コロナ禍で、人と接触せずに旅ができるキャンピングカーが人気だという。若い世代を中心に、車を家のようにして移動しながら暮らす「バンライフ」も注目を集めているのだとか。

筆者はコロナ関係なく以前からキャンピングカーに乗っている。しかし実感するのは、キャンピングカーは決してどこでも寝られるわけじゃないし、節約でもないし、不便も多い! しかしそれを乗り越えた先に「自由」があるのだ。

というわけで、1カ月ほどのひとり旅のひとコマをご紹介したい。キャンピングカーのリアルがこれだ!


・生活スペースがこちら

市場で多く流通するキャンピングカーはざっくり2方向に分けられるのだが、筆者のものは「バンコン」といって、普通自動車に近いタイプ。

ハイエースやNV350など、その辺を普通に走っている「バン」の車内を改造したものだと思っていただけるとよい。もともとの車体サイズがあるので、限られたスペースをどう活用するかがポイントとなる。

こちらが就寝スペース! 畳1畳分くらいだろうか? 縦方向にベッドをとっているので、長さは十分である。

モンベルの寝袋「ダウンファミリーバッグ #1」は、封筒タイプなのでガチのキャンプには向かないだろうが、車中泊にはオススメである。気温によってファスナーを開いたり閉じたり自在に使える。

天井は低い。とにかく低い。もちろん立って歩くことはできず、ひと昔前のカプセルホテルのイメージだ。ベース車両をハイルーフにしたり、天上を改造する方法もあるが、駐車に困るので筆者はデフォルト。

ベッドマットはフラットなタイプ。走行中(イスとして使う場合)の座り心地は壊滅的だが、寝心地にパラメータを全振りしている。なにかを得るには、なにかを捨てなければいけないのがキャンピングカーの設計だ。

仕事モード。ライターの仕事は全国どこでもできるので、完全テレワークが可能。写真のバックアップなど、どうしても高速Wi-Fiが必要なときはネットカフェに出張する。

本当はテーブルを取り付けられるのだが、足の踏み場がなくなるので軽くて小さい折りたたみテーブルを愛用している。

代わりに床には自転車を置いている。車線変更や車庫入れが苦手な筆者にとって、市街地を観光するときの秘密兵器である。サイクルキャリアをつければいい、と思われるかもしれないが、ただでさえ苦手な車庫入れに、「車両サイズアップ」というデバフが加わったら……。

狭い車内で、自転車の突起は凶器になるので靴下をはかせている。購入当初は車内のあちこちに身体をぶつけて、青アザやタンコブを作るのは “キャンピングカーあるある” だ。

そして車内後方、身体を横にしないと通れないほど小さいドアの向こうが……


トイレルーム兼キッチンである。

排泄と調理という、普通なら決して兼用しない場所が共存していることに驚かれるかもしれない。しかし、ほかにスペースはない。背に腹は代えられないのである!

トイレは「なくてもいい」というユーザーも多いが、絶対に絶対にあった方がいいぞ。電気、水道、トイレというインフラが車内で完結する安心感はハンパない。

ミニミニ冷蔵庫。たとえ調理をしなくても、冷蔵庫は利用価値大。チョコレートやパンなど、灼熱の車内に放置したくないものがあるからな。

換気扇も必須。車内のムレムレの空気を排出したり、逆に扇風機のように空気を取り入れたりできる。

極小サイズの水道設備。給排水タンクを積んでいる。

けれどRVパークに滞在すれば水には困らないので、筆者は使用してない。代わりに衣類置き場にしている。布は本当に場所をとるので、持ち込める衣類はわずかだ。

人が暮らすには、実に多種多様な生活用品が必要。2~3日の旅行なら我慢したり借りたりできることも、長期となればそうはいかない。電池、爪切り、薬、食器、充電器、文房具、食料……雑多なものが、わずかな収納スペースにぎゅうぎゅうに詰めこまれている。

電気は走行充電や外部充電もあるが、基本は屋根でソーラー発電している。晴れていれば冷蔵庫の使用やスマホの充電くらいならまかなえる。足りなくなったらRVパークなどで外部充電。


以上である! そもそも人ひとりが寝たらいっぱいの「車内」なので、そうそう紹介するところがない。カタログに載っている「就寝定員○人」は信用しちゃいけないぞ。「無理すれば寝られる」の意味であって、「快適に過ごせる」人数とは違う。


・試練の道

はじめこそ車内を移動するたびに身体をぶつけて悲鳴をあげ、生活用品はごっちゃごちゃのカオス、走行すれば後ろで荷崩れしてなにかが壊れる……という状況だが、長く旅していると熟達してくる。乗りこなすのに苦労する「暴れ馬」のようだ。

目をつぶっても必要なアイテムを取り出せ、忍者のように身体をひねって無傷で移動できるようになる。その段階まできて、ようやく楽しくなってくるのがキャンピングカーなのかもしれない。


執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.