子供が生まれてからというもの、めっきり足が遠のいてしまった熱烈中華食堂「日高屋」。なぜなら私(あひるねこ)にとって日高屋とは、中華屋であると同時に使い勝手の良い居酒屋に他ならないからだ。ああ、久しぶりに春巻きで一杯やりてぇな~。

そんなワケでしばらく日高屋とはご無沙汰だったのだが、よく考えたら会社のすぐ近くに日高屋あったわ。そこで超久しぶりに行ってみたところ、なんと期間限定メニュー『冷麺』が登場しているではないか。どこが熱烈中華やねんと思いつつ、無性に気になったので食べてみることにした。

・正しき日高道

さて、日高屋ファンとしてまず最初に言わせてもらうと、そもそも日高屋とはホームランを求めて来るような場所ではない。基本的には内野ゴロであり、そのゴロ具合を愛(め)でに行く場所なのだ。

もちろん『チゲ味噌ラーメン』など優秀なメニューもあるにはあるが、キレイなアーチが描かれることなどほぼ皆無である。

だから日高屋の料理に対して、あーだこーだと文句を垂れるのは非常にみっともなく、また無粋な行為と言えるだろう。だったら食べログ4.0の店にでも行けばいいのだ。日高屋だぞ、日高屋。グルメを気取って恥ずかしくないのか、日高屋で。

以上のような理由から、私としても今月発売の期間限定メニュー『冷麺(税込640円)』に過度な期待はしていなかったのだが……結論を言ってしまおう。


ホォォォォムラァァァァァァン!!!!


まさかの場外ホームランである。

(腕をぐるぐる回しながら)


・奇跡の一打

日高屋の『冷麺』は、何か革新的なアイデアが詰まっているワケではないし、特に絶品というワケでもないのだが、これ以上足しようも引きようもないほどにシンプルで、そこが良い。

こんな経験はないだろうか? ちょっと高い焼肉屋に行って、その店は肉も酒もべらぼうにウマく大満足。なのにシメで出てきた冷麺が、「なんか思ってたのと違う……」みたいなこと。

韓国冷麺とは言わないまでも、やけに細い麺。出汁によって和風のアレンジが施された、やたらアッサリしたスープ。散々肉を食らった後に、ひたすら主張が強いチャーシュー。無駄に器を彩るチェリー、パイナップル、スイカ等のフルーツ。そうじゃねぇ……! そうじゃねぇんだよ……!!

・ちょうどいい

一方、日高屋の『冷麺』を見て欲しい。キムチにキュウリ、薬味ネギ、煮玉子、そして小ぶりなチャーシューと最低限の具材のみだ。スープも魔球変化球は一切投げてこず、適度に酸味を効かせたド定番な仕上がり。潔いじゃないか。

個人的に面白いなと思ったのが麺である。実はこの麺、純粋な冷麺とは言えず、ラーメンと冷麺の中間のような形状となっている。ツルツルのどごしが良く、それでいて冷麺らしいコシもしっかりあるのが特徴だ。

・一つの正解図

この麺に対し、「冷麺じゃない!」とか言っちゃうのは先に書いた通りクソだせぇだろう。私は冷麺はコシが強ければ強いほどいい派だが、中にはそれがゴムみたいで嫌という人もいるはず。日高屋の『冷麺』は、そんな人たちにも響く絶妙なラインを突いているように思う。

公式サイトには「盛岡風冷麺に仕上げております」と書いてあり、この “風” という書き方に日高屋らしさを感じずにはいられない。ハッキリ言って文句なしだ。あえて注文をつけるなら、お酢も一緒に持ってきて欲しかったなぁ……

と思ったら、あるじゃん! 酢!! テーブルごとに常備されてんじゃん! だって中華屋ですし!! というワケで、弱点らしい弱点は見当たらないという結論になり申した。そうだ、冷麺が食べたくなったら日高屋に行こう。

・快挙

熱烈中華感ゼロの新メニューによって、とうとうキャリア初の場外ホームランを叩き出してしまった日高屋。「こういうのでいいんだよ、こういうので」という感想が果たして賛辞に当たるのかは微妙なところだが、私としては万雷の拍手をこの『冷麺』に送りたいと思う。

それでは最後に一つ、ファンがもっとも気になっているだろう情報をお伝えしてこの記事を終わりにしたい。『冷麺』にモリモリサービス券は……残念ながら使えません。麺大盛りはやっていないそうだ。参考までに。

参考リンク:日高屋
執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.