すでに何度か書いているように、つい先日、私(あひるねこ)にもいよいよ子供ができた。あひるねこジュニアの誕生である(女の子だけど)。それに伴い約1カ月半の育休を取得。現在は編集部に復帰し、育児と仕事に忙殺される毎日だ。子育てはちょっと引くほど大変だが、子供はさらに引くほど可愛いので何とかやっていけている。

さて、娘が生まれてから少し経ったある日のこと。離れて暮らす私の母から出産祝いの荷物が届いたのだが、中に入っていた “あるもの” にちょっと感動してしまったため今回はその話をしたいと思う。それはなんと30年以上も前の──。

・母からの出産祝い

ありがたいことに、子供が生まれてから出産祝いをいただく機会が何度かあった。私たちのためにわざわざ時間をかけて選んでくれたこと自体、本当に感謝でしかないのだが、そんな中、母から届いたお祝いの品はとりわけ印象的であった。

段ボールを開けると細々としたものがいくつか入っており、出産祝いというより、どこか仕送りみたいな雰囲気になっているのが何とも母らしい。ただその中に一つ、あまり見慣れない小さな機械の箱のようなものがあって、一瞬「ん?」となってしまった。一体何なんだろうか、コレは。



・古い箱

それは新品ではなく、むしろかなり年季が入っているようだった。スイッチが付いており、何やら音が出そうな形状であるが……。実はこの機械、胎内音が出るスピーカーである。そう、私が生まれた時に使っていたもので、それを母が大事に保管しておいてくれたのだ。

赤ちゃんはお母さんのお腹の中にいた時の音を聴くと落ち着くんだとか。それによって泣き止んだり寝やすくなったりするらしい。その胎内音を再現したのがこのスピーカーであり、こういった商品は現在もたくさん売られているという。ぬいぐるみに内蔵されていることが多いようである。



・胎内音

さっそくスイッチを入れてみると、「ザ──ザ──ザ──」というアンビエントなホワイトノイズが流れ出し、その後ろでは心臓の鼓動のような音が微かに脈打っている。ずっと聞いているとそこに、反復による奇妙かつ心地良いグルーヴを感じないこともない。

ふとベッドの方を見ると、ジュニアが今日も原因不明の泣き声をあげている真っ最中だ。ミルクをあげて おむつも替えたのに、何故そう荒ぶるのか? これはたぶん眠くて泣いてるパターンだな。ちょうどいい。さっそくスピーカーの音を流してみると……



スヤァ


寝た。


・グッスリ

まあまったく効かない時もあるのだが、うまくタイミングが合うとスーッと泣き止んで、スヤスヤ寝てくれるのだ。ありがたい。本当にありがたい。とは言え、すぐに消すとまた泣き出しそうで怖いので、しばらく付けっぱなしにしておく。

母によれば、このスピーカーは元々ぬいぐるみのポケットの中に入っていたという。今から35年前の話である。さすがにぬいぐるみはボロボロになったため処分したそうだが、私に子供ができた時、もしかしたら使うかもしれないと思い取っておいたらしい。よくまあそんな昔の機械が正常に動くものだ。



・35年の時を経て

しかし、「ザ──ザ──ザ──」という音と共に我が子が寝息を立てている姿を見ていると、不意に えも言われぬ感慨がわき起こってくる。私には当時の記憶はまるでないが、自分もこの音で眠っていたんだなと思うと、なぜかジーンとしてしまうのだ。

両親は私を眺めながら、一体何を思っていたんだろうか? 今の私と同じような気持ちだったんだろうか? 35年という月日にあった様々な事柄が、この古い胎内音によってゆっくり一つに繋がっていくような、温かくも不思議な感覚である。



でもたぶん、このスピーカーを使う時期もあっという間に終わってしまうんだろうな。そうなったら、もしもジュニアに子供ができた時のため、母と同じように大事に取っておくのもいいかもしれない。まあさすがに壊れてしまう可能性大だが……それまでなんとか頑張れ! 我が家のスピーカー!!

執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.

▼胎内音を聴いて寝ていた頃の私。ちょっとジュニアに似ていて笑ってしまった。