あなたは少し前に話題になった「本能寺の変 お知らせハガキ」を覚えておいでだろうか。歴史パロディ画像の制作で知られるスエヒロ氏考案、役所の通知ハガキそっくりの外観に、謀反(むほん)の予定日時や免責事項などが書かれたジョークグッズだ。

明智光秀ゆかりの京都府福知山市がイベントの景品として発表したところ約3万人の応募があり、倍率240倍という幻のハガキになった。それが「ふるさと納税」の返礼品として復活。誰でも受け取ることができるようになったぞ。下剋上したい人は必見だ!


・ハガキを見てみよう

体裁は役所の通知そのもの、両面印刷の圧着ハガキになっている。ものものしく「重要」とか「必ずご開封の上」とか書いてある。

宛先は福知山城の明智秀満。光秀の娘と結婚して明智姓になった腹心で、謀反の計画を光秀から最初に相談された人物だという。

発出は天正10年6月1日……って「本能寺の変」の前日!? ま、まだ心の準備が……!


裏面はご丁寧に透過防止の地紋が入っている。たしかに万が一にも内容がもれたら大変なことに……

通知ハガキって「○○払え」とか「早く手続きしろ」とか、とにかく嫌な予感しかしないよね。見るだけで拒否反応が起きそうな外観だ。ただ、この手の通知は見ないふりをしていると、後からもっと困ったことになるからすぐ開封した方がいいぞ。黙殺が1番よくない……

って「開封されますと謀反に同意したと見なされますのでご注意ください」だと!! 目立たない場所にさりげなく書いてある! ワンクリック詐欺か!?

周囲に誰もいないことを確認して、そっとはがしてみよう。雨に濡れているときは乾かしてからはがすんだぞ。ただし今回は大切に封筒に入っていたので安心だ。


・内容確認

ああ「対象の方すべてにお送りしています(=あなただけ狙い撃ちじゃないよ)」というクレーム防止の一文ね。

集合場所は桂川かぁ。終了時間は未定……残業あり?


それでいて自分で準備が必要なものは武器、防具、わらじ……って被服手当なしか。旗だけは当日配布されるようだ。ブラック労働の気配がプンプンする……。


免責事項がめちゃくちゃある。合戦、負傷、死亡はノークレームで。「長期政権を保証するものではございません」……知ってる。


どんどん気が重くなってきたけれど、最後に印字された「謀反内容」に誤りがないか確認。


ご配置……ええっ、先陣!? 聞いてないよ! 内容に誤りがあった場合の連絡先も書いてない! わざとか!


・裏面は明智光秀の紹介

……とめちゃめちゃユニークで楽しいハガキの裏面は、明智光秀や福知山市の真面目な紹介になっている。

主君を裏切った上に「三日天下」などと揶揄(やゆ)され、あまりいいイメージのない明智光秀だが、地元では「善政をしいた良君、理知に富んだ人物」として知られているのだそう。

文化人でもあり、地元には神として祀った神社があるなど慕われているんだって。歴史はいつも語る人によって切り取られるから、きっとそういう側面も事実だと思う。地元で大切にされているというのはほっこりする。


・寄付金額は3000円から

福知山ではかつて、市民による「瓦1枚運動」で福知山城天守閣を再建した歴史があるという。廃藩置県で廃城になり、石垣だけになってしまった福知山城をよみがえらせようと、瓦1枚=3000円からの寄付活動を開始。最終的に5億円以上が集まって見事に天守閣を再建したそうだ。

その史実にちなんで今回の「ふるさと納税」も3000円から。目標を定めて寄付を募る「クラウドファンディング型ふるさと納税」になっている。開始から数日で次々とゴールを達成し、ファイナルゴールは「11,132,110円(いいひと! みつひで)超え」だとか。なお、目標金額を超えても募集は継続するとのこと。受付期間は8月31日まで。

寄付すると「明智光秀 × 福知山サポーター」になり、ハガキに加えて「福知山城天守閣」と「福知山光秀ミュージアム」の無料入場券をプレゼント。それぞれの方が「大丈夫」と思えるときに、福知山へぜひお越しいただければ、とのこと。観光パンフレットもたくさん同封されていた。

「ふるさと納税」は返礼品の競争過熱など、マイナス面を指摘されることも多いが、遠く離れた土地と「縁ができる」という側面もある。

動機は「返礼品めあて」であっても、その後も定期的に広報誌を送ってくれる自治体があったり、テレビなどでふとその地名を聞くと「ああ!」と身近に感じる。筆者もすっかり福知山のファンになってしまった。ハガキを手に、いつか絶対に行こう、そう思っている。


参考リンク:福知山市
Report:冨樫さや
Photo:RocketNews24.