この連載を始めるにあたって、まずは関東地方に店を構えるチェーン中華店をリストアップした。遠方よりも、まずは近場から制覇しようという魂胆だ。


その中に、聞いたこともない店があった。「中華食堂一番館」。恥ずかしながら、私は完全に知らなかった。


あなたはご存知だろうか、中華食堂一番館。ChatGPTに聞いたみたところ、ウソかホントか全国に約80店舗もあるとのこと。


Googleマップで調べてみると、たしかにワンサカ出店している。そしてなんと、近場の吉祥寺にもあることが判明。ということで訪店したところ──

安ッ! ノーマル炒飯410円(税込450円)は安すぎる! 現時点での当連載最安値。これはもう完全に東南アジア価格。ちなみにタイなら約100バーツだ。しかもメニューを見ると……


なんと9種類も炒飯がある! 大阪王将の8種類よりも多いとは……! 安さ、そして種類の豊富さにおいて、現時点での二冠王に君臨している。あとは味が良ければ三冠王だ!


……が、待ってる間、なんか異変を感じた。


やたらと店内が静かなのである。


中華鍋と中華お玉が激しくぶつかり合うカンカン音なんて皆無。

私のメモ帳にも「カンカン聞こえず」と書いてある。


安い。静か。てことは……


まさか!


私はすぐさまスマホで検索。すると、ITmediaの「人か、ロボットか 『餃子の王将』と『大阪王将』が異なる一手 厨房で起きている見過ごせない変化」なる記事がヒット。


それによると、“中華食堂一番館は炒飯調理機「ロボシェフKVC460」を活用している”……と!


また、“どんな料理でも3分以内に顧客へ提供することを目指して06年から導入。今では全店舗で活用している”……と!!


さらに!


その炒飯調理機「ロボシェフKVC460」の、たぶん後継機種「ロボシェフ RCG560S」について、2021年10月の時点で、当編集部の中澤星児が動画付きで記事にしていた……!


つまり、私が今から食べるのはロボが作った炒飯……。ついに来た、ロボ vs 人間のSF的なチャーハン大戦! ……とひとりコーフンしてたら、


本当に注文から3分以内に炒飯が来た。


早い。あまりにも早すぎる……。もしもロボ作でないことを事前に調べなかったら、私はこれを「レンチンだろ」と思っていたことだろう。


だが、作ったのがロボだろうと人間だろうと電子レンジであろうとも、私は贔屓目なしに平等にチャーハンと対峙していきたい。



具は、ネギ、卵、チャーシューの基本3点オーソドックススタイル。


して、そのお味は……


わりとうまいんだが(笑)


とはいえ、激ウマではない。かといって、まずくもない。いわゆる「ふつうにうまい」というやつであり、10段階評価なら6あたりはマークできる炒飯ではある。


味も、濃すぎず薄すぎず、ちょうど良い。しっかりとご飯が油でコーティングされているのも実にニクい。


そしてハモハモと食べ進めていくと、最終的にはチャーシューの味で締めくくられる「チャーシューエンド系」の旋律だ。


少し甘めの卵スープも「ふつうにうまい」。“チャーハン式ねこまんま” はできないけれど、これはこれで良いコンビネーション。


てな感じで、総合評価は「ふつうにうまい」だ。


が、しかし……。


やはり圧倒的に足りないのは、「人の温もり」「人の熱」「人の……」、つまり、私が料理で最も大切にする「」である。


念に関しては見事に皆無。それこそレンチンの炒飯を食べた時くらい「人間味」が何も感じないのだ。



そりゃロボットが作っているのだから、そこに念が入ってしまったら逆に怖い。


ロボットに心が芽生える漫画『わたしは真悟(楳図かずお著)』みたいな世界になってしまう。


しかしながら、なんだろう、この複雑な感情は。「ふつうにうまい」、でも「心がない」のだ。


アクションゲームに例えるとしたら、「チャーハンのアイコン」のパワーアップアイテム(HP全回復)みたいな。


ドラえもんの「すぐホカホカ料理ができるひみつ道具(植物改造エキス)」で仕上がったチャーハンみたいな。


おいしい! ……んだけど、どこか無機質。そこに人の心(念)という調味料は入っていない……みたいな。


しかしながら、うまいことはうまい。少なくともレンチン炒飯よりは圧倒的にうまい(そりゃ炒めているのだから当然だ)。



──なんだか私、いろいろなことを考えてしまった。


映画『ブレードランナー』や海外ドラマ『ウエストワールド』など、人間が人間型ロボット「アンドロイド(レプリカント)」に恋心を抱いてしまった作品を思い出したり。


そしてこの先、もしもこの炒飯調理機がさらに改良され「AI搭載」になったとしたら。人間くさい “ブレ” なども再現してきたら……。


無音の厨房から次々と出てくるホカホカの中華料理。たった450円で、ここまでリアルな「未来」を感じられるのは超オトクであると私は思う。


そう考えていると、店内の雰囲気も、なんとなく『ブレードランナー』に出てくるような「超リアルなサイバーパンクみ」があるような気もしてくる。


次に私が一番館を訪れる時は、1人ではないかもしれない。そう、女優のように美しきアンドロイド(レプリカント)と仲睦まじく腕組みして……。


参考リンク:ITmedia ビジネスオンライン
執筆:チャーハン研究家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24

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