スポーツでは馴染みのある言葉の「フェイント」。これはある動きをするフリをして、違う動作に移行することを指す。サッカーの場合、右に蹴るフリをして左に蹴ったり、ドリブルするフリをしてロングキックをしたりと、相手を揺さぶる「けん制」だ。

これは料理にも応用できるらしい。少なくとも、大阪発祥のインデアンカレーは まさに “味のフェイント” をかましている。食べたことのある人は知っていると思うが、甘いかと思ったら辛いカレーだ。知らずに食べると、一瞬戸惑ってしまうぞ。

・大阪発祥のカレー

インデアンカレーは関西に8店舗、東京に2店舗を構える老舗カレーチェーンだ。1947年に大阪で創業し、2005年に東京・丸の内に進出。2020年に大手町にも出店している。


ここのカレーについて、「甘くて辛い」と噂には聞いていた。しかし私(佐藤)は腑に落ちなかった。だって、甘くて辛いはおかしいでしょ。味のベクトルが真反対じゃないか。お店の口コミには「甘さのあとに辛さがくる」なんてものもある。そんな味の変化はあり得ないんじゃない? 甘いか辛いかのどちらかじゃないの? 100歩譲って、ほかの料理ではあり得るとしよう。でもカレーに限ってそれはないんじゃないの?


とにかく食べないことには始まらない。メニューはとてもシンプルだ。看板メニューのインデアンカレー(税込780円)、カレールーをスパゲッティにかけたインデアンスパゲッティ(税込780円)、そのほかハヤシライス(税込700円)もミートスパゲッティ(税込700)もある。またカレーには+50円でタマゴ(生卵)をつけることも可能だ。


・1秒後に辛い

入り口で先に会計を済ませて席につくと、まずキャベツのピクルスが出てきた。その直後に間髪入れずにカレーが出てきた。早い! 荷物を脇に置いて、席に座ったと同時に提供されたのだ。牛丼屋でもこの速度では出てこないだろう。


平皿にラグビーボール型のライス、その上にたっぷりカレーがかかっている。添え物はキャベツのピクルスである。


カレールーは昭和の時代を感じさせる、トロリとした液状。具材はほとんど入っておらず、ライスのてっぺんに一片の肉が鎮座している。香りはややスパイシーで、辛そうな印象を受けるのだが、味はどうだ?


まずひと口食べてみると、フルーツを感じさせる甘さが広がる。甘口カレーなのか……。と思った1秒後に辛い! え? 何が起きたんだ? イメージとしては……。


食べた瞬間

甘い--------辛い


1秒後

甘い→→→→→→→→辛い


味が一瞬で移行したぞ。サッカーで例えるならこんな感じだ。「ボールをキープした味選手は「甘い」の方に走りだすかと思いきや、不意に身体を切り返して「辛い」に一直線に駆け出した」。おかしい、気のせいかな? もう1口食べてみよう……。


甘い--------辛い


甘い→→→→→→→→辛い


まただ! また味が急変した!! こ、これは……、味のフェイントや~!! 一瞬「甘い」と見せかけて、すぐさま「辛い」に翻(ひるがえ)る。驚くのは、その辛さがずーっと続く訳ではなくて、次のひと口の最初は必ず甘い。そしてすぐに辛いがやってくる。「甘い→辛い」の一方通行を食べる度に繰り返しているのだ。こんなカレーあったのか! なんてトリッキーなんだ!!


不思議なことに、ひと口食べるともうひと口欲しくなる。食べ終わっても、もうひと口欲しくなる。味の余韻が長いカレーだ。すでに食べ終えて数時間が経っているのに、あの味をもうひと口欲しくなっている自分がいる。

なんとも不思議なインデアンカレー、未体験の人は1度試して欲しい。「甘いのあとに辛い? そんな訳がない」と思う人ほど、食べて欲しい味だ。

・今回訪問した店舗の情報

店名 インデアンカレー 丸の内店
住所 東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビルTOKIA B1
時間 11:00~20:00(短縮営業中)
定休日 不定休

参考リンク:インデアンカレー
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
Screenshot:iOS「再現CGメーカー