7月13日は「オカルト記念日」! 映画『エクソシスト』が1974年に日本で初公開され、オカルトブームを巻き起こした日にちなんでいるそう。

その後も悪魔祓いをテーマにした映像作品は多いが、じわじわと「なにかが起こりそうな予感」で怖がらせるのがジャパニーズホラーだとすれば、ガチで人を殺しにくるエクソシストものは絶叫必至。

悪魔の正体を探る、という謎解き要素が加わることもあり、物語としても見応えのあるものが多いと思う。そんなエクソシスト映画から個人的おすすめ3選!


・『死霊館』シリーズ(2013年~)

実在した心霊研究家・ウォーレン夫妻をモデルとし、夫妻が関わった数々の事件を描いた一連のシリーズ。

現在進行形でスピンオフ制作が続いているが、中でも1作目の『死霊館』はよくまとまった良作だと思う。1970年代が舞台ということで、古めかしい映像も不気味だ。

中古ながら苦労して手に入れたマイホーム、朗らかで仲のよい子どもたち、家族思いで頼りがいのある両親……明るい未来が待っているはずなのに、どんどん家の中に充満する陰鬱な空気。

「不吉な前兆で怖がらせる」のはジャパニーズホラーの専売特許だと思っていたが、とんでもない。前半の「少しずつ違和感が積み重なっていく不気味さ」は秀逸である。


ホラー映画あるあるだが「どうして外国の家は、あんなに照明が暗いのぉぉぉ!」と叫びたくなる室内も怖い。

そんなに危険なら、なぜ明かりをフル点灯して寝ないのか。なぜ頼りない間接照明ばかりなのか。(目の虹彩の違いから、日本人に比べて光をまぶしく感じやすいのだそう。海外のホテルとか本当に暗くてイヤになる。)


後半になると一転、息もつかせぬ展開とはこのこと。「気のせい」で片付きそうな控えめな存在が日本の幽霊だとすれば、キリスト教の悪魔は人智を超えた力技で、直接危害を加えようとしてくる。

子どもたちの絹を裂くような悲鳴と、一緒になって思いきり叫びたい。ゾクゾクする恐怖とはちょっと違うが、ガチンコのバトル映画を見終わったような、心地よい虚脱感に包まれるだろう。


・『ザ・ライト – エクソシストの真実』(2011年)

いわゆるエクソシスト映画の背景にはキリスト教文化がある。日本人には馴染みが薄いが、バチカン公認の司祭だけがエクソシストになれる、教会の許可を受けて悪魔祓いを行う、悪魔の正体がわかると祓える、などいくつかの共通設定がある。

中でも「はじめに精神疾患の可能性を排除する」ことには重きを置いているらしい。幻視や幻聴、人格変容、記憶の混濁などは精神疾患の一般的な症状ともいえるからだ。


登場人物の中に、悪魔や悪魔祓いに懐疑的な人物が登場して、科学と宗教のせめぎあいが見られるのも定番。エンタメとして「はいはいw」とスナックでもかじりながら見ている視聴者としては、疑義を挟む人物がいてくれることで、ぐっとリアリティが増す。


「ザ・ライト」は、そもそも主人公が懐疑派。神学生でありながら「神や悪魔の存在を信じない」というところから物語が始まるから感情移入しやすい。疑念を抱きながらエクソシストの助手を務めるうちに、常識では考えられない現象に出くわしていく。

こちらもゾッとするような怖さというよりも、知らないことがたくさん出てきて物語としておもしろい。神や悪魔、キリスト教の概念を理解するうえで一見の価値あり。

筆者は「エクソシスト養成講座」なるものの存在を、この映画で初めて知った。アンソニー・ホプキンスの存在感や名演技はいうまでもない。


・『エクソシスト』(1973年)

50年近くが経ってもまったく色あせないホラー映画の金字塔。むしろ新しささえ感じる。

たわいもないウィジャボード遊び(こっくりさんのようなもの)から、娘の様子がどんどんおかしくなり、医者に診せても原因がわからず……とシンプルな展開ながらこの作品が素晴らしいのは、単なる恐怖映画ではなく「人間ドラマ」があるところ。

そのため、一見すると怪異とは関係がないようなシーンが続く。よく観察して人物の背景を理解すれば、よりおもしろいと思う。


ホラー映画ではお決まりの「登場人物がわざわざ1人になる」「停電して真っ暗な屋敷」「振り返ったらなにかが!」といったドッキリ演出はほとんどない。多くの異常が白昼だったり複数の人がいる場面だったり、怖いことなんて起こりそうもない場面で起こる。

にもかかわらず、1度見たら忘れられないような、むごく、おぞましいシーンばかり。登場人物と一緒になって罪悪感やみじめさや無力感を抱いてしまい、人の感情を揺り動かす、という点でも名作。

だいぶ古い作品だが、オリジナルを見たことがない、あるいは子どもの頃に見たきり、という方はぜひご覧いただきたい。大人になってから見ると、また味わいが違うと思う。


・怖さだけでなくストーリーの重厚さが魅力

どの作品も、背筋がゾッとするような心理的な怖さという点ではジャパニーズホラーに劣る部分もあるが、悪魔とタイマンで戦うハラハラドキドキや、謎解きのおもしろさがある。

登場する悪魔は、憑依やポルターガイストなど異能を駆使して物理的な攻撃をしてくるので、「命のやりとり」をしているスリルも満点。アクション映画のような迫力がある。夏の夜、ぜひギャーギャーいいながら鑑賞していただきたい。


執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.