明日から始まる大相撲3月場所。スポーツ記者風に言うと「初場所V大栄翔(27)大関へ足掛かりなるか」といったところだろうか。3月場所は大阪での開催が通例だが、新型コロナ感染防止の観点から今年は両国国技館で行われる。入場券は現在『チケット大相撲』で発売中だ。

大阪へ行けないのは残念だけど、無観客開催だった1年前を思えば「チケットが発売されるだけマシ」と言わざるをえない。本記事ではコロナ禍の大相撲観戦が現在いかにして行われているか、そして「今こそ現地へ行くべき理由」についてお伝えしたいと思う。

・観客が激減している

流れを確認しておくと、昨年の本場所(年6回 / 奇数月に開催)は5月場所が中止。7、9月場所は観客数を従来の約4分の1(2500人)に縮小しての開催となった。11月場所からは2分の1まで引き上げられたが、それでも1日たったの最大5000人である。

ちなみにコロナ直前まで、世は10年にいちど発生すると言われる大相撲ブーム。ただでさえ激しい争奪戦の中、客席半減とくれば「恐らくチケットは入手不可能に近いだろう」と感じていた。私の相撲ファン人生、そろそろ潮時ってことかな……


と、思ったら……



あっさりチケット入手できた!!!


・理由を分析してみると

チケットが入手しやすくなっている理由には、もちろん “コロナの影響で自粛する観客が増えた” ことが第一に挙げられる。しかしながら……繰り返すがコロナ禍以前のチケット争奪戦たるや「嵐のコンサートか」とツッコまずにはいられない凄まじさだった。

要するにいくらコロナ禍とはいえ、 “他の興行と比較した場合” の観客減少度合いが高すぎると感じるのだ。私は昨年9月〜今年1月までの3場所を現地観戦してみた結果、あくまでも個人的な見解ではあるが、あれほど多くいた観客が見事に激減した理由をこう分析する。

他の格闘技やコンサート等と違い、もともと大相撲の観客には “相撲を見に来ているわけじゃない層” が一定数存在していたのではないか。そしてコロナ禍の国技館からは彼らの姿が消えた。 “相撲を見に来ているわけじゃない層” とは、大きく分類すると以下のような人たち。

①力士と触れ合いたい層

②酒を飲みに来ていた層

③接待に利用していた層


・淘汰された大相撲ファン

現在、本場所中の国技館内では飲酒、食事、隣り合っての着席、声援、立ち止まって力士を待ったり接触するなどの行為が全て禁止されている。上記の客たちにとっては「一番の目的がなくなった」といっても過言ではない状況なのだ。

断っておくが私は決して彼らが悪いと言っているのではない。私自身、かつて相撲観戦中は絶対に酒を飲んでいたし、「あわよくば力士と写真を撮りたい」という下心も持ってるクチ。なんなら “丸一日国技館に居たけど一度も着席しなかった” ことすらある。

大きな歓声をあげる酔っ払いや出待ちの相撲女子だって、大切な相撲の文化のひとつなのだ。彼らの姿がなくなったことは寂しいし、相撲界にとっても大きな痛手。一刻も早いコロナ終息が待たれる……


・ビッグウェーブ到来

……が…………しかし! 彼らがいなくなったことで現在、今世紀最大の “真面目に相撲が見られるチャンス” が到来していることも、また事実である。

確かに力士と直接触れ合えることが大相撲観戦の醍醐味ではあるのだが、満員の国技館では決して見られないものもある。例えば力士の小さなため息、細かい所作、裏方さんの仕事ぶりなど……今ならそういったものを存分に感じることができるのだ。

おそらくコロナ禍の国技館で相撲観戦をした人の多くが、観客たちの行儀のよさに驚愕することだろう。ほとんど全ての観客がマナーを厳守しており、どれほど熱戦が起きても騒がず、叫ばず、近寄らない。日本人ってスゲーな、と痛感する光景だ。

そして今なら「マス席が広々と使える」「人気の良席が買える」「遠くからでも土俵がよく見える」など、庶民でも簡単にセレブさながらの贅沢観戦が可能。ひょっとしてコロナが終息したら、こんなことは2度と起きないかもしれない。

コロナ禍の相撲観戦は色々と制限されることも多いが、それと同じだけ “今だからこそ楽しめるもの” もある。「酒が飲めない」「力士と近づけない」といった理由で敬遠している人、マジで損! もったいなさすぎる。騙されたと思って一度現地で真面目に相撲を見てみてほしい。


・がんばる相撲協会

……なんて言っていると「コロナ禍で現地観戦なんて」といった意見もあると予想されるが、参考までに館内の観戦防止対策が厳しすぎるほど徹底されていることをお知らせしておきたい。個人的には下手に街中を歩くよりよっぽど安全だと感じる。

また「コロナ禍でも何とか楽しんでもらおう」という相撲協会の姿勢には、なんだか心打たれるものがあるぞ。あまり褒めると癒着を疑われそうだが、別にやましい覚えはないからドンドン褒めておこう。

まず協会のコロナ禍の取り組みで最たるものが、退場規制の間に行われる『お楽しみ抽選会』だろう。けっこうな確率で豪華な景品が当たるうえ、人気親方たちのトークも聞ける。早めに帰ろうとしてる人、メッチャ損!

それから『和装デー』(和装で行くと特典がもらえる)は特定の日だけ実施されていたのが、現在は毎日開催されているぞ。太っ腹! 相撲だけに!

あとは名物『国技館カレー』のレトルトパックがいつの間にか発売されていたり……

謎の動画撮影システム『ARムービーサイネージ』(1回1000円)なんてのも国技館2階でひっそり始まっていたりする。色々がんばってるな〜。

協会が最近とくに力を入れているらしいのは『大相撲コレクション』なるサービス。 “トレーディングカードをネット上で収集する” というもので、詳しいことは私もよく分からない。が、とにかく場所中はスマホでログインするだけで限定の力士トレカが毎日もらえる。

ちなみに私の知人はよく分からないなりに毎日ログインし続けた結果、『東龍コレクター全国1位』というよく分からない称号を手にしていた。よく分らないけど少しうらやましいな。力士別のカード数で競い合うほか、他プレイヤーとトレードもできるシステムのようだ。詳しくは公式サイトをチェックしてみてほしい。

大相撲3月場所のチケットは3月12日現在、一部の日程・席種を除いてチケット大相撲から購入することが可能。何度も言うが今の相撲観戦はマジで激アツ & 超レア! 初めての人もそうでない人も、日本人なら見といて損はない!

執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]

▼入場も退場も密を避けて

▼検温に……

▼消毒も忘れずに

▼等身大パネルは絶賛稼働中

▼ガランとした国技館

[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]