世の中に謎に包まれた職業はいくつかあるが、作詞家もその1つだと思う。どこから仕事が来て、どういう感じでお金がもらえるのか

色々なパターンがあるだろうし、だからこそ、これと言ったレールがあまり表に出ないのだと思うが、目指している人にとってはその辺がやきもきするところでもあるだろう。そこで私(中澤)が作詞家デビューしたパターンをご紹介したい。

・ポロッとLINEで

ロケットニュース24の記者である以前に15年ほど音楽活動をしているバンドマンでもある私。今でも『フリサト』と『si,irene』というインディーズバンドでギターを弾いているのだが、これがびっくりするくらい鳴かず飛ばず

音楽で食っていくことの厳しさは痛いほど身に染みているため、同じく音楽を志す人の何かの参考になればと思い、記事にすることにした。

さて、そんな私にアイドルの作詞の仕事が舞い込んだのはありのまま言うと知り合いからだった。ももいろクローバーZやHey! Say! JUMP、アニソンなども多数手掛ける作曲家のエンドウ.さんからLINEが来たのである。「アイドルの作詞してくれる人を探してるんだけど、そう言えばYou、作詞家志望だった的な記事書いてたよね?」と。

・クライアントの要望

なぜ、私が彼と知り合いかと言うと、エンドウ.さんは『GEEKS』というバンドでギターボーカルを務めるバンドマンでもあるから。知り合った過程は長くなるため省かせてもらうが、なんでも書いてみるものである。

で、ここで少し考えたのは、エンドウ.さんは知り合いだが、クライアントのアイドル事務所は全く知り合いではないということ。要するに審査をするのは第三者だ。舞い込んできたのはコネからだったが審査に通るかはコネではない。

とは言え、失うものは何もないことも事実。そこで依頼を受けたところ、事務所から歌詞の雰囲気について要望が送られてきた。「重い感じで」と

これだけ!? と、思うかもしれないが、以前作家事務所にいた時もクライアントの要望はこんなもんだった。

・最初から最後までLINEだけ

そこで自分なりの重さを表現して、エンドウ.さんの曲に歌詞をつけて1週間くらいでLINEで送った。歌詞の割り当てを教えるための仮歌をiPhoneで録音して同じくLINEで送信。

依頼から納品までLINEだけ。と書くと、コスパがヤバイようにも感じられるが、その歌詞をひねり出すのにかけた時間を考えると、これで食っていくことが幸せかどうかは人によるだろう。もちろん、作曲家も同様だ。

・作家の報酬について

なお、報酬については著作権使用料のみである。こう言うと、ミュージシャンでも「ギャラないの!?」と驚いたりするが、ここについては誤解をなくすためにも、エンドウ.さんに作家の仕事の報酬について聞いてみた。


エンドウ.「結構な大物作詞家も、作詞自体にギャラなどは無く印税だけの場合が多いようです。あまりに売れる見込みがなさそうな場合などは、交渉して最初にいくらか貰ったりもするらしいですが、あまり多くはないと思います。

ちなみに、作曲家も同じく印税のみです。報酬(ギャラ)を貰えるのは編曲家だけですね。その代わり、編曲家には著作権印税が無いので、曲が売れても売れなくても儲けは変わりません。作詞家や作曲家は、曲が売れれば売れるほど、それに比例して多くの印税が入ります」


──とのこと。まあ簡単に言うと、JASRACやNexToneなどの著作権管理団体からの分配が報酬なのだ。今はCDの売り上げだけじゃなく、YouTubeの再生数などインタラクティブ配信でも著作権使用料が入ってくるので、大金じゃなければ以外と普通に印税がもらえたりする。

最後に、私の作詞家デビューになったアイドルの名前は『BLK LiLiY』。2021年5月14日にZepp Tokyoらしい。SUGEEEEEEE

当然ながら私はZepp Tokyoのステージに立ったことがないわけだが、彼女たちの晴れ舞台を影ながら応援している。頑張れー!!

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼『BLK LiLiY』のデビューライブのアーカイブはこちら↓私が作詞した曲は29分07秒から