一見すると日本語の文章に見えても、文法がおかしかったり、日本では使われない字体の漢字だったり……「怪しい日本語」に出くわすことがある。そして多くの場合は警戒する。

いわゆる詐欺メールや偽サイト、粗悪な商品の説明書など、あまり嬉しくない場面で出会うことが圧倒的に多いからだ。

先日のAmazonタイムセール祭りで中国製の家具を購入した際にも、長文レターがついてきた。「また高評価レビューのお願いかな?」と思って流し読みしたのだが、内容にびっくり。自分の心の貧しさに、穴があったら入りたくなった……!


・とある竹製品についてきたレター

購入したのは竹製の折りたたみテーブル。販売者の住所は中国の浙江省とある。数千円の安価な商品で、Amazonサイトには類似品もたくさん出てくるので、どのメーカーということもなく購入した。

こういった安価な外国製品は、説明書も保証書もないことも多いが、商品には「アフターサービスカード」という1枚の紙が入っていた。カラー印刷の、しっかりした厚手の紙である。

まずタイトルが気になる。「最高品質の製品であっても、自分の愛 家族、友達のように大切にしてください」とある。ちゃんとお手入れして大事に使ってね、という意味だと思う。いきなり販売者の「商品愛」がビシバシと感じられるタイトル。

レターの前半には、お手入れの方法が列挙してある。

機械翻訳なのだろう、文法はめちゃくちゃなのだが、全7項目にわたって竹製品の特徴やケアについて説明している。中でも気になるのが、中国のことわざだという「乾いて3年、濡れて3年、乾かないと濡れないと3年」というフレーズ。

慣用句は翻訳が難しいので、ちょっと意味がわからないが、「9年使ってようやく味が出る」という意味だろうか。あるいは「湿気にも乾燥にも強い」という意味だろうか。

家具屋がよく使うとあり、竹製品の長所を示した言葉だと思う。ここでも自社製品への、あふれんばかりの愛が感じられた。

そして驚いたのが「お客様さん」から始まる後半である! 購入者へのメッセージが長文でつづられている。

まずは感謝の言葉から始まり、次におわびがくる。「なにに対して?」と思ったら「時々休日や交通のせいで、製品が遅延になり、それとも製品がお客様の思い通りに満足できない、出会う可能性の意外な情況について」だという。

日本語としては正しくないが、思いっきり伝わる! もし不手際があったらごめんね、といっているのだ!!


そしてもし問題があったら「弊社を頼りに、こっちは逃げなくて、遅延になりません、お客様を全力で助けさせます」とある。これもそのままでは理解が難しいが、意訳すると「トラブルには誠心誠意、迅速に対処します」という意図は明らかだろう。

続く最後の文章には「お客様の励ましは うちの進め動力だ」ともあって、評価やフィードバックを求めている。

わかる。なにをいっているか、完全にわかる。おまけに言い回しが、なんか可愛い。


こんな理想的なレターがあるだろうか。長持ちさせるためのケアの方法を書き、購入への感謝と、不測の事態へのおわびを書き、アフターサービスについて示し、フィードバックを求める。

翻訳は本当にめちゃくちゃなのだけれど、それがかえって「心を伝える」という結果になっている奇跡!

ちなみに今回の注文は最短日数で届き、不具合もなかった。

なので実際のトラブル時にこの会社がどのような対応をしてくれるのか、本当に返信をくれるのか、有言実行を確認するすべはない。ちょっと意地悪な見方をすれば「口では(文章では)なんだっていえる」とも考えられる。


しかし、筆者にはこのレターから誠実さが感じられた。一生懸命、顧客に対応しようという良心がめちゃくちゃ伝わってきたのだ。

消耗品とは違い、家具だからリピーターにはなりにくい。ある意味、売り切ってしまえばそれで「終わり」の関係なのに、この1枚を入れてくるその気持ち。


ウソでもいい。その心だけでいい。筆者は、ほっこりした。

そして「機械翻訳=怪しい!」という自分の思い込みを恥じた。筆者だって、もし外国で商売をしようと思い、かつ翻訳者を依頼する余裕がない小規模な組織だったら、使うよ機械翻訳。


・商品にも満足

商品の品質にもとても満足している。竹デスクの購入は初めてではなく、他社のもっと安い製品も持っているのだが、そちらは値段相応の粗悪品。フタがきっちり閉まらず、パーツもズレている。

一方、今回購入した商品は、つやつやのコーティングに、留め具などもしっかりした作り、何段階もクオリティが上だった。こういうところにも、販売者の姿勢が現れるのだと思う。久しぶりによい買い物をした!


執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.