられる。さらに「ネットを利用している人」を大きくふたつに分けるなら、「パソコンでネットを見ている人」と「携帯電話でネットを見ている人」に分けられる。つまりPCユーザーか、ケータイユーザーか、である。

両方使うという人も多いだろう。しかし、必ずどちらかにかたよっているはずだ。そのかたよりが強ければ強いほど、両者の感覚と生活形態は、東京とサンパウロ並みに遠くかけ離れることになる。もはや「別の国の人間」であると言っても過言ではない。

例えばPCサイトばかり見ている人は、携帯でしか見ることのできない「携帯サイト」の世界はまるで知らない。逆に、ヘビーなケータイユーザーは、コアなPCサイトの世界をまるで知らない。40歳近くのPCユーザーにとって、未成年のケータイユーザは得体の知れぬ宇宙人なのである。

インターネットが宇宙であり、PCサイトが地上ならば、携帯サイトは海である。深海の世界は、実際に潜らないと分からない。地上からでは見つけようがないのである。実際に、ディープな携帯サイトは、PCからでは辿りつけない。ブロックされてしまうからである。しかし、ディープなケータイユーザーは深い深い海の中で生活している。そう、まるで深海魚のように。

一例をあげるならば、「偏った趣味の人々」ほど、ケータイの世界に生息している。例えば女装、それも「本気の女装」である。美男子が可愛く女装しているわけではない。おじさんたちの、本気の本気の女装である。

PCサイトにも、女装を趣味としている人々のページは無数にある。しかし、ケータイ世界の比ではない。PCサイトでは、簡単に「晒される」おそれがあるからなのか、そう簡単に見つからないケータイの世界に女装愛好家たちは集まっている。海の深くに横たわる沈没船の中に、知る人ぞ知るパラダイスが広がっている……そんなイメージだ。

これはほんの一例である。若者たちが常に眺めている携帯電話の画面の中には、あなたの知らない、知りえない、未知なる世界が無数に広がっているのである。

(文=インターネットパトローラー・バッチ偶三)
写真:ロケットニュース24