農業に憧れるが、農家に転身するほどの覚悟はない。じゃあ家庭菜園でも始めようか、と思ってみても、東京のマンション暮らしじゃ肝心の庭がない……え? プランター? う〜ん。旅行で家を空けることも多いし、あまり手間がかかるのはちょっとネ……

……というナメた態度で植物を育てたい私に朗報だ。何気なくドンキをさまよっていたところ『ペットボトルで野菜ができる栽培キット』なるものを発見。ペットボトルってことは、ひょっとして「毎日の水やり不要」の可能性が濃厚なのでは!?

・ナゾのラインナップ

この『栽培キット グリーントイ』という商品、ドンキで売られていたのは『いちご』『枝豆』『プチトマト』『サボテン』の計4種類だ。各550円とお手頃価格で、うまくすると野菜を買うより安くつくかもしれない。

ラインナップを見るかぎり『トマト』はなんとなく自宅で作れそうな雰囲気である。『枝豆』もまぁ、イケるだろう。ただ……『いちご』に関しては、ビニールハウスでしか栽培できないものと思っていた。実はそうでもないのだろうか?

さらに『サボテン』はそもそも、育てること自体が難しいと聞いたことがある。それをタネから栽培ってマジなのか?

中身は全種類共通で「ペットボトルにはめるホルダー」「タネ」「サンド(砂)」「肥料」「スプーン」の5点セット。説明書によると、タネごとに “発芽適温” “生育適温” が異なるらしい。植物には詳しくないが「そりゃそうでしょうね」というのが素直な感想である。

しかし「どの時期にタネをまくか」について、説明書のどこにも明確な指示はない。「調べろよ」という意見もあろうが、私に言わせりゃそんなマメな人物は最初からプランターを購入するだろう。ズボラだからこそ「ペットボトルで植物を育てよう」などという気になるのだ。

よって私は細かいことを調べるつもりはない。説明書には「冬場は通常よりも発芽するまでに時間が掛かります」という表記がある。言い換えれば “1年中いつタネをまいてもよい” という意味に捉えることが可能だが、なんとなく暖かい時期のほうが良さそうなので春を待つことにしよう。


・そして3月中旬

気温が20度前後まで上昇してきたころを見計らってタネまき。

まず500mlペットボトルに水を入れ、キャップ代わりにホルダーをセット。フィルター部分を湿らせたのちタネを入れ、サンドをかぶせて湿らせるだけで完了だ。

ちなみに枝豆のタネはサイズが大きく、いくらサンドをかぶせてもタネが浮いてしまう。このことに関して説明書には記載がないが、自然界にはアクシデントがつきものだ。小さいことは気にせずにいこう。

枝豆は暗い場所に……

残りの3つは陽の当たる場所に安置する。発芽までの間、水の交換は不要だそうだ。メッチャ簡単!


・と、思いきや

さて説明書の情報によると、早ければ枝豆とトマトは約10日ほどで発芽するらしい。「発芽するまでは動かさないように」という指示に従ったところ……


1週間ほどで、サンドに白カビっぽいのが生えてきてしまった。


うっわ、マジかよ……そりゃ湿った土を全く動かさず室内に放置しておくのだから、カビが生えてもおかしくはないと想像できるけど……

しかし繰り返すが、そのあたりについて明確な指示はなかった。やはり屋外に置くべきだったのだろうか? でも、それだと今度は「夜に冷え込む」「風で飛ばされてしまう」などの可能性が生じてくるし……

もしかするとカビが生えた時点でもう失敗確定なのだろうか? この問題についても説明書には明確な説明は記されていない。よって素人には判断のしようがない。

私は悩んだ末、10日目からペットボトルを屋外へ移動。果たして吉と出るか凶と出るか? ……ってか、栽培キットってこんなに手探りなものなのか?


そしてタネまきから18日後……



ミニトマトに芽が出た〜〜〜!!!!!


・超ウレシ〜!!!

4つの中で最も難易度が低そうに思われたミニトマトが、ついに成長を始めたようだ。3cmくらいのカワイイ新芽が計4本! これは嬉しい!!

「芽が1本になるように間引きをしてください」とのことだから、一番かっこいいやつだけを残してカット。


どうかスクスク育ってくれよな〜!


そして2カ月が経過した頃には……



ミニトマトは枯れ果て……残り3つのボトルは変化ゼロ。


・農業の難しさを知る

失敗の原因はカビが生えたことか、それともタネまきの段階でミスっていたのか? 今となっては正解を知るすべもない。運が悪かった可能性も考えられるが、少なくともペットボトル栽培キットは ”誰でも簡単に” 野菜が作れるわけではなさそうだ。

ただし誰でも簡単に “栽培を開始できる” のは確かなワケだから、そういう意味で商品名には全く偽りがないと言えるだろう。今回、私は野菜を収穫することができなかった。しかし「次回は気温や湿度、日当たりに気をつけよう」と思った。それだけでもすごい進歩ではないか。

幸いタネはまだ余っているので、夏本番を迎えたころに再チャレンジしてみようと思う。誰でも簡単に農業の大変さを体験できるペットボトルキット……素人はまずトマトから育ててみてほしい。

執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.