この時期、外で咳(せき)をするのは覚悟がいる。咳により、場の空気が張り詰めることが珍しくないからだ。「もしかして……」という周囲の視線が全身に突き刺さる。つまり、体力的に辛いと言うより、メンタル的に辛い。かといって、こみ上げてくる咳を我慢するのはもっと辛い。

のっけから「辛い」と3回も書いてしまったが、愚痴ってばかりでは何も変わらないので、自分なりに対策を講じてみることにした。そして試行錯誤の結果、私は「絶対に誤解されないフェイスシールド」を生み出したのだが……。自分でも「これでいいのか?」といった気持ちが拭い去れないのである。

・咳が出る理由

「何でそんなに咳が出るの?」ってことが気になる人もいるだろうから、最初に私が咳をする理由について触れておきたい。「そんなことよりフェイスシールドが見たい」って人は、すっ飛ばして下の『フェイスシールドに文字を書いてアピール』までスクロールしてくれ。


さて、咳の話を続けよう。医師の言葉をそのまま拝借するならば、私は「副鼻腔炎(ちくのう)により鼻水が喉に垂れ、喉が荒れること」で咳が出るらしい。したがって、新型コロナでもなければ喘息でもない。ましてや、風邪でさえない。鼻水で喉が荒れているだけである。

私はよく副鼻腔炎になるので、この “鼻水のどドロップ” とでも言うべき状態(医師によると「後鼻漏(こうびろう)」というらしい)には慣れている。だが、経験がない人にどんな感じかを説明するのは難しい。

あくまでも私個人の体感だが、喉が敏感になった状態がずっと続いているようとでも言おうか。ちょっとした刺激でも咳のラッシュに繋がるので、たとえばマスクをして少し呼吸が苦しくなった程度のことで むせることもある(もう1度言うが、あくまでも私の場合)。


・怖いのはこれから

とにかく、鼻水のどドロップからの咳は、それだけでなかなか面倒な代物。特に新型コロナが流行している今年がとりわけ面倒であることは、お察しの通りである。そして私が思うに、もっとも怖い時期はこれからだ。

というのも、今までであればずっと家に居ればよかった。食料の買い出し等で外に出ることはあっても、その時間自体は長くない。喉の調子が悪い日には、外に出なければいいだけだった。

しかし現在は緊急事態宣言が解除され、徐々に日常が戻りつつある。それ自体はもちろん喜ばしいことだが、今後は自粛要請がどんどん解除されるだろうし、それに従って電車に乗る機会もあるだろう。以前のように会社に出勤もするだろう。デパートとかにも行くだろう。


その際にもし咳の発作が来たら……地獄である。当然マスクをして移動するが、先に述べた通り私の場合マスクをすることで咳こみやすくなるから、リスクは高い。


・缶バッジを使った画期的アイディア

どうすべきか? そう思ってググっていたら、中には独創的なアイディアで解決をはかる人もいる。たとえば、佐賀新聞が報じている「花粉症です」と書かれた缶バッジは良さそう。その缶バッジをつけていれば、周囲の人に「うつりませんよ〜」と分かってもらえるはず。咳の発作が来ても、比較的気持ちが楽になりそうだ。

だがしかし、私は花粉症や喘息により咳が出るわけではない。私がその缶バッジをつけたら、嘘になってしまう。繰り返すが、私の場合は「副鼻腔炎(ちくのう)により鼻水が喉に垂れ、喉が荒れること」により咳が出るのだ。

無駄にややこしいのである。ひと言で説明できないのが致命的で、とてもじゃないけれど缶バッジには書ききれない。仮に「蓄膿(ちくのう)です」という缶バッジがあったとしても、それだけじゃなぜ咳が出るのか多くの人が分からないはずだから、やはり長くてもある程度事情を説明する必要がある。

となると、缶バッジよりもっと面積の広いものが必要なわけで……。


・フェイスシールドに文字を書いてアピール

私が目をつけたのはフェイスシールドだ。一時は品薄と言われた商品だが、私の近所にあるドン・キホーテには現在 大量に積まれている。


そのうちの1つを購入し、アレンジすることにした。でも、なんて書くのがいいのか。出来るだけシンプルな方がいいのだが……。うーん、こういうのはどうだろう?


「蓄膿(ちくのう)で咳が出ます」


ストレートでいい。ただ、一般的に蓄膿は鼻水のイメージがあるので、多くの人にとっては「何で咳?」となりそうだ。



「喉が荒れています」


いや、これなら風邪と思われる。つまり、「うつるやん」って話になるから、あまり意味がない。



「後鼻漏です」


おそらく、後鼻漏自体が一般人にはあまり知られていないからボツ。



「SEKI DeMAsuuUuu」


……アルファベットに変え、なおかつヒップホップユニットのように小文字を混ぜ込んでポップさを演出してみたものの、ちょっと伝わりづらい。事情を分かってくれる人もいるだろうが、もし運悪く私の近くにいる人が自粛警察だったら「こいつ、ふざけてる!!」と思われ、逆に火に油となりそうだ。

では、いっそのことロゴで……


とも考えたが、バッタモン感がすごいことになってしまった。その方面では有名な中国でさえ、売られそうにないクオリティだ。


・試行錯誤の結果

このように悩んだ結果、私のたどり着いた結論が「咳の原因を全部書く」であった。こうして……



文字文字しいフェイスシールドが完成したのである。


・時代にマッチしている

実物を見て、「いや、おかしいだろう!」と思う人もいるだろうが、よく考えてほしい。今の日本のピリピリした状況を。ちょっと言葉が足らなければすぐ炎上し、不謹慎厨やらマナー厨などが集中砲火を浴びせてくる現状を。


つまり、新型コロナウイルスだけでなく “人” からも身を守らなければいけないのだ。その際に一番効果的なのは「事情をしっかり説明すること」だから、気持ち悪いとか言っていられない。今はそういう状況ではないだろうか。

と言いつつ、間近で見たらメチャクチャ不気味である。恐る恐る、それを頭につけてみると……



予想していたことではあるが、文字が多すぎて視界が悪い。したがって、機能面では理想的と言い難い。ただ、自分の健康状態はフェイスシールドでしっかり説明しているので、この状態で咳をしても誤解されることはないだろう。ディフェンスは完璧だ。どんなクレーマーだって、このフェイスシールドを前にしたら攻撃を諦めるのではないか。

そのためにアレンジを施したのだから、目的は果たしたと言えるはず。いや、言えないのか? よく分からないから、もうええか。これで……。

参考リンク:佐賀新聞
Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.