ネパールの国民食「ダルバート」──日本で言うところの “定食” のような存在で、日本人がほぼ毎日ご飯と味噌汁を食べているのと同様にネパール人はダルバートを食べている。


「ダルバート」はダル(ひき割り豆のスープ)とバート(米飯)というワードの組み合わせ。ここにカレーやスパイスで味や香りづけをした野菜などのおかず(タルカリ)やピクルスのような漬物(アチャール)がついてくる。ワンプレートでいろいろ味わえる楽しい逸品だ。

・エスニック好きに愛される巣鴨の名店

今回訪れたのはJR巣鴨駅及び都営地下鉄三田線の巣鴨駅から徒歩5分ほどのエリアにたたずむ「プルジャダイニング(Purja Dining)」。

自家製の無農薬野菜などを使用したネパールの家庭料理やお酒が楽しめる、エスニック好きには知られた名店だ。


店内の照明はやや暗めでレトロな喫茶店のような雰囲気。まずはメニューをチェックしていく。

1500円オーバーのスペシャルセットメニューのほか、リーズナブルなセットメニューが並ぶ。このメニューだとダルスープがついてくる「プルジャスペシャル(チキン:1500円 / マトン:1700円)」と「ダルカナ(850円)」がダルバートと呼ばれるものだ。


カレー単品でも注文可能。「ネパールのスープのようなカレー」という説明がなんとも丁寧で好感が持てる。



・謎のお酒「ズワイカッテ」に豊富なデザートメニュー

お酒のメニューも豊富。白米を色がつくまで炒り、お酒を入れて加熱した飲み物「ズワイカッテ」なるお酒や

バナナプリン、プルチェ、ハルワといった気になるデザートメニューもあり、お酒や甘い物好きの人もきっと満足できるはずだ。


ズワイカッテを飲んでみたいがこの日の気温は30度オーバー。というわけで生ビール(550円)を注文。つまみにネパールの発酵高菜もついてきた。しっかりとした塩気と歯ごたえがありビールが進む。



・日常的に食べるにはやや高額設定のスペシャルダルバートだが……

今回注文したのはプルジャスペシャルのマトン(1700円)。

日常的に食べる定食的な存在でありながら1500円、1700円は高いと思ってしまう人も少なくないだろう。筆者もそうだった。しかし、実際の料理を目の当たりにするとその値段に納得してしまった。


運ばれてきたのは何とも色鮮やかで「これでもか」と言わんばかりの量のおかずとライスが盛られたプレート。

左上からダイコンの漬物、ダルスープ、マトンカレー、青菜炒め、ジャガイモのおかず、ライス、赤いペースト状のおかず、ライスの上部には味噌のようなペーストが鎮座している。



・気になる赤いおかずの正体

まず真っ先に目がいき、特に気になったのがこの赤いおかず。

店員さんによるとビーツを使った一品だという。


普段はダルスープを最初に口へ運ぶ筆者だが、あまりにもそのヴィジュアルと味が気になったのでビーツのおかずからいってみる。

ペースト状のおかずは滑らかな舌触りでカブをすりおろしたような食感。ほのかな塩味を感じる優しい味わいだ。


次いで気になったのがライスの上部に盛られた味噌のようなペースト。

ダルバートにはトマトベースの「チャトニ」というソースがついてくることが多いが、これはトマトで作ったものとは違う茶系の色味をしている。


スプーンの先に少し取って舐めてみると……

辛い! いやッ、かなり辛い! 辛い食べ物が得意な人でも結構驚くであろう辛さだ。

店員さんによると唐辛子や山椒などを使用したペーストだという。確かに唐辛子の辛さだけではなく痺れも感じる。少し舐めただけで全身から汗が噴き出してくる。



・ダルスープは優しめで “洋食感” あり

気になるおかずのチェックを終え、いつもの如くダルスープに取り掛かる。

数種類の豆を使用しており、豆の形もしっかり残っていてホクホクだ。スパイスやハーブ系はそれほど強くなく、むしろ優しい。粘度も結構あって洋食のスープにも通じる味わいだ。


ライスにダルスープをかけて「ネパール風ねこまんま」を楽しむ。


マトンカレーのマトンはプルプルの皮と骨付きで味と香りが濃い。スプーンで切れるほど柔らかく煮込まれている。

辛さは優しめなので唐辛子&山椒ペーストで自分好みに調整するのがよさそうだ。


脇を固めるダイコンの漬物は酸味が効いていて爽やか。箸休めにピッタリでまさに日本の漬物と同様の役割を果たしてくれる。



・最終的に見た目が悪くなりがちなダルバートだが……

ダルスープ、カレー、おかずをライスに重ねていく。

混ぜ混ぜしていくと見た目が悪くなりがちなダルバートだが、ビーツの赤が入るとその印象は全然違う。ネパール料理とビーツって相性いいのかもしれない。


ダルバートのライスはおかわり無料とのことだが、デフォルトでライスもおかずも量が多い。筆者はおかわりすることなく、ダルバートとビールで大満足だった。手の込んだおかずたっぷりのダルバート。是非ともハレの日に食べたい1皿だ。


毎回のようにビーツのおかずがついてくるわけではなく、季節や日によってラインナップを変えているようだ。季節のスペシャルメニューなどもあり、店の公式Xをチェックしてから来店するとより楽しめるのではないだろうか。


・今回訪問した店舗の情報

店名 プルジャダイニング(Purja Dining)
住所 東京都豊島区巣鴨1-34-4 メゾン春日1F
営業時間 11:00〜15:00(ランチ)、17:00〜23:00(ディナー)
定休日 火曜日


執筆:ダルバート研究家・田中ケッチャム
Photo:RocketNews24

▼ネパールワインをはじめ、お酒のメニューも豊富でツマミも充実。1人飲みや複数人での宴会にも重宝しそうだ。