回転レストランの存在は知っていた。その名の通りくるくると回るレストランのことだ。かつてはデパートなどの最上階に多く見られたが、メンテナンスの難しさなどを理由に年々減少傾向にある。
記者も知っているだけで体験したことはなく、いつかその機会が巡って来ると良いなと思っていた。つい先日、兵庫の須磨方面に行く用事があったのだが、そう言えば近くに回転レストランがあったような気がして、スマホ検索。
するとビンゴで、須磨浦山上遊園内にある「喫茶コスモス」が今も回っているらしい。このチャンスを逃すまじと、山陽電鉄に乗り訪ねてみることにした。
・ロープウエイやカーレーターを使って向かう
日本の回転施設のはじまりは、兵庫県は神戸市の六甲山で開業した「十国展望台」ではないかと言われている。こちらは残念ながら平成14年(2002年)に営業終了。
以前、当サイトで紹介した回転する喫茶店「手柄ポート」(平成30年、2018年閉店)も兵庫県は姫路市の施設だった。
兵庫県民は回る施設が好きなのだろうか。わからないが、次々と姿を消している中、現役で稼働している「喫茶コスモス」は貴重な存在と言えるだろう。
さて。喫茶コスモスは上記の通り、須磨浦山上遊園の中にあるのだが、行き着くまでがすでに面白い。一部ロープウエイやカーレーターなどを使う必要があり、これがなかなかのアドベンチャー感なのだ。
・クセになるカーレーター
山陽電鉄「須磨浦公園駅」で下車後、まずは改札脇にある券売機でロープウエイのチケットを手に入れる。ちなみに有料駐車場もあるようなので、車を使うのも手だ。
券売機脇に待機していたスタッフによると、ロープウエイを降りた後もカーレーターというものに乗ると楽だとのこと。カーレーターがどういった乗り物なのか、いまいちピンとこなかったが、言われるがままそれらがセットになった往復チケット(税込1200円)を購入することにした。
ロープウエイの乗り場へ行くと、数人がすでに乗車しており、ちょうど出発するところだった。係の人によれば、土日祝は随分混み合うらしい。「テイックトック?とかにあげるため、若い人が多く来られているみたいですね」と教えてくれた。
この日は雨模様の平日だったからか、シンとしていた。これはこれで、良い雰囲気である。眼下に広がる景色を見ながら「これが源氏物語にでてくるあの須磨かあ」などと思っていたら、あっという間に到着。
ここから、例のカーレーターに乗ることになる。案内に従い乗り場まで行くと、そこにあったのはスキー場にあるリフトのような2人乗りのもの。ただしそのリフトとは違い、足場は固定されているので、安定していそうな印象だ。
しかし、そんな暢気(のんき)な感想は見当違いも甚だしいことを乗ってすぐに痛感。「ちゃんとつかまってください」と言われた訳を理解した。
どういうことかというと、急な坂を上りながら上下左右に激しくガタガタ揺れるのだ。お尻が痛いし、座席に軽めの荷物を乗せていようものなら、簡単に落下することだろう。
こんな言い方をするのはどうかと思うが、でも、こんなに居心地が悪い乗り物ははじめてだ。入山するに当たり、これは洗礼のひとつなのかもしれない。
降りる頃には、一周回ってこのガタガタっぷりがクセになっていた。使わずとも、モノレールの場所まで行くことができるのだが、先に書いた通り往復チケットを買っている。帰り道が楽しみだ。
・すごい発明な回転レストラン
そうこうして、ようやく喫茶コスモスが入っている建物まで到着した。3階建てで、1階はちょっとしたスペースになっており、後ほど調べたところによるとジュークボックスが置いてあったらしい。
個人的には馴染みがないが、お金を入れれば昭和の流行歌が流れるという。どうやら今や貴重なもののようで、試してみなかったことを後悔。次の機会があれば、やってみたい。
2階はゲームセンターで、レトロゲームの姿もちらほら見える。そしてその上の3階部分が、今回の目的地、回転するレストラン「喫茶コスモス」だ。
予備知識を入れずにお邪魔したので、実は回転レストランがどういった構造になっているのか、理解していなかった記者。時間を区切って回転を止め、その隙に入店するのかと思っていたがとんでもない。
支柱が固定されており、そこに付属するエリアは回っているので、いつでもフロアに入ることができる仕組みであるらしい。よくまあ、こんなシステムを思い付いた上に作ってみたなとびっくりしてしまった。
机と椅子が窓際に設置してあり、フロアは約55分かけて1周するらしいので、その時間ずっとどこかに座っていればひと通り景観を楽しめるという訳だ。
ぴょんと回っている部分に飛び乗り席を取り、軽食を取ることにする。中心部分にレジがあるので、何か注文しようとメニューを眺めていたところ、じわじわとレジと自分とが離れていることに気づく。
中央は動かないため、じっとしているとさもありなん。急いでクリームソーダ(税込650円)とホットサンド(600円)を注文した。あとは席に着き、ひと世代前くらいの音楽を聞いて美味しい食事を楽しみながら、ぼーっとしていれば自然と景色が移り変わっていく。
回転の速度と同じようなゆーったりとした時間が館内にも流れていて、とても贅沢(ぜいたく)な気分だ。回転レストランって、便利でものすごい発明なんじゃないだろうか。
満足し、ほぼほぼ1周したあたりで食器を返して、またもやカーレーターへと向かう。行きと同様、ガタガタと全身をマッサージされながら山を下る。『喫茶コスモス』はなんだか異世界へと行った気分を堪能させてくれる、そんな場所だった。
・今回訪問した店舗の情報
店名 喫茶コスモス
住所 兵庫県神戸市須磨区一ノ谷町5丁目3番2号
営業時間 10:10~16:30(L.O. 15:30)
定休日 火曜日
参考リンク:喫茶コスモス
執筆:K.Masami
Photo:Rocketnews24.
▼カーレーター、衝撃的でした
▼360度景色を楽しめる回転レストラン「喫茶コスモス」
▼レジで注文後、出来上がったら館内放送で呼んでくれます
▼ご飯も美味しかったです