なぜここに? 思わずそう思ってしまったのが立ち食いそば屋の『会津』である。最寄りの駅は、JR綾瀬駅か京成線堀切菖蒲園前駅、とは言え、どちらからも遠い。2駅のちょうど中間地点にあるのだ。フラッと寄れねェェェエエエ

だが、断言しよう。立ち食いそば好きにとって電車・バスを乗り継いでも行く価値がある店であると! うまいそば屋を求めて色んな街を放浪する「立ち食いそば放浪記」。今回は本当に放浪回です。

・JRと京成線の中間地点

下町らしい情緒のある綾瀬駅。そんな綾瀬の駅前から東に進むと太い道路にぶつかる。これが幹線道路の川の手通り。どうやら、JR綾瀬~京成線堀切菖蒲園前を縦に走るこの通りを南下したところに『会津』はあるようだ。

噂ではタクシー運転手などに知られる店だという。確かに、地図上ではちょうど2駅の中間地点。しかし、私(中澤)は地図音痴なので歩いていける距離なのかよく分からない。そこで綾瀬駅から歩いてみた

・表情が変わっていく街並み

飲食店が建ち並ぶ駅前を東に進むと、繁華街の雰囲気が薄れ、住宅街の表情を見せ始める綾瀬。すでに立ち食いそば屋なんて無さそうだ。

川の手通りに入るとまた雰囲気がちょっと変わる。店の質が変わるのだ。ポツ……ポツ……と目につくのはコンビニ、弁当屋、コインランドリー。店で食べるという場所は少なく、ロードサイド感が濃くなっていく。


進むにしたがって少なくなる高い建物。空、広いな。東京じゃないみたい。


と思ってたら、遠くにスカイツリーが。まっすぐな道がスカイツリーまで続いてるように見える。これは良いロケーション……


って、立ち食いそば屋の気配が1ミリもねェェェエエエ!!

・ポツンと固まった飲食店

川の手通りに入って10分以上は歩いたか。本当にこんな場所に立ち食いそば屋があるのか。実は潰れていて通り過ぎていたらどうしよう。陽もますます傾いてきて不安になり始めたその時、ポツンと飲食店が2~3軒連なっているスポットが現れた。ひょっとして……


やっぱり! 会津だ!!

黄色い看板に剝がれかけた文字で「立喰そばうどん 会津」と書かれている。味のある外観に夕暮れが似合っていた。オープンしててくれてありがとうー!

・メニュー

さっそく、入店したところ、5~6人で満席な感じの店内には先客が1人、店員のおばあちゃんが1人。差し込む夕日が席に影を作り、なんとも言えない哀愁を漂わせている。そんな店の真ん中にある券売機を確認したところ、価格帯はかけそば(290円)、天ぷらそば(420円)と安め。

珍しいのはしらす丼(小280円、セット650円)があること。ご飯ものは、しらす丼とカレーライス(540円、セット650円)の二択である。

・情報のない肉そばを注文したら

とは言え、初来訪なのでとりあえずそばが食べたい。天ぷらは揚げ置きでケースに並んでいるのだが、かき揚げ天も春菊天も少なくとも見た目は普通な感じである。そこで唯一中身が不明な肉そば(530円)を注文してみたところ……


尋常じゃないのが来た

いや、おかしいおかしい! 大判の肉の塊がそばを覆ってるじゃないか。何これ? 実はステーキハウスなの

さらに不可解なのは、これほど肉に気合を入れていながら、それを推す気が全くないところだ。券売機に何も書いていないどころか、名前もただの肉そばだし、店内に肉そばのメニュー写真すらないのである。この店に一体何が起こっているというのか。


しかも、肉を食べてみると、面積で大きく見せているわけではなくちゃんと分厚い。トンテキでも食べてるみたいな食べ心地だ


しかし、肉のインパクトに頼っているわけではなく、つゆがコク深くちゃんとそばとして美味しい。飲めば飲むほどに味わい深い出汁の味で食べ終わってしまうのが惜しくなった。これが530円って凄い。


店の存在は知っていても、肉そばがこんな感じと知らない人も多いのではないだろうか。店内に飾られていたそば特集の記事でも触れられてなかったし。

・行く価値のある店

なお、店内には24時間営業との貼り紙があったが、店員さんに聞いたところ、コロナ禍以降は難しい状況が続いているという。したがって、現在は基本的には5時から21時で営業し、日曜日、祭日は定休日となっているそうだ

ウマさもまた尋常じゃなかったこの店の肉そば。アクセスは若干不便だが、味にはその道のりの分の価値があった。ちなみに、本記事の通り歩いて行けない距離ではないが、バスで行くなら、京成タウンバスの堀切病院前が最寄りのバス亭と思われる。行ってみようという人は覚えておくと良いだろう。

・今回紹介した店舗の情報

店名 会津
住所 東京都葛飾区堀切7-3-1
営業時間 5:00~21:00
定休日 日・祭日

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.