まずはこちらの記事を読んでいただきたい。中澤記者が、『格安切符自販機』の存在を初めて知り、買ったり、その存在そのものについてJRに問い合わせたりしたものだ。実は筆者がこの手の自販機の存在を知ったのも、つい数か月前のこと。

3月後半に用事があって横浜駅を訪れた際に、駅と繋がっている商業施設内にて初めて見たのだ。店舗型の金券ショップの存在そのものは子供の頃から知っていたが、自販機なんてあったのか……と。

興味を持ったので、何が売られているのだろうとチェックしてみると、一目見てわかる新幹線の切符や図書カードなどの他に、「〇〇株」とのみ書かれたものが。株ってなんだろう? 株主とかの株だろうか? いやしかし……

・株

基本的に、よくわからないものはとりあえず手を出してみることにしている筆者。


その時自販機に入っていたのは「相鉄株」「東急株」そして「京急株」の三種。とりあえず一番安い460円で2枚入りの「相鉄株」を買ってみることに。とまぁ、このように引っ張っておいてなんだが、これについてはサクッと正体を書いてしまおう。

要は相鉄グループの株主優待乗車証だったのだ。利用経験のある人ならきっとご存じだったことだろう。筆者も「株主優待乗車証」と書かれていたら特に疑問は抱かなかった。単に自販機上の「〇〇株」という表記と株主優待乗車証が、頭の中で繋がらなかっただけである。

一応説明しておくと、株主優待乗車証とは、その鉄道会社の運行区間であればどこでも1回だけ好きに乗れるというもの。例えばこの時に460円で2枚ゲットした「相鉄株」こと、相鉄ホールディングス株式会社の株主優待乗車証なら、横浜駅から海老名、湘南台、そして羽沢横浜国大までの区画であれば、好きに乗車できる。


この時の値段(金券ショップの自販機なので、値段はその時々で変わる)は1枚230円なので、それよりも高い運賃の駅まで行くなら間違いなくお得だ。が、どうもこの自販機の存在はあまり人々に気にされていないようで、筆者がしばらく眺めていても、ろくに利用者が現れない。

それどころか、筆者が写真を撮っているのを見て「何を撮っているんだろう」とばかりに関心を持ったと思しきおじさんやマダムがやってきて、「こんなのあったの?」「あぁ~金券ショップの」と。思いのほか知らない人が多い可能性を感じる。


・ネタとしての厚み

改札からそう遠くないところか、駅から繋がってる商業施設内に設置されており、たいした苦労もなくお得に切符を買えるのだから、積極的に利用しない手は無い。ということで記事にしてみたらどうだろうと編集部に持ちかけてみたところ……


なるほど。それだけではネタとしての厚みが足りないということだろう。価格の比較やメリットなどを調査する様にとの編集部からのお達しだ。そして筆者が再びこの自販機を訪れる機会を得たのは、それから2か月後。

ラインアップはこの様な感じになっていた。


自販機からやや離れたところには、この自販機を運営する金券ショップの実店舗があるが、そちらのラインアップと値段はこんな感じ。


まず、店舗の方がはるかに種類が多い(このほかにも映画やら食事券やらが大量にあった)。そして値段だが、せっかくなので「相鉄株」を例に挙げると、自販機は2枚で440円から。店舗の方は1枚220円から。


単価は同じだ。まあ同じ金券ショップの、距離にして徒歩数分程度しか離れていない自販機と店舗なのだから当然の結果だろう。もし、運営元が異なる店舗と自販機の比較であれば値段は違ってくるだろうとは思うが……そもそも異なる店舗同士で値段を比較しても、それはそれで違って当たり前というもの。

金券ショップとは、要は未使用品のみ取り扱う中古ショップみたいなものではないか。運営が違うのに値段が同じだったらむしろ不自然というか、話し合って値段を決めてるのかな? と不思議に感じるだろう。

ではメリットはどうだろう。自販機のメリットはあるのか? 横浜駅内の『格安切符自販機』に関して言えば、利用する側にとって自販機から買うことのメリットは特に無いように思う。自販機と店舗、どちらが利用する改札に近いか次第だ。だが、金券ショップ側にとっては別かもしれない。販売拠点を増やせるわけだから、これはメリットと言えるのではないだろうか。


・駅構内はNG

とまあこんな感じなのだが、いかがだろう? フフッ、「もっと何かないのかよ!」「当たり前の内容すぎるだろ!」という声が内外から聞こえてきそうだ。ぶっちゃけ筆者もそう感じている。

何か内容を盛れそうなことはないかと思ったら、1つあった。先に出ている中澤記者による記事では、金券ショップについてJRに問い合わせ「JRとしては特に問題ない」という結論に至っている。では金券ショップ側に、JRとの関係を聞いたらどうなのか?

今回訪れた横浜駅構内の金券ショップにて、このようなポップが掲示されていたのを発見した筆者。


筆者「あ、やっぱり駅構内だとNGなんですか?」
店員さん「いやー、やめてくれって言われますよね(笑)」
筆者「ですよねー(笑)」
店員さん「ですです。駅構内で切符は売るなって(笑)」


店員さんの口調的に、金券ショップ側には駅構内はNGとのお達しがきているような印象を受けた。ちなみに、横浜駅では(他の多くの大きな駅同様に)駅構内と隣接する商業施設が通路でつながっている。そして、例えば上で紹介した自販機もそうだが、商業施設内とはいえ、ぶっちゃけ改札から徒歩3分とか5分とか程度のところに設置されている。

利用客側からすれば、どちらも実質駅構内のようなものだ。日常会話でのやり取りなら「駅の中の~」と表現されるだろう。それでもオフィシャルな駅構内では、やはり金券ショップによる切符の販売はNGなようだ。しかし商業施設の管轄内に入れば、もはやJRに口出しはできないのだろう。徒歩にしてほんの数分程度のところでは余裕で売られているのだから。

なお、試しに筆者も窓口まで行き、切符の格安自販機について聞いてみたが「ちょっと存じ上げないですね」とのこと。JR的には特に気にしていないようなふうではあるが……もしかしたら、水面下ではバチバチとやり合っている……のかもしれない。

執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.