人間は年齢の変化と共に “食の嗜好” が変わるもの。若い頃は脂ギトギトの肉もペロリだった人が、気付けば赤身中心のチョイスになっていることはよくある話だ。個人的な体感では40代手前から、やや脂がキツくなってくる……と思う。

そういう意味で、唯一無二の「肉めし」を展開する岡むら屋の『でらナポ肉めし』は、マジで意味が分からない。若者よりは中年に愛されている店なのに、なぜか牛めしにナポリタンをトッピングするという暴挙に出たのである。岡むら屋、貴様……!

・勢いだけはある

2021年5月から岡むら屋に登場している『でらナポ肉めし』。岡むら屋特製の「肉めし」に、ナポリタン・目玉焼き・あらびきフランクフルトを盛り付けた、勢いだけは異常にある季節限定の丼だ。

ここで味について結論を申し上げてしまうが、ナポリタンもあらびきフランクも、それぞれの味は決して悪くない。ナポリタンはどちらかというと「弁当の脇にいるナポリタン」という感じで本格派とは言い難いものの、それはそれでウマさがあった。

当然、牛めしもいつも通りの安定感だったので、それぞれのパーツは “岡むら屋クオリティ” を達成していたと評価しよう。だがしかし、ナポリタンと牛めし、あらびきフランクと牛めしがシナジー効果を起こしていたかと言われれば、答えは「NO」──。ズバリ、まとまりは皆無であった。

・そもそも合うハズがない

これは普通に考えればわかることで、甘い割り下ベースで煮込まれた肉と、トマトケチャップ味のナポリタンがそもそも相容れるハズがない。例えるならナポリタンの上にすき焼きの肉をのせたところで、両者が絡み合うワケがないではないか。

さらに言えば、40代中盤の私、P.K.サンジュンは食べ切るのも一苦労。それぞれがそれなりの脂肪分 & 大量の炭水化物で『でらナポ肉めし』を食べ終える頃には胃もたれを起こしかけていた。岡むら屋め……やってくれたな。

・おっさん向きじゃないことは明らか

で、心配なのは「岡むら屋がターゲットをおっさんから若者にしているんじゃないか?」ということ。おっさんの街「新橋」で産声を上げ、私が足繫く通う「秋葉原店」でもおっさん率が異常に高い岡むら屋。まさかとは思うが、おっさんを捨てて若者向きの店にしようとしているんじゃあるまいな?

さらに言えば3店舗のうちの1つ「岡むら屋 新宿店」が、2021年5月末で閉店したことにも胸騒ぎを感じずにはいられない。おい、岡むら屋! おっさんたちを置いてけぼりにするつもりか!! お天道様が許しても岡むら屋が大好きなおっさんたちが許さんぞ!

・ワケを聞こうじゃないか

というわけで、岡むら屋を運営する「アークランドサービスホールディングス」に連絡し、『でらナポ肉めし』を開発した経緯、そして「おっさんを置いてけぼりにしようとしている説」についても遠慮なくぶっ込むことにした。


──オウオウオウ! 岡むら屋さんよ……やってくれたな?

「……と言いますと?」

──しらばっくれるつもりかえ! おたくで販売中の『でらナポ牛めし』じゃ!! ありゃ、おっさんには重すぎるじゃろ! どういうつもりでぶっ込んで来たんや!!

「はい、ナポリタンに関していうと、弊社のグループ “かつや” を始め、多くのブランドでナポリタン系のメニューが好評いただいていることがきっかけです」

──うむ、そりゃわかる。ナポリタン自体はウマいからのぉ。でも牛メシに乗せたらアカンやつやろがい!

「はい、岡むら屋らしさを追求した結果、ただナポリタンをのせるだけではダメだという考えに至りました。そのため今回は、あらびきフランクを追加しております」

──な、なな、なんでそうなるんじゃ!

「岡むら屋にいらっしゃるお客様は、やはりお肉を召し上がりたいと思っているのではないでしょうか? そのためナポリタンだけではなく、あらびきフランクを追加した次第です」

──グヌヌ……でもおっさんたちはみんな食べ切れないじゃろうが!

「いえ、そんなことはありません。実際、でらナポ肉めしは多くのお客様にご好評いただいております。当然軽くはありませんが、際立って重いメニューとも認識しておりません。これまでも生姜焼きやメンチカツをトッピングしておりますので」

──わ、ワシが老化しとるんか……?

「それはわかりかねます(笑)」

──オウオウオウ! でらナポについてはこれくらいにしておいてやらあ。ところで何で新宿店が撤退しとるんや! 新宿のおっさんたちが号泣しとるぞ!!

「はい、弊社としても非常に残念ですが、5月31日をもって新宿からは撤退させていただきました」

──オウ、理由はなんなんじゃ?

「以前は外国籍のお客様にも多くご来店いただいておりましたが、最近はなかなかそういうワケにもいかず……」

──コロナか……!

「いえ、決してコロナのせいだけではありません。岡むら屋が新橋や秋葉原のように、地域のみなさまに愛されるお店になり切れなかったこともあろうかと思います。我々としても断腸の思いです

──お、おう。あまり自分を責めたらあかんぜよ……。

「残念ながら岡むら屋は2店舗のみとなってしまいましたが、チャンスがあれば新店舗を出店する気持ちは持ち続けております。重ね重ね申し訳ございません……」

──ワシこそすまんかった! ワシが週6で通うべきじゃったんや!! すまぬ、岡むら屋さんよ!

「いえ、以前もお伝えしましたが、岡むら屋は非常に大切なブランドです。仮に新店舗を出店することになりましたら、必ずお伝えさせていただきますので……」

──よっしゃーーー! 岡むら屋の逆襲が始まっぞォォォオオオオオオ!! 岡むら屋フォーエバァァァアアアアア!


ご覧のように、でらナポ肉めしが開発された経緯が判明した。また、決しておっさんたちを取り残そうとしているワケではないことがわかったから、岡むら屋大好きおじさんたちはどうか安心して欲しい。岡むら屋は永遠に不滅です!

さらに『でらナポ肉めし』についても、なかなか好評らしいので興味がある人は1度召し上がってみてもいいハズだ。ただし、条件はそれなりに食べられる人であること。私レベルの食欲だと、やや持て余す……かもしれない。

参考リンク:岡むら屋公式サイト
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.