甘辛いタレとプリッと弾ける鶏肉のジューシーなハーモニー。私(中澤)は焼き鳥が大好きである。スーパーに行くと、まず鶏を探すくらいには。先日、Aコープ旭店に立ち寄った際も、夕飯時だったこともあり当たり前のように鶏サーチをしていた。

すると、焼き鳥串以外に『やきとり丼(税込み430円)』なるものを発見! Aコープやるじゃん!! 今夜の夕飯はこいつで決まりだー! と、勢いで購入したところ……なんじゃこりゃあ! 鶏が入ってねェェェエエエ!!

・入っていたもの

と言っても具がなかったわけではない。さすがにそれだったら買う前に気づくだろう。肉はガッツリ入っていたのだ。鶏じゃなかっただけで。その肉とは……


ただ、普通に具を間違っているだけかと思いきや、パッケージには「やきとり丼(埼玉産豚かしら)」という意味不明な記載が。豚かしらを使った焼き鳥丼ということだろうか? いや、それ豚丼やがな

・店員さんに聞いてみた

クッ、一体どこからどこまでがやきとり丼なんだ!? やきとり丼の概念が分からなくなってきたため、店員さんに聞いてみた。やきとり丼に豚肉入ってますが。


店員さん「埼玉県東松山の名物に『やきとり』というものがありまして。これは鶏じゃなく豚かしらを使うものなので、Aコープの『やきとり丼』も豚かしらで正しいようです。ちなみに、今月(2021年6月)の新商品です」

──とのこと。言われてみると、確かにパッケージにも東松山名物としっかり書かれている。つまりは、「やきとり」というのは固有名詞! 埼玉県東松山では豚かしらの焼肉串のことを「やきとり」と呼ぶ文化があるらしい。

そこでAコープの『やきとり丼』を食べてみると、味噌ダレの甘めな味つけが回鍋肉みたいだ。そんなタレが染みたご飯には庶民的なウマさがありガツガツと食べてしまう。丼にしたのは正解と言えるだろう。

しかし、なんで豚なのに「やきとり」って呼ばれているのか? 東松山市の公式サイトには、「なぜ豚カシラを使用するようになったか」については書かれているのだが、「それをなぜやきとりと呼ぶのか?」は書かれていない。

・東松山市に聞いてみた

そこで東松山市役所環境産業部商工観光課に問い合わせてみた。東松山の名物の「やきとり」ってなんで豚なんですか


東松山市役所環境産業部商工観光課「誕生した昭和30年代、肉は高級品だったんですが、豚カシラ肉はあまり食肉として使われておらず、安く手に入ったので、それを屋台で焼いて出したのが始まりと聞いてます」


──なるほど。ルーツは分かったんですが、豚なのに「やきとり」と呼ばれているのはなぜでしょう?


東松山市役所環境産業部商工観光課「う~ん、そういった愛称で定着しているので、そう呼ばれているとしか……」


──元々、一般的な焼き鳥屋さんをやっていた人が豚カシラを焼き始めたからそのまま「やきとり」で売ったとか?


東松山市役所環境産業部商工観光課「ちょっとそこまではこちらでも分かりかねますね」


──とのこと。なんかちょっとややこしくも感じてしまうこの名前。しかし、実は豚だけど「やきとり」と呼ぶのはこの地域だけではない。北海道室蘭市などでも、豚串のことが「やきとり」と呼ばれているようだ

それにしても室蘭て。近所ならまだしも、離れすぎているのに同じ名称になっているのが不思議である。この辺、なんか元がありそうな気もするのだが、とりあえずAコープの新商品についての謎は解けているため今回はこれで筆を置きたい。回鍋肉っぽい味が濃厚でご飯と合っているので見つけたら食べてみてくれ。

参考リンク:東松山市
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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