高い建物というのはいつの時代も人を魅了する。世界中に高さが売りのビルが建てられているし、大体が観光名所になっている。国内なら渋谷スカイやスカイツリーが有名だが、展望台に入るには入場料で数千円かかる。決して安い金額では無いが、それでも常に人で賑わっている。

そして高い所に住むのはもはやステータス。タワーマンションの高層階はとんでもなく値が張るが、それでも売れるものだ。いつか高い所に住んでみたい……そう思っていたところ、国内最高層だというホテルにたった2500円で泊まれるという情報をゲット。

最高層なのに1泊2500円ってマジかよ……! 地元の駅前にある寂れたカプセルホテルだって1泊3500円だぞ? この機会を逃せば高層ホテルなど一生無縁かもしれない。とりあえず泊まりに行くしかねぇ! 

・アパホテル

ということでやってきた国内最高層のホテルとは、幕張メッセのすぐそばにあるアパグループの旗艦ホテル「アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張」。幕張メッセに来たことがある方なら建物を目にしているはず。


これまで幕張メッセには各種イベントで何度も来ているため、筆者も建物こそは見知っていた。しかしその正体がアパホテルだったとは。幕張メッセから見ると、すぐ手前側にはホテルニューオータニがあるため、この高いタワーもニューオータニのものだと思っていた

公式HPによると高さは180メートルで、地上50階建て。もっと高いビルは他にもたくさんあるが、ホテル単体としては最も高いそうだ。ちなみに建物はかつてプリンスホテルのものだったが、後にアパホテルが買収したのである。


そして2500円というのはアパホテルが2020年5月10日から6月30日までの期間限定で行っている「新型コロナウイルスに負けるなキャンペーン」がゆえ。「アパ直」という同社のアプリでこのキャンペーンを選択すると2500円で泊まれるのだ。


・部屋ガチャ

ただし一つ問題がある。それは、部屋を選べないということ。地上50階建てで、客室は5階から45階まで。さすがにスイートルーム等が入っている45階は無理にしても、それなりに高い階に泊りたい。


理想は40階~44階辺りだが、5階とか6階という悲しすぎる結果もあり得る。どうなるかは完全にギャンブルだ。期待と不安を胸に、フロントでチェックイン。引き当てた階は……


17階


微妙すぎる……! 低くは無いが高くも無く、ネタ的に困る。とりあえずエレベーターで部屋に行こう。エレベーターホールでは、25階以上の客室に向かうエレベーターと、それより低い客室に行くエレベーターで左右に分かれていた。なんとなく敗北した感がある。高層向けエレベーターに乗る人々がうらやましい。


・部屋は普通

たとえ階層は低くとも、部屋の造りに差はあるまい。最上階の高級なタイプを除けば、あとはベッドがシングルかダブルかの違いこそあれど、同じグレードのはず。国内最高層のホテルがどんな部屋なのか知るというのも十分興味深いと思う。



扉を開けてみると、まさかのベッドが2つ。ツインルームではないか。1人で予約したのでベッドが1つのシングルルームかセミダブルルームかと思っていたが、こういうパターンもあるようだ。

枕元にはコンセントが2つあり、正面にはテレビ。バスルームも広く、アメニティも一通りそろっている。窓際の机の引き出しにはLANケーブルがあり、ネットに有線接続できる。Wi-Fiも一応飛んでいたが、そちらは速度が遅くて微妙だった。

窓からの眺めは17階なので、良くも悪くもなくリアクションに困る感じ。全体的に割と普通だ。なんだか拍子抜けである。高層ホテルというと、もっとスペシャルな存在だと思い込んでいたが、そんなことも無かったもよう。そういうのはスイートルームだけということか。いや、まだ早い。部屋は無理でも、とりあえず45階のエレベーターホール辺りを体験してみようではないか。


・恐怖

エレベーターから降りた時、ホールの突き当りに窓があったのだ。恐らく上までずっと同じ構造のはず。45階の窓からの眺めだけでも見ておくべきだろう。ということで45階に来てみたが、悲しいかな窓が無い


17階だと窓があった場所には、茶色い壁があるばかり。この階からの眺めは宿泊者のみの特権ということだろうか。現実は甘くないようだ。ホテル高層階へのチャレンジはまたの機会に持ち越しだな。いつか高い所に泊まってみたいものだ。

と、そこであることに気づいた。ここ、揺れていないか? しかも、なにやら低い唸り声じみた風の音が響いている。えっ、怖い。タワーは割と細い正三角柱的な形状で、その中心部にエレベーターシャフトが通るという構造。風の音はエレベーターシャフト内の空気によるものと思われる。

この揺れと音の組み合わせが個人的に結構怖い。正確な高さはわからないが、地上50階建てのうちの45階ということを考えると160メートルくらいはあるだろう。この手の高層ビルは程よく しなる ようになっているのは知っている。しかし知っていても怖い。

微妙に恐怖しながら、やってきたエレベーターに乗って、部屋をとった17階へ。唸るような風の音は相変わらずエレベーターシャフトから聞こえているが、こちらは特に揺れていない。


・宿泊施設としてはグッド

どうやら筆者には高層ホテルに泊まる覚悟が足りなかったようだ。もし下手に44階とかを引き当てていたら、一晩中揺れに恐怖し続けていたことだろう。これは全くの盲点だった。国内最高層レベルの部屋に泊るには、運とそれなりの勇気が必要らしい。 

運が無くとも金を出してスイートルームという手段もあるが、しかし金も運も勇気も無い筆者的には、高くも低くも無い普通の階がふさわしかったようだ。高層ホテルとはどんなものなのか知りたくて泊まりにきてみた結果、高ければいいという訳でもないという知見を得ることができた。

ちなみに宿泊施設としての純粋な感想は、そこそこよかった。午前2時までやっている大浴場はクオリティが高く、深夜ともなればほぼ貸し切り。洗い場で隣と仕切ってくれる衝立もしっかりしたサイズなのはとても良かった。ホテルとしての泊まり心地自体はなかなかの物。24時間営業しているローソンが館内にあるのも便利。

もうキャンペーン期間は終わってしまうが、通常のプランも、特に近隣施設でイベント等が無い限りはそこまで高くないもよう。2500円とはいかなくとも、3000円~4000円程度で泊まれるようだ。例えば、遠方からディズニーに遊びに来た際に泊るなどしても良さそうである。

部屋の階層はある程度絞ることができ、アプリ上で「高層階」とついたプランを指定すれば、国内でも最高層レベルの部屋に泊れるのだと思われる。高い部屋に泊ってみたいという方は、利用してみて欲しい。台風の時とかスリルがありそう。

参照元:アパホテル&リゾート
Report:江川資具
Photo:RocketNews24.

▼高層階向けエレベーターに乗る人々が羨ましかった

▼アメニティはこれが2セット

▼大浴場もあるが、部屋のバスタブもそこそこ大きい

▼コンセント

▼17階からの眺め