望みさえすればどこへでも行ける、当たり前のように信じてきた世界観が揺らいでいる。「いつか行こう」の「いつか」が本当に来るのか、それは何カ月後なのか、まだまだ楽観視できない状況だが、気分転換に自宅でVR旅行はいかがだろうか。

今回ご紹介するのは「360°動画」「360° Video」などと言われるもので、撮影者の視点から全方位を見渡せる映像コンテンツ。自分で移動することはできず、目の前に流れる映像を眺める簡易的なVRだが、リモコンなどの特殊な機器を揃える必要もなく、酔いにくいという利点がある。汎用VRゴーグルがあれば誰でも無料で視聴できるもの、かつ画質や内容のレベルが高いチャンネルをYouTubeからピックアップしたい!


・用意するもの

用意するものはスマートフォンとVRゴーグル、そしてYouTubeアプリだ。VRゴーグルはお好みのものを。筆者はダイソーの500円の商品で、ピント調節のしやすさや装着感など決して高品質とはいえないが、お手軽VR体験には十分だと思う。もう少し本格的なものが欲しければ、オンラインショップで3000円程度で見つかるだろう。

YouTubeアプリで「VR」「360」などと検索すると、多くの動画がヒットする。普通に再生するだけで、スマホの向きに反応して全方位の映像が展開されるはずだ。これだけでも画面の向こうに別世界が広がっているように見えて楽しいが、VRゴーグルを使う場合は画面切り替えが必要。

画面端のゴーグルのマークをタップすると、2眼式の映像に切り替わる。後はスマホをゴーグルにセットして鑑賞する。

ゴーグルなし、アプリなしで、パソコンのブラウザから鑑賞する場合は、映像をマウスでグリグリすることで全方位を観ることができるブラウザもあるので試してみて欲しい。それではオススメのチャンネルを紹介していくとしよう。


VR Gorilla

ゴリラのマークのVR Gorillaはオランダの映像制作スタジオ。高品質なVRコンテンツを多数公開していて、ここを押さえておけば、もう映像で世界旅行ができてしまうという充実したチャンネルだ。本拠地のアムステルダムはもちろん、ロンドン、ローマ、バンコク、ドブロブニクなどのシティガイドツアー(英語)を公開している。英語ガイドがわからなくても、あたりをキョロキョロ眺めているだけで観光気分!

筆者のお勧めは「Most Beautiful Sceneries of the World」のシリーズで、特定の都市ではなく美しい景色を音楽に合わせてつなぎ合わせているのだが、旅情を誘うというか、ぼんやりと眺めているだけで癒される。と同時に「行きたいなぁ……」ともなるのだが。


CAPTIVISION

こちらもパリやロンドン、ニューヨークなどのトラベル系のコンテンツを公開しているチャンネルだが、「The Louvre Museum」というルーブル美術館の内部の動画がイチオシ。このような観光施設の映像は世界中のユーザーが投稿しているが、人混みにもまれていたり手ブレがひどかったりと、個人の旅行記録に過ぎないレベルのものも多い。

このチャンネルのルーブル映像はわずか1分47秒の短い動画だが、こなれたカメラワークで安心して観ていられる。「モナ・リザ、ちっさ!」「混雑しすぎ!」など、館内の雰囲気がよくわかるぞ。


National Geographic

自然科学系のチャンネルならこちら、おなじみナショジオ! ライオン、ゾウ、ペンギン、サメなど野生動物との遭遇を解説つき(英語)で映像化している。

他にも火山、サンゴ礁、大瀑布、南極大陸などナショジオらしい雄大な自然映像がたくさん。こちらも英語のナレーションがわかれば知識も深まるだろうが、そちら方面はさっぱりの筆者でも眺めているだけで楽しい。


Discovery

膨大なコンテンツ量という点ではこちら、ディスカバリーチャンネル。アニマルプラネットのコンテンツもあるぞ。

トラベルに限らずサイエンス、スポーツ、アニマル、ライフスタイルとオールジャンル。トラベル系では定番のイタリアやイギリスなどがあるのだが、日本(Tour Japan’s Ancient History And Modern Marvels in Stunning 360° VR!)が面白い。「こ、こんな国でしたっけ?」というほどエキゾチック要素が強調されている。外国人から見た日本ってこんなイメージなんだろうか。


The Met 360° Project

ニューヨークのメトロポリタン美術館の公式VR動画。所蔵品というよりは館内の様子を撮影したものだが、来訪したことがある人にはきっと懐かしい風景なのでは。

VRコンテンツで所蔵品を公開する美術館・博物館は他にもあるものの、特定のVR機器が必要なことも多いようだ。誰でも観られるYouTubeで映像を公開しているメトロポリタン美術館は貴重な存在だと感じる。


・VRには無限の可能性がある

VR体験にはいろいろな深さというか、レベルがある。例えば仮想空間内を自分の足で動き回ったり物に触ったりすることができる大規模なアトラクションから、PS VRのような家庭用ゲーム、簡易的なものでは今回紹介したような映像コンテンツがある。

個人的にVR技術にはものすごく期待していて、PS VRが発売されたときには「ついに誰もがゲームの世界に入れるようになった!」と歓喜した。しかし2020年現在でもまだ、機器が非常に高価であること、それに対する画質の低さ、酔いやすさなど、課題が山積していることも承知している。人生観が変わるほど衝撃的な体験だが、酔うし疲れる……それが筆者のPS VRの率直な感想だ。

まだまだ過渡期のテクノロジーなのだろう。だが、今日のような社会情勢の中、仮想であっても行けない場所に行ける、会えない人に会える、というVRは無限の可能性を秘めていると思うのだ。もっともっと身近な存在になって欲しい。

検索すると星の数ほど出てくる360°動画だが、残念ながら画質がいまいちだったり、丁寧に編集されていなかったりと、完成度があまり高くないものもある。今回ご紹介したような、映像制作のプロが関わっている公式チャンネルから選んだり、「4K」「6K」などと解像度を表示してある動画を選ぶとよいかもしれない。

それと、やはりデータ量が多くなるようなので通信環境に気をつけて。筆者もピークタイムになると映像がカックカクになってしまった。時間も天気も関係なく出かけられるVR旅行、お手持ちのスマホでぜひ体験してみて欲しい!


参照元:YouTube「VR Gorilla」「CAPTIVISION」「National Geographic」「Discovery」「The Met 360° Project」
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
ScreenShot:YouTube(iOS)