「イヌは人につき、ネコは家につく」という言葉を聞いたことがあるだろう。似たものに「イヌは3日の恩を3年忘れず、ネコは3年の恩を3日で忘れる」なんていう言葉もある。

忠実なイヌは、信頼する飼い主の行くところであればどこにでも喜んでついていく。一方のネコは人よりも場所や環境に愛着を示し、人がどうだこうだは気にしない、というたとえ。

これ、ネコ飼いであれば遠い目で「違う……」といいたくなるのだが、定説がくつがえる調査結果をご紹介したい。


・「ネコのなつきやすさ」に関するアンケート

飼育情報サイト「ねこちゃんホンポ」で、全国のネコを飼っている約300名を対象に「愛猫のなつきやすさ」に関しての意識調査を実施。結果を順にみていこう。

まずは「愛猫はなつきやすい・なつきにくいどちらだと思いますか?」という設問。対象のネコと出会った当初のことを想定していると思われる。その結果「なつきやすかった」が75%以上と圧倒的多数。

もちろん子猫時代に過酷なノラ生活を送ったなど、臆病な性格が残る例はあるだろうが、ネコが家族に馴染むのに苦労するケースは少数派といえる。

ノラ出身のネコしか飼ったことがない筆者の経験でも、2~3日後には「ここ私んちですけど、なにか?」といわんばかりに馴染むケースがほとんどだったぞ。

続いて「愛猫はどんな性格ですか?」を複数選択で尋ねた項目では「甘えん坊」が1位、続いて「寂しがりや」が2位となった。

ネコの代名詞のような「気分屋」は少数派。甘ったれで寂しがりや、それが飼いネコのよくある姿なのである。

「ネコのなつきやすさに性別は関係していると思いますか?」という設問では、「はい」と「いいえ」がほぼ同数。回答者にはどちらか一方しか飼育した経験がなく比較できない人も一定数いると思われるが、「性別は関係ない」と考える人がやや多い。

ちなみに「はい」と答えた人に、どちらがなつきやすいか問うと、圧倒的に「オス」(73%以上)という回答だった。

筆者としては「オスは人になつく」に激しく同意である。とくに去勢手術後は性格が丸くなるので余計にそう。

多頭飼いしていると、ネコ同士の社会が形成されて、あまり飼い主に依存しない性格になる、ともいわれる。

単独で狩りをしていたヤマネコの本能を残しつつ、人間の集落で他のネコと縄張りを共有しながら生きてきた長い歴史があるので、1番ネコらしい生態がみえるのだと思う。

しかし筆者の経験上、多頭飼いでも飼い主にデレデレになるのはいつもオスのように感じる。愛情表現がストレートで、「みて!」「かまって!」「なでて!」という自己主張も強い。

飼い主の姿を見かけるたびに先回りして腹を出し、部屋に入れないとドアが開くまで大声で鳴き、飼い主の身体によじ登って抱っこをせがむ(※自分の気が向いたとき限定)。

真夜中、ネコ自身が寝ていてもそうなので、こちらがトイレに起きるのを躊躇(ちゅうちょ)するほどである。

ただし愛情深さでいえばメスネコも負けていない。

だいぶ前、メスのノラネコを保護したことがある。飼うことを決めたのだが、その準備が整うまでしばらく別の家に預けなければならなかった。

元ノラ、しかも短期間で居場所を移され、ネコもおびえて家具の裏にこもってしまう状態だった。しかし、筆者が様子見にその家を訪れると、覚えていたのだろう、ソロソロと物陰から出てきた。「たった数日、世話をしただけで」である。

賢く思慮深いネコで、控えめながら生涯にわたって飼い主への静かな信頼と愛情を示し続けた彼女を忘れられない。


・いろんな個体がいる

ちなみに「ネコは家につく」というのは、「環境の変化を嫌う」という性質を表している面もある。縄張りを守る生きものだから、転居や旅行や来客が苦手という点では納得だ。だからといって「人につかない」わけではないぞ。

1つだけいえるのは「ネコは手がかからなくて楽だから簡単に飼えるかな」は間違いだということだ。ネコにもめちゃくちゃ甘ったれで寂しがりやで飼い主を求め、退屈を嫌いイタズラを好み家中を走り回る個体もいるので、覚悟して飼おう。


参考リンク:ねこちゃんホンポ
執筆:冨樫さや
Photo:PR TIMES、RocketNews24.