第1号『るるぶ京都』から40年近く、日本はもちろん世界各地の情報を届けてくれる旅行ガイドシリーズに待望の1冊が登場した。『るるぶ宇宙』である。

ついに、ついに、観光ガイドを読み込んで宇宙旅行に備える時代が来たか。すべての宇宙旅行者は必携である。身近な月から、太陽系惑星の見どころまで「観光の際には必ず立ち寄りたい数々の “名所” を先取りしてご案内」という。

パラパラとめくるだけでも楽しいが、夢中で通読した筆者が気になった記事を勝手にピックアップ!


・その1「国際宇宙ステーション(ISS)大特集」

こういったガイド本が出るの、実は単なるネタじゃない。民間人の宇宙旅行が現実的なものになってきているゆえだ。

NASAがISSを商業活動の場としてオープンにし、民間人を受け入れることを発表。つまり民間利用が可能になる。滞在費は1人あたり1日380万円! これが高いのか安いのか筆者にはさっぱり想像がつかないが。

巻頭特集では国際宇宙ステーション(以下ISS)での滞在を念頭に、宇宙ライフの衣食住を紹介。なにせ「るるぶ」だから写真多数、文系の筆者にもめちゃくちゃわかりやすい。これほどまでに宇宙旅行の全容を網羅した本がかつてあっただろうか。

「なに食べるの?」「寝るときはどうするの?」「風呂は?」「化粧は?」といった素朴な疑問に答えてくれる。

有名なトリビアかもしれないが、筆者は知らなかったある事実。宇宙空間では水は貴重品。尿などの排水や、除湿で生まれた水も飲料水に生まれ変わるんだって!


・その2「火星模擬実験生活 “Mars160” 隊員インタビュー」

半ページほどの小さなコーナーだが、興味深かったのが火星模擬実験生活「Mars160」隊員インタビュー。

火星旅行は到着するまで6カ月以上、現地滞在は数年間と、かなりの長期戦になる。限られたスペースとメンバーで共同生活を送ることになるわけで、閉鎖環境でどのようにチームを運営するか、世界各地で模擬実験が行われているのだという。

インタビューで取り上げられていたのは、火星を模した極地での160日間の集団生活。高い意欲と能力をもって集まったメンバーでも、単調な毎日の繰り返しに、やはり精神のバランスを崩してしまう人がいるそう。

心身を健康に保つために、毎日の「習慣」を作ることの大切さが指摘されていた。そういえば、チリ鉱山落盤事故でも同じようなエピソードを聞いたことがある。逆になんでも議論で解決することが、必ずしもよい結果を生まないことも……。へえぇぇぇ。


・その3「無重力体験プラン」

民間人の宇宙旅行とひと言でいっても、高度100kmほどに数分間滞在して帰ってくる日帰り旅行から、ISSを超えて月へ行くものまでレベルは様々。

実業家の前澤友作氏が予約しているのは後者。スペースX社のプランでは、費用は1人あたり700億円とも1000億円とも。

「そんなカネ出せるかー!!」という方には、手軽に楽しむ宇宙体験もあるという。高度8500mの上空で航空機がアップダウンを繰り返すことで、擬似的に無重力体験ができるというもの。なにそれ、怖ェェェェェェ!

「人生観が変わった」という人もいるらしいが、ディズニーシーの「タワー・オブ・テラー」もNGな筆者には一生無理。場所はアメリカやロシア、ツアー代金120万円からというから、ご興味のある方はどうぞ……ガクガクブルブル……


・購入は全国の書店で

上記のほか「はやぶさ2」特集や、全国の宇宙にまつわる体験施設も紹介。脳内旅行するもよし、実際に訪れるのもよし、いろいろな楽しみ方ができる。読み応えは抜群で、旅好きと宇宙好き、どちらにもオススメ。

個人的には、旅行ガイドブック業界が苦戦しているであろういま、こういった夢のある企画にちょっと胸が熱くなる。

価格は税込1100円。全国の書店や、Amazonなどのオンラインストアで取り扱い中だ。


参考リンク:Amazon(商品ページ)、PR TIMES
執筆:冨樫さや
Photo:PR TIMES、RocketNews24.