電子レンジと揚げ物は、一般的に相性がよくない。トースターを使うなどのライフハックがよく話題になるが、レンジで温め直した揚げ物は、衣がベチャッとして油っぽい……というのが共通認識だと思う。

ところが、茨城県のローカルレストラン「とんかつレストラン クックファン」が開発した、レンジ&フライパンでできる「調理済み冷凍とんかつ」が人気だという。

コロナ禍の苦境のなか「店頭で食べるとんかつと遜色ないレベルに仕上げる事に成功」し、小規模店ながら2カ月で1300枚を売り上げたのだとか。それは食べてみたい!


・セット内容

注文はロースかつ2枚で税込1700円から。ロースかつ1枚、ヒレかつ1枚のセットだと税込1800円だ。1枚ずつの個包装なので、分けて食べられる。別途クール便の送料がかかってしまうのは地方発送の難しいところ。

広げた手のひらよりも大きい、大迫力のロースかつ150g!


ロースよりはひとまわり小さいが、厚みがあって、同じく150gのヒレかつ。


調理に使うキッチンペーパーやアルミホイルも同梱されて至れり尽くせり…………ん?


……これはっ!?


なるほど、店舗のある茨城県大洗は『ガールズ&パンツァー』の聖地! 校旗である。店をあげて応援しているのだとか。


丁寧なメッセージと説明書が入っているので、手順に従って調理してみよう。


まずは電子レンジで所定の時間、温める。開封すると、すでにほんのり揚げ物の匂いがして美味しそう。こんがり揚がったフライドチキンのような、いい色あいである。

レンジだけでも調理は可能だそうだが、やはりクオリティの問題で、フライパンまたはオーブントースターを併用することが前提だ。それぞれのパターンを試してみた。


・オーブントースターの場合

まずはヒレかつをオーブントースターで作ってみよう。同梱のアルミホイルで皿を作り、先ほどレンジ加熱したものをトーストモードで再び加熱する。

ところが、切ってみると内部が冷たい。筆者宅の電子レンジ兼トースターの場合、所定の時間では足りなかった。様子を見ながら何度も加熱を繰り返す。家庭によってトースターの機種も違うし、パワーも違うというのが難しい点。

十分に加熱できたら、そのまま1分間トースターの中で寝かせる。おそらくこの1分間が超重要。トースターの棚板は、ちょうど「とんかつ網」のようになっており、カラッと仕上げるポイントではないかと思う。

完成である。細かいモード変更はあれど、文章にすると「レンジ加熱 → トースター加熱」の2工程で終わり。

ソースや、すりゴマも付属。自分で用意するものはなにもない。とにかく「簡単に」を追求していることが伝わる。

この厚さ! 家庭でこれは揚げられない。加熱済みの状態で冷凍してあるので、火の通りを心配する必要も一切ない。

うん、美味しい! 食感もサクッとしている。もとからヒレ肉はさっぱりしているから、衣の脂っぽさを感じることもなく、食べやすい。

それでいて厚みがあり、がっつり肉を食べている感じがある。

さすがに店頭で揚げたてを食べるときのような、熱々の衣のサクッ、ジュワッという爆発力はない。けれども、たとえば弁当屋さんで「さっき揚げたのを詰めました」といわれたら気づかないレベル。冷凍品とは思えない!


・フライパンの場合

続いてロースかつをフライパンで作ってみる。レンジで加熱するところまではまったく同じ。次に同梱のアルミホイルで包むようにして、フライパンで加熱。

フライパンを洗う手間は増えるが、調理油を使わないし、アルミホイルを敷くからほとんど汚れず、作業の簡単さという点ではトースターと変わらない。

かつ熱伝導率がよいためか、トースターよりも早く温まる。ちょっと気を抜くと焦げそうになるほどだ。フライパンと接している面の油が、ジュージューと音を立てているのがわかる。

できあがり! こちらもよく揚がっている。


少しだけ焦げが出るくらいが美味しいサインとのこと。熱々にしたいなら、火力の調整も可能なフライパンが圧倒的に早い。

ただ、トースター加熱に比べると、やや「しっとり」している感じがあった。時間はかかるが、サクサクにするならトースターの方がよさそう。

また、「しっとり質感」と「ロース肉」のダブル効果で、衣に油脂が染みているのがより強く感じられる。「脂身がなければ、とんかつじゃねぇ!」という向きにはよいが、好みが分かれるかもしれない。


・店で揚げたビッグサイズを家庭で

よく弁当用などで売られている小ぶりの調理済み冷凍とんかつと比べると、確実に美味しく、食べ応えがある。なにより家庭では揚げられないような大判・極厚の「専門店のとんかつ」が食べられる点が最大の長所!


とりわけヒレかつは美味しかった。レンジ加熱の最大の難点は、クタッと湿ったようになるところや、冷めやすいところだと思うのだが、もとから脂身の多い食材が冷めると余計に脂っぽさを感じてしまう。その点、ヒレかつはレンジ調理に向いているのではないかと思う。


ただし「店で食べるのと同じ」かといわれると、それは違うだろう。当たり前の話なのだが、店舗で作りたてを食べる魅力は、パン粉が立ち上がっているようなサクサク感であったり、高温の油で中心部まで火が通った熱々ぶりだったりする。

トースターやフライパンでそこまで熱々にすることは難しい。感染症が収束したら「やはり店舗に行ってみたい!」というのが率直な感想だ。


結論としては「店と同じとはいかないが、調理済みで売られている市販のとんかつよりは遥かに美味しく、黙って出されたら冷凍品とはわからない!」というところ。

もちろん家庭でだって、揚げたてが1番美味しいのだろうが、ここまで厚く大きな肉を揚げられる自信は筆者にはない。気軽に専門店の味が楽しめるこの1品、ぜひご賞味いただきたい!


参考リンク:とんかつ クックファン
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.