飲み会は好きか? という問いに「嫌い」と答える人も大勢いると思うが、私(あひるねこ)は基本的に好きである。お酒が好きだし、誰かと飲むのも好きだ。しかし、一つだけ嫌いなものがある。それは……


帰りの電車。


そう、飲んだ後に乗る電車ほどダルいものはない。帰らずそのまま店で寝ちゃいたいほどダルい。何かいい手はないだろうか……? ハッ! そうだ……特急に乗って帰ってみよう。

・憂鬱な飲み会

先日、ロケットニュース編集部で久しぶりに飲み会が開催された。いつもはオフィスに来ないライターも参加し大変盛り上がったのだが、実はその前日まで私は非常に憂鬱だった。


なぜなら昨年引っ越しをして、現在は八王子方面に住んでいるからである。

飲み会の開催場所は編集部がある新宿。19時スタート。飲んだ後にJRで東京の西端まで帰るとか、考えただけでダルくて吐きそうでありんす。

そこで私が考え出したのが、あらかじめ帰りの特急列車を予約しておくという手だった。理由は後述するとして、結果から言うとこれが大正解どころか、人生観が変わるくらい最高だったのでお伝えしたい。



・飲み会のシメは特急で

今回、私が利用したのは平日の朝・夜限定の特急「おうめ」(東京~青梅)だ。

「はちおうじ」(東京~八王子)と共に2019年から運行が始まったJR東日本の通勤特急で、どちらも新宿から乗ると次の立川までノンストップとなっている。私のために開通したような特急ではないか。


というワケで飲み会当日は、22時30分の新宿発「おうめ」最終便をあらかじめ予約しておくことに。JR東日本の指定券予約サービス「えきねっと」からだとチケットレス割引が適用されるので、おとな1人660円だ(乗車券は別)。


さて、読者の皆さんの中には、今回の私の行動に疑問を抱いた方もおられるかもしれない。なぜ前もって予約する必要があるのかと。飲み会なんて何時に終わるか分からないんだから、予約するにしても直前でよくないかと。

なるほど。ごもっともな意見であるが、この仕込みが後々、極めてポジティブな効果を発揮すると言ったらどうだろう。予約した状態で飲み会に臨むと、どんなに場が盛り上がっても……


どんなに楽しくても……


(あ、22時半に特急か……)


ちょいちょい我に返るのである。



・メガ抑止力

我々のような酒飲みにとって、22時半なんぞまだ宵の口のようなもの。「もう一軒行こう」と誘われれば、食い気味に「もちろん」と返すのが常だが……今夜ばかりは話が別だ。

なぜなら特急を予約しているから。もう席を押さえてしまっているから。おそらく自分史上最強にして、究極の飲みすぎ防止対策だと思われる。それでは新宿駅に急ぎます。


「おうめ3号」は10番ホームから。


とその前に、改札前のニューデイズに寄っておきましょう。理由は後で分かります。


新宿駅って学生の頃から使ってるけど、9番線・10番線の階段って初めて上るな。そして、ここだけ超ガラガラだな。


ホームも逆サイと比べるとガラガラ。


到着時刻が近付き、さすがに混雑してくるも……


車内は空席の方が目立つ印象だ。



・穴場感パない

最終的にはそれなりに埋まっていたが、隣に人が来ることはまずなさそうである。快適──。まさにこの一言に尽きるだろう。


私が見た限りほとんどが一人客で、とにかく静かだ。車内全体にゆったりとした柔和な空気が流れている。こんな穏やかな飲み会帰りの電車は生まれて初めてかもしれない。


発車すると、そこかしこから聞こえてくる「プシュッ!」という気持ちのいい音。仕事帰りの一杯だろうか。皆さん、お疲れ様です! それでは私も……


特急2次会スタートである。



・単独飲み直し

そう、先ほどニューデイズに寄ったのはこのためなのだ! 一人きりとはいえ、確実に座れる席で帰宅と2次会を同時進行できるなんて最高じゃないか。まだ少し飲み足りないという気持ちもスッキリ解消できるぞ。一石三鳥くらいしてるだろこれ……!


乗る前は眠くなったらどうしよう? と思っていたが、完全に杞憂だった。夜の特急列車という非日常感と、寝たら青梅まで直ララバイという謎の緊張感によって、これがまったく眠くならないのだ。我、無敵なり!


はーーーーっはっはっは!! 飲み会帰りの特急は最高だぜェェェェエエエエ!! 乾杯ィィィィィィイイイイ!


ところがその数秒後……


なななんと、「まもなく立川に到着します」という車内アナウンスが流れ始めたではないか。ほ、ほんげェェェェェエエエエエ! 着くの早えェェェェェエエエエエ!!


・体感10分

そう、「おうめ」は新宿から28分で立川に到着してしまうのである。アカン! ハイボールがまだ残っとる!! マジかよ、みんなもう立ち上がってるぞ……余裕こきすぎたァァァァァァァアアアアア!

残ボールを一気に流し込んだ私は、降り際に缶をゴミ箱にダンクして立川駅のホームに。そこから中央線に乗り換え、最寄り駅まで帰ったのだった。


あれ? ちょっと待って、これって……冷静に調べたら「おうめ」に乗って立川で乗り換えるより、新宿から中央特快で1本の方が早くね? と思わないこともなかったが、いやいや、そういうことじゃあないんだよ。



・特急はロマン

飲み会帰りであるにもかわらず、心も身体もすこぶる元気なのは、間違いなく特急列車のおかげである。こんな快適な帰り方が世の中にあったなんて……。

この素晴らしさを知ってしまったら、もう二度と元の自分には戻れない。それはあまりにも甘美で、時に暴力的な、人生観が変わるくらいの超ミラクルな体験であった。飲み会が控えている人は、ぜひご利用をご検討くださいませ。ではまた。

参考リンク:えきねっと
執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.
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